【研究成果】転居者の多い地域で「助け合いの規範」の力が弱まるのは、転居者が特別に規範を無視するからではなく、住民全体が規範を無視しがちになるからかもしれない

滋賀大学・東京女子大学・京都大学・神戸大学の共同研究グループが、地域コミュニティにおける規範と転居に関する研究論文を、国際学術誌「Cities」にて発表しました。


発表のポイント


西日本各地の約400コミュニティ、ならびに、滋賀県の約100コミュニティを対象とした2つの大規模郵送調査データを分析

地域コミュニティにおける人々の「助け合いの規範」(協力規範)が人々の助け合いに実際につながっている程度と、人々の転居経験の関係を検討

転居者率が高い地域では、そうでない地域に比べて、協力規範が助け合いにつながりにくい(規範が形骸化している)傾向があることを確認

ただし、転居者率が高い地域で転居者だけが特別に協力規範を無視しているわけではなく、非転居者も規範を無視しがちになっていることを発見

その背景として、転居者率が高い地域全体で、「他の人々は規範を守らないだろう」という不安が高まり、協力規範が形骸化している可能性を指摘



研究の意義


この研究は、「人の移動」が個人の行動だけでなく、地域全体の社会的な雰囲気(社会的文脈)そのものに影響を及ぼすことを示しています。

転居がもたらす問題の解決には、転居者だけを対象にした介入より、転居者と非転居者の関係性や地域全体を対象とした介入が効果的である可能性を示唆しています。



研究の背景


地域コミュニティでは、防犯、防災、環境維持、相互扶助など、住民同士の協力が重要な役割を担っています。しかし協力には個人的な負担(時間や手間)が伴うため、自分だけ協力せずに利益を得ようとする「フリーライダー問題」が生じることがあります。

こうしたフリーライダー問題を生じにくくさせるための様々なルールや規範(協力規範)が多くの地域コミュニティに存在していますが、人々の移住・転居が規範の力を弱めてしまうことが指摘されていました。

その理由として、これまでの研究では、転居者はフットワークが軽く、地域から孤立しても別の場所へ移れるため、規範に従いにくいと考えられてきました。

しかし、本当に問題なのは転居者個人なのか、それとも「転居者が多い」という状況(地域環境)の中で発生する社会的文脈(雰囲気)なのかは明らかではありませんでした。





研究の手法


研究1では、西日本の広範なエリアの408地域コミュニティ・約7,300人を対象とした調査データを分析しました。

研究2では、滋賀県野洲川流域の99地域コミュニティ・約3,200人を対象とした調査データを分析しました。

コミュニティ内での協力行動、協力を支える規範(協力規範)の認知、引っ越し(転居)回数などの関係について、統計的に解析しました。

統計解析にはマルチレベル分析を用い、個人と地域コミュニティ両方の要因を同時に検討しました。



研究の成果


転居者だけが特別に協力規範を軽視しているということはなく、転居者と非転居者は同程度に規範に従っていました。

しかしながら地域による違いはあり、「転居者率が高い地域」では、そうでない地域に比べて、規範が軽視されがちでした。転居者率が高い地域では転居者も非転居者も規範を軽視し、転居者率の低い地域では転居者も非転居者も規範を守っていました。

つまり、問題は転居者個人ではなく、転居者が多い地域に発生する社会的文脈(雰囲気)にある可能性が示されました。

解釈として、人々の間に「転居者は規範を守らない」という固定観念があり、転居者の多い地域ではその固定観念から「他の住民は規範を守らないだろう」という不安が高まっていることが考えられます。その不安から規範を守らない人が実際に増え、結果として地域全体で協力規範が形骸化している可能性があります。

重要な点は、転居者と非転居者は同程度に規範を守っており、「転居者は規範を守らない」という固定観念は誤りだと考えられることです。しかし、誤った固定観念であっても、それに基づいて人々が行動する結果、転居者率の高い地域では実際に規範が形骸化してしまうのだと解釈されます。



今後の展望

今後は、規範の形骸化に「転居者は規範を守らない」という固定観念が本当に関与しているのか、また、その固定観念がどこから来るのか、転居者と非転居者のコミュニケーションが協力規範の維持にどう影響するのかなどを検討する予定です。

論文情報

タイトル: Residential mobility as a contextual factor undermining social norms for cooperation: Multilevel analyses of community data in Japan

著者: 竹村幸祐(滋賀大学), 福島慎太郎(東京女子大学), 内田由紀子(京都大学), 淺野悟史(京都大学), 奥田昇(神戸大学)

掲載誌: Cities

DOI: https://doi.org/10.1016/j.cities.2026.107187

研究助成

本研究は、JSPS科研費 JP23380141, JP26380842, JP26780343の助成、ならびに総合地球環境学研究所プロジェクト(No. D06-14200119)の支援を受けて実施されたものです。

[本研究に関するお問い合わせ先]

滋賀大学経済学部 教授 竹村 幸祐

TEL:0749-27-1107 

E-mail:kosuke-takemura@biwako.shiga-u.ac.jp

[報道に関するお問い合わせ先]

滋賀大学総務課企画・広報室

TEL:0749-27-7524

E-mail:koho@biwako.shiga-u.ac.jp

東京女子大学教育研究支援部広報課

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京都大学広報室国際広報班

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【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
東京女子大学
ホームページ
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代表者
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