昭和大学の研究チームが、インクレチンGIPの抗動脈硬化作用を実証
https://www.mdpi.com/1422-0067/25/17/9724
【用語説明】
※1: インクレチン
栄養素摂取に伴い分泌されインスリン分泌を促す消化管ホルモンの総称。
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)やGLP-1(グルカゴン様ペプチド−1)はインクレチンの一つで、膵臓にはGIPやGLP-1が作用する受容体があり、GIPやGLP-1はそれぞれの受容体に結合しその作用を伝えることで、インスリン分泌が促される。
※2: AMPK(AMP-activated protein kinase)
細胞の中で生命を維持するために必要な働きを担っている重要な酵素のひとつ。 AMPKは体全体のエネルギーバランスを保つために重要な働きをしており、細胞の中でエネルギーが足りなくなると、その事態を察知してエネルギー生産に関わる酵素のスイッチをONにする作用をする。
※3: NADPHオキシダーゼ
動脈硬化症の主な原因となる活性酸素生成酵素。
※4: マクロファージの泡沫化
血液中のマクロファージ(貪食細胞)が、大量の悪玉コレステロールや脂肪性物質を取り込み、血管内膜で泡状になった細胞。動脈硬化の主な成因の一つ。
※5: GIP受容体作動薬
GIP受容体に結合することで、GIPの情報を細胞の内部に伝達するアゴニスト。
▼本件に関する問い合わせ先
昭和大学 医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 講師
寺﨑 道重
TEL: 03-3784-8000
E-mail: ttmichi@med.showa-u.ac.jp
▼本件リリース元
学校法人 昭和大学 総務部 総務課 大学広報係
TEL: 03-3784-8059
E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の寺﨑道重講師(医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門)と山岸昌一教授(同)らの研究チームは、インクレチンGIPがAMPK経路を介して老化物質AGEによって惹起されたNADPHオキシダーゼに由来する酸化ストレスの産生を抑え、マクロファージの泡沫化を抑制することを世界で初めて明らかにしました。
本研究成果は、論文引用頻度のきわめて高い科学誌『International Journal of Molecular Sciences』に記載されました。
【研究の背景・目的】
心血管病は動脈硬化症を基盤として発症し、超高齢社会であるわが国においては、主たる死亡原因の一つになっています。糖尿病や生活習慣病では、食生活の乱れも加わって体内で老化物質であるAGE(終末糖化産物)が蓄積されていき、心血管病のリスクを増大させることが知られてます。一方、小腸K細胞から分泌されるインクレチンGIPは膵β細胞からのインスリン分泌を促進するだけでなく、多面的効果も報告されており、糖尿病治療の一手段として期待を集めています。
【研究成果の概要】
今回、ヒトU937マクロファージを用いた研究により、ヒトU937細胞にはGIP受容体とRAGE受容体が存在すること、また、GIPがAMPK経路を介してAGEに惹起されたNADPHオキシダーゼに由来する酸化ストレスを抑え、Cdk5-CD36系をブロックすることでマクロファージの泡沫化を抑制することを見出しました。
【今後の展望】
GIP受容体作動薬は、心血管病や老年疾患に対する新しい治療手段になりうると期待されます。
【論文情報】
・雑誌名: International Journal of Molecular Sciences(impact factor 2024:4.9)
・論文名: Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Inhibits AGE-Induced NADPH Oxidase-Derived Oxidative Stress Generation and Foam Cell Formation in Macrophages Partly via AMPK Activation
・著者名: Michishige Terasaki, Hironori Yashima, Yusaku Mori, Tomomi Saito, Naoto Inoue, Takanori Matsui, Naoya Osaka, Tomoki Fujikawa, Makoto Ohara, Sho-Ichi Yamagishi
・掲載日: 2024年9月8日
・DOI: 10.3390/ijms25179724
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