岐阜聖徳学園大学教育学部川上紳一教授は原田浩博士(日本地衣学会会長、千葉県立中央博物館主任上席研究員)との共同研究により、岐阜県加茂郡川辺町の飛騨川河床に露出する新第三紀火山岩類(蜂屋層)に生育する新種の地衣類を発見し、ツブノリ科カワアカツブノリ(Synalissa fluviatilis)と命名し、日本地衣学会の機関誌ライケノロジーで発表した。
本種は河床に露出する酸性火山岩の表面に生育しており、大きさは1センチ程度で、樹状に分岐した黒赤色の地衣体で、レカノラ型の子器をもつ。共生藻は単細胞性のラン藻(Gloeocapsa)である。アカツブノリ属(Synalissa)は、ツブノリ科に属するラン藻地衣で、国内からは石灰岩生のアカツブノリのみが知られていた。
飛騨川河床の蜂屋層は、ヒメカイガラゴケ、タテゴケ、クロタテゴケなどの希少種の地衣類が群生し、地衣類観察には絶好のフィールドである。本種の発見は、2016年に岐阜県で開催された日本地衣学会大会の直後に開催された同学会主催の観察会、現地見学を行った際に、種同定に適した地衣体を発見し、今回の同定に至った。
岐阜県は、海抜ゼロメートルの濃尾平野から標高3000メートルの乗鞍岳まで、自然環境が多様であり、生物多様性が高い。本新種の発見は、岐阜県における地衣類の調査はまだ不十分であり、今後も新種の地衣類が発見される可能性が高いことを示唆するものである。
発表論文:
Harada, H. and S. Kawakami: Synalissa fluviatilis sp. nov. (lichenized Ascomycota, Lichinaceae) from Gifu-ken, central Japan. Lichenology, 17, 45-50.
用語解説:
地衣類:菌類に属するが、生物体内に藻類(ラン藻や緑藻)を共生させている。樹木の幹や岩石の表面に付着して、長い年月をかけてゆっくり成長する。サクラやウメなどの樹皮に生育するウメノキゴケなどが含まれ、国内では約1700種が知られている。
子器:地衣体の表面にできる子嚢(しのう)をもつ器官。多くの地衣類は子器に子嚢をつくり、そのなかに子嚢胞子を形成する。
ツブノリ科:地衣類の分類群のひとつ。ラン藻を共生藻にもっている。
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