4.今後の展開
今回育種した珪藻株は、天然資源に依存した飼料からサステナブルな飼料への転換を促す重要素材となるものです。今後はこれらの藻類を用いた飼料の性能評価を加速していきます。さらに、本珪藻株で増加した脂肪酸は高機能性サプリメントなどにおいても重要なため、養殖飼料以外での幅広い領域での応用が期待されます。また、本育種技術は藻類の栄養価を高める共通基盤として、他の藻類にも展開可能と考えられます。今後は、対象とする藻類種の拡大と用途開発を進めることで、多様な産業における高機能素材としての利用を広げ、さらなる環境負荷の低減に貢献していきます。
5.関連する過去の報道発表
・2021年11月12日 海洋の二酸化炭素減少をめざしNTTとリージョナルフィッシュが実証開始~世界初、生態系への影響がない環境下でゲノム編集技術を藻類と魚介類の炭素循環に応用~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/12/211112a.html
・2023年2月9日 藻類の二酸化炭素吸収量を画期的に向上させる遺伝子を特定
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/02/09/230209c.html
・2024年7月4日 世界初、中性子線照射による藻類の品種改良技術を確立~バイオ燃料原料の油脂生成量を最大1.3倍に増加させることに成功~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/07/04/240704a.html
【用語解説】
※1.珪藻:地球上の純一次生産の最大20%に寄与するとも言われる藻類の系統です。養殖産業では、主に種苗生産時の飼料として広く利用されます。
※2.DHA:ドコサヘキサエン酸。魚介類の成長や免疫機能、ストレス応答などに関与する脂肪酸です。
※3.EPA:エイコサペンタエン酸。魚介類の成長や免疫機能、炎症応答などに関与する脂肪酸です。
※4.機能性脂肪酸:生体内で調節作用を示し、健康維持や疾病予防・改善に関与しうる脂肪酸をさします。
※5.育種:遺伝子の変化によって性質が変わることを利用し、生物を人間にとって有用となるように改良することをさします。
※6.株:微生物や微細藻類などにおいて同一系統の集まりをいいます。
※7.The State of World Fisheries and Aquaculture 2024(
https://openknowledge.fao.org/items/8ab20ccf-1e9d-4ae6-836c-ca770d16da01 )
※8.Chaetoceros gracilis:ツノケイソウとして知られる単細胞性の浮遊珪藻で、稚エビや二枚貝の飼料として世界的に使われています。
※9.遺伝子変異:遺伝子を構成するDNAの塩基配列が本来の配列と異なる状態になることをさします。遺伝子変異の結果、遺伝子から作られるタンパク質の機能が変化されます。
※10.α-リノレン酸:DHAやEPAの合成に利用される脂肪酸で、それらの不足を補う補助的な役割を果たします。
※11.ジホモ-γ-リノレン酸:近年研究が進められている脂肪酸で、ヒトを対象にした研究においては、抗炎症・抗アレルギー作用をもたらす可能性が示されています。
※12.リノール酸:魚介類の成長や脂質の代謝に関与する脂肪酸です。