【ニュースレター】ライダーの直観的な認知を実現する「感覚拡張HMI」

ヤマハ発動機株式会社

~学術的知見と情緒的要素を融合し、聴覚を利用して死角や車両後方の状況認知を支援~

「感覚拡張HMIを活用すれば、より安心して、より楽しくオートバイを楽しめると思うんですよね」と渡辺さん
 
注目を集める「新たなデザイン領域」
 「モノや機能を生み出すプロセスに、設計の領域とデザインの領域があるとします。でも本来、それらは分業されるべきものではありません。HMI(※)デザイナーとは、乖離してしまったその両者をつなぐ存在であり、そうした役割は今後ますます重要になってくると考えています」
 今年5月に開かれた「人とくるまのテクノロジー展2024」で、当社が公開した新技術「感覚拡張HMI」。たとえば二輪車乗車時に、ライダーの死角や車両後方の状況をミラーで「視る」のではなく、聴覚を利用して「直観的に認知する」技術です。「直観的な認知」を、「気配を感じる」と平易な言葉に置き換えてみると、もっとイメージしやすいかもしれません。
 さて、冒頭のコメントは、この「感覚拡張HMI」の研究・開発において、そのデザインを担った渡辺政樹さん(当社プランニングデザイン部)によるものです。渡辺さんの“HMIデザイナー”という肩書に、「それはいったい、どのような役割なのか?」「何をデザインする(した)のか?」と尋ねたところ、前述のとおり整理された言葉が返ってきました。
 「いまでこそユーザーインターフェイス(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)という概念が認知されていますが、私がデザイン心理学や行動学を学んでいた頃はまだそうした言葉自体が存在せず、“あなたは何をデザインしているのか?”と聞かれるたびに、その返答に困っていました」と苦笑いします。
※HMI
HMI(Human Machine Interface)とは、人間と機械の間で情報をやりとりする際に伝達を担う部分の総称。当社では、人間研究の枠組みの中で、「感覚拡張」の他にも「愛着研究」や「協調HMI研究」等にも取り組んでいる。

 
シミュレーターを用いた「感覚拡張HMI」の研究。車両後方の交通状態などを聴覚によって直観的に認知する。
 
ユーザーの気持ちに乗り移るUI/UXデザイン

 「感覚拡張HMI」を事例に、渡辺さんの仕事についてもう一歩踏み込んで解説してもらいました。
 「感覚拡張HMIには、人間工学や認知心理学といった学術的な背景があります。ただ、それだけでは学問の領域にとどまってしまいますので、その知見を各種の課題解決に役立たせるには、社会やユーザーの目線をもってモノや技術やサービスに落とし込む必要があります。そのためにも、ユーザーの気持ちに乗り移り、情緒的かつ感覚的にUI/UXをデザインする存在が必要になるというわけです」
 たとえば高速道路をオートバイで走り、車線変更しようとするシーン。速度によって変化する視界や周囲のクルマの動き、さらには爽快感や不安感といったライダーの感情までを想像する。そして、その想像と人間の耳の構造や認知の仕組みといった学術的な知見を組み合わせ、「視るより楽に車両後方の様子がわかる技術」としてデザインしたことが、「感覚拡張HMI」におけるHMIデザインというわけです。
 特許を取得し、実装に向けたテストも計画されているこの技術。「これからのモビリティの在り方を変えるポテンシャルを秘めている」と、社内各部門のエンジニアたちからも大きな期待を集めています。
 
感覚拡張HMIは、ヘルメットに内蔵されたスピーカーが発する音で後方の気配を感じ取る。
サウンドを発するスピーカーの位置によって、車間距離や方向を把握する。
また、ヘルメットだけでなく、ウェアラブルデバイスや立体音響などさまざまなな手段に対応しており、
二輪車以外のモビリティにも適用可能。
 
■ヤマハ発動機の「人間研究」
https://global.yamaha-motor.com/jp/design_technology/human_subjects_research/

■広報担当者より
渡辺さんは、当社テストコースを走行するための社内ライセンスを持つ稀有なデザイン人材です。その取得は非常にハードルが高く、所有者の多くは走行実験部門のライダーです。「もちろん簡単ではありませんでしたが、どんなデザインにもユーザーの気持ちに乗り移る必要があります。自分の体験によって、そこを先に取りにいくために苦労して取得しました」とのこと。「感覚拡張HMI」にも、ライダーとしての渡辺さんの引き出しがさまざまな面で活かされているはずです。

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