1型糖尿病の根治へ向けた画期的な低侵襲治療 中部地方初の保険診療による「膵島移植」を施行

学校法人藤田学園

~10月4日膵島分離、同5日移植~

藤田医科大学病院(愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98、病院長:白木良一)は10月5日、中部地方で初となるインスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)に対する「膵島移植」を実施しました。患者さんは70代の女性で、容態は非常に安定しています。
経緯としては、10月4日に本学内の細胞培養加工施設(CPC:Cell Processing Center)で、脳死ドナーの膵臓から膵島のみを分離。同5日に点滴にて膵島を患者さんへ投与しました。


■点滴による体への負担が少ない膵島移植
膵島は、インスリンを分泌する「β細胞」をはじめとした直径約50~500μmの細胞の塊で、成人一人あたり約100万個存在するといわれています。塊になって点在する様子から「膵臓のなかの島」という意味でこの名前が付きました。
糖尿病の患者さんの中には、膵島が機能しなくなり、血糖値を下げるインスリンを注射で補っても血糖値が不安定で意識障害などの低血糖発作を起こす方がいます。膵島移植は、それらインスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)の患者さんを対象とした画期的な治療で、2020年4月に保険収載されました。脳死もしくは心停止ドナーから提供していただいた膵臓から膵島細胞を集め、それを分離して浮遊液にし、局所麻酔により肝臓の門脈という血管から点滴投与で移植します。これまで国内では、今回の症例を含め36名に対し66回実施されています。
膵島移植は膵臓移植と異なり、外科手術が不要で、所要時間も15~30分と短く、患者さんの体への負担が軽いことが特長です。1回の移植で生着しない場合は繰り返しの移植も可能です。さらにステロイド不使用のため、骨密度の低下といった副反応が少なく、インスリン療法からの離脱を図れる画期的な治療法として注目されています。

■膵島移植が可能なのは全国に9施設のみ
当院は、2022年2月に厚生労働省より「インスリン依存性糖尿病に対する同種膵島移植」を実施できる第一種再生医療等の機関として認められ、中部地方で初の膵島移植保険診療認定施設となりました。膵臓移植が行える施設は全国に21カ所ありますが、膵島を移植できるのは、当院、京都大学医学部附属病院、福岡大学病院など9施設にとどまります。
膵島移植には膵島の分離が欠かせません。当院の場合、藤田医科大学に国際規格の細胞培養加工施設(CPC)があり、ここで膵島の分離から純化、浮遊液作成、その後の大学病院での移植まで一貫して行うことが可能です。


■膵島移植の背景
1型糖尿病は、生活習慣病に関連する2型と異なり、インスリンを分泌する膵島が何らかの原因で破壊されることで発症します。国内では11~14万人の患者がいるとされ、幼児から高齢者まで幅広いのが特徴です。高血糖状態が続くため、インスリン補充注射で血糖値を下げる治療を行いますが、血糖コントロールが極めて困難な場合は、低血糖により昏睡状態から死に至ることもある危険な疾患です。重度の患者さんには、膵臓移植や膵腎同時移植も検討されます。しかし、日本ではドナー数が非常に少ないため、その道のりは簡単なものではありません。さらに膵腎同時移植の場合は膵臓の5年生着率が約8割と良好ですが、膵臓単独の移植の場合は約3割と低いことも課題でした。それらに対して、新しい免疫抑制法を用いた膵島移植のプロトコールでは、5年生着率が6割と長期に生着し、成績向上が得られています。


■オールマイティな移植医療の実現をめざして
当院での膵島移植は、日本臨床腎移植学会理事長、日本膵・膵島移植学会理事長を務める当院臓器移植科の剣持敬教授の主導により、膵島移植チームを中心として関連学会および多科が連携して行います。剣持教授は、2003年に国立佐倉病院にて国内初の膵島分離を成功させ、2004年には国内2例目となる膵島移植を実施。我が国の膵臓・膵島移植をけん引する移植医療のスペシャリストとして知られます。

剣持教授は、「日本では約2000万人、6人に1人が糖尿病もしくはその予備軍とされています。当院が低侵襲な膵島移植に取り組むことにより患者さんの治療の選択肢を増やし、ひいては2型糖尿病における腎移植、1型糖尿病に対する膵腎同時移植を含め糖尿病に対するオールマイティな移植医療の実現をめざしていきます」と話しています。
 

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