【東京工科大学】身近なハーブ由来の天然成分が腸のバリア機能を保護 ―炎症性腸疾患の新たな治療や予防などに期待

 東京工科大学(東京都八王子市、学長:香川豊)応用生物学部の西野勝俊講師らの研究グループは、食用などとして身近なハーブ「セージ」に含まれる天然成分が、炎症によって壊れる腸のバリア機能を修復する効果を持つ可能性を明らかにしました。
 本研究成果は、学術誌「Phytomedicine Plus」(2025年12月3日オンライン版)に掲載されました。


【研究背景】
 腸には、体内への異物の侵入を防ぐ「腸管バリア機能」が備わっており、その破綻は炎症性腸疾患(IBD)など多くの疾患の発症に関与しています。このバリア機能は、腸の上皮細胞同士をつなぐ「タイトジャンクション」(注1)によって維持されていますが、炎症性物質によって容易に損なわれます。近年、芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化が、腸の炎症を抑え、バリア機能を保つことが明らかになってきました。AhRは、体の中で“スイッチ”のように働き、特定の食品成分や体内物質を受け取ることで細胞の働きを調整するタンパク質で、腸のバリア機能の保護や炎症を抑える重要な役割を有しています。実際に、体内で産生される化合物6-formylindolo3,2-b-carbazole(FICZ)はAhRを活性化し、腸管バリア障害を改善することが報告されています。一方で、食品や植物由来の成分が同様の働きを持つかについては、十分に解明されていませんでした。本研究グループでは、ハーブの一種である「セージ」から、複数のジテルペノイドをAhR活性化物質として見いだしており、本研究では、これら天然由来成分による腸管バリア機能の保護について検証しました。

【研究成果】
 セージに含まれる天然成分のうち、2種類のジテルペノイド(「β-ヒドロキシ-9(11),13-アビエタジエン-12-オン」および「マルゴロン」)(図1)が、腸の細胞同士のつながりの強さの指標となる経上皮電気抵抗(TEER)(注2)を有意に上昇させ、腸のバリア機能を守る働きを持つことが明らかになりました(図2)。これらの成分は、炎症性物質によって低下する腸のバリアの強さを回復させること、また腸の細胞同士をつなぐタイトジャンクションの構造を保つ働きも示されました。さらに作用の仕組みを調べたところ、炎症を促進するNF-κBというシグナルを抑えることで、バリア機能を低下させる酵素の過剰な働きが抑制されていました。これらの効果は、腸の健康維持に関わるAhRという受容体を介して起こることが示されました。

【社会的・学術的なポイント】
 本研究の成果は、身近な植物由来の成分が腸の健康を支える新たな可能性を示しました。将来的には、炎症性腸疾患(IBD)の新たな治療や予防法の開発につながる可能性があります。

セージ(乾燥葉)

図1:β-ヒドロキシ-9(11),13-アビエタジエン-12-オン(左) およびマルゴロン (右)の構造

図2:腸管上⽪バリア機能障害に対するβ-ヒドロキシ-9(11),13-アビエタジエン-12-オン(1) およびマルゴロン (6) の回復効果

【論文情報】
論文名:8β-Hydroxy-9(11),13-abietadien-12-one and margolone ameliorate intestinal epithelial barrier dysfunction via aryl hydrocarbon receptor activation in a Caco-2 monolayer model
著者名:Katsutoshi Nishino
雑誌名:Phytomedicine Plus
U R L : https://doi.org/10.1016/j.phyplu.2025.100936

【用語解説】
(注1) タイトジャンクション:腸の細胞同士を密着させ、外から有害物質が体内に入らないよう“すきま”をふさぐ役割を持つ接着構造。腸のバリア機能を保つための重要なガードのような存在です。
(注2) 経上皮電気抵抗(TEER):腸の細胞同士がどれくらいしっかりつながっているかを測る「バリアの強さの指標」。値が高いほど細胞のつながりが強く、外からの侵入を防ぐ健康な状態を示します。

■東京工科大学 応用生物学部 食品機能解析学(西野勝俊)研究室

食品の機能性が着目されてから、様々な食品について、健康への有用性が明らかとなっています。当研究室では、食品に含まれる成分に着目することで、単に健康によい食品を提案するだけではなく、その良い効果を示す化合物を明らかにし、さらに、なぜ良い効果を示すか、遺伝子やタンパク質の発現量を解析することで解明することを研究の目的としています。特に腸管免疫や免疫細胞の分化に焦点を当てた研究を行います。
[主な研究テーマ]
・食品に含まれる機能性物質の探索
・食品由来物質による免疫機能向上効果の解析
・食品摂取がもたらす健康増進効果の解明
[研究室ウェブサイトURL] https://katsutoshi-nishino-lab.bs.teu.ac.jp/

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
東京工科大学
ホームページ
https://www.teu.ac.jp/
代表者
香川 豊
上場
非上場
所在地
〒192-0982 東京都八王子市片倉町1404-1

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