水戸済生会総合病院(茨城県水戸市)消化器センター長・筑波大学消化器外科講師の丸山常彦医師らによる医療ビッグデータ研究で、胃がん手術後の早期経口摂取開始が在院日数の短縮に影響することなどが分かりました。この研究は、3月4日から6日に沖縄コンベンションセンターで開催された第98回日本胃癌学会総会で最優秀演題に選ばれました。
【研究チームの丸山氏(日本胃癌学会総会・沖縄】
医療ビッグデータは、メディカル・データ・ビジョン株式会社(同千代田区、代表取締役社長:岩崎博之)の国内最大規模の診療データベース(実患者数5,595万人、2026年2月末日)を活用しました。この研究は2017年8月から2022年7月までの5年間の胃がん症例28万4953例のうち、手術を受けた2万6097例を対象に胃がん手術後の経口摂取開始時期の実態を明らかにし、早期経口摂取開始の臨床的意義を検討しました。
胃がん治療ガイドラインを参考に、術後2日までに1食でも食事のレセプトコードがある症例を「早期経口開始群」、それ以外を「非早期経口開始群」と定義しました。早期経口開始群は5,422例(20.8%)、非早期経口開始群は20,675例(79.2%)でした。
がん拠点病院や病院規模が大きい施設では早期に経口摂取を開始した症例が有意に多く、術後の経口摂取開始時期は施設の運用方針に強く依存することが示唆されました。また、術後在院日数は非早期経口開始群(12日)と比較し、早期経口開始群(9日)で有意に短くなっていることが分かりました。
【丸山氏のコメント】
ERAS(Enhanced Recovery After Surgery=術後回復強化)の概念は、消化器外科領域の周術期管理において広く普及してきており、特に胃がん手術後の早期経口摂取開始は、合併症の抑制や在院日数短縮に寄与することが報告されています。しかし、日本全体における現状や実態については十分に明らかにされていません。
今回の研究で、胃がん手術症例の約2割で術後2日以内の早期経口摂取が導入されているものの、その実施率は施設や術式に大きく依存していることが分かりました。早期経口摂取開始は術後在院日数の短縮に有用であり、ERASの実践において重要な要素であることが示唆されました。今後は早期経口摂取開始のさらなる標準化と普及が求められます。