日本全国の事務所・庁舎の省エネ化がもたらす隠れた経済効果を推計

デロイト トーマツ グループ

2030年度の日本全国の省エネ建築物の経済効果は2,960億円 ―地球温暖化対策計画に基づき、2030年度までに新築・改修される全国の建築物を対象に推計

デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(代表執行役:神山友佑、以下「デロイト トーマツ」)と株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長:松原和彦、以下「NTTファシリティーズ」)は共同で、省エネ建築物の新築・改修による効果を総合的に定量評価する指標を開発し、2023年12月に発表*しています。この度、開発した指標に基づき、日本全国の2024年度から2030年度までの新築・改修により省エネ化される事務所・庁舎の2030年度における経済効果額を試算し、経済効果は2,960億円、うちエネルギー消費量の削減効果(Energy Benefits、以下EB)は450億円/年、EBに付随して発生する副次的効果(Non-Energy Benefits、以下NEBs)は2,510億円/年と推計しましたのでお知らせします。
 
取組の背景・目的
デロイト トーマツとNTTファシリティーズは、2023年4月より省エネ建築物のエネルギー・光熱費削減以外の効果(NEBs)の定量評価手法の開発に取り組んでいます。2023年12月には、「健康増進」「知的生産性向上」等のNEBsにおける12の評価指標を公表しました*。また、2024年1月には、ダイダン株式会社(代表取締役社長:山中康宏)が保有する実際の建物でのNEBs効果を算定し、指標の妥当性について検証を行うとともに、ビルオーナーやワーカーにとっての定量的な効果を公表しました**。
この度、全国の建築物の省エネ化・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を後押しするため、その経済効果を明らかにすることを目的に、「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日 閣議決定)」で示された目標に沿って日本全国の事務所・庁舎が新築・改修される場合の、2030年度時点の建築物の省エネ化によるEBとNEBsの効果額を推計しました。

*省エネ建築物の新築・改修に取り組むメリットを総合評価する12の指標を共同開発
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20231211.html
**省エネ建築物の新築・改修に取り組むメリットを総合評価する12の指標についてZEB認証オフィス3棟での検証を実施
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/net-zero-energy-building-benefits.html


推計内容
■推計対象
本試算では、建物におけるエネルギー消費量やCO2排出量の削減目標を示した「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」及び「2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況について(令和5年 6⽉30⽇地球温暖化対策推進本部)」に記載の建物の脱炭素化の取組の進捗状況やエネルギー消費削減量の実績・予測を活用して、2030年度(単年度)のEB及びNEBsの効果額を推計しました。
NEBs指標は事務所ビルを想定して設定していることから、今回の推計では、日本全国の2024年度から2030年度までに省エネ改修または新築される事務所・庁舎を対象としています。

■推計結果
2024年度以降に新築・改修されるストック建物***における2030年度のEBについては、現在のエネルギー価格に基づく場合、約450億円/年、CO2削減量は約75万tと推計しました。NEBsについては、実際の建物での算定結果を参考に、新築・改修が行われる建物の面積を基に算定を行い、2030年度に約2,510億円/年の効果があることを推計しました。EBのみを対象とした算定と比較し、NEBsを考慮した場合は5倍以上の効果が得られると推計しました。
今回の取組では、算定対象を事務所・庁舎に限定していますが、これは非住宅建築物のうち約13%にとどまっています。また、本推計では健康増進や知的生産性向上に繋がる施策を最低限実施した前提での算定を行っていますが、それらの施策を新築・改修時により多く取り入れることにより、効果が増大すると想定されます。

図1 推計対象とした建築物

図2 効果額の内訳
*** 建物の脱炭素化に向けた国のロードマップでは、中大規模建築物については遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEB基準の省エネ性能に引き上げ・適合義務化するという目標が設定されています。また、新築建築物のみならず、既存建築物の改修についても取組が想定されており、2030年度に向けた省エネ基準別の建築物ストック割合が公表されています
 
今後の展望
本推計によって、省エネ建築物の改修・新築によるエネルギー削減効果および、健康増進や知的生産性向上といった副次的効果の社会的インパクトが示され、建築物の省エネ化に取り組むことの社会的重要性が示されました。
今後も、デロイト トーマツとNTTファシリティーズは、幅広いステークホルダーと連携し、NEBs普及の取組を通じて、建築物の省エネ化・ZEB化を促進し、ワーカーのウェルビーイングの向上と社会全体での脱炭素化を推進していきます。


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本リリースは、NTTグループが展開するGXソリューションブランド「NTT G×Inno(エヌティティ ジーノ)」※と連携した取り組みです。
 

URL: https://group.ntt/jp/group/nttgxinno
※「NTT G×Inno」は、日本電信電話株式会社の登録商標です。「NTT GX(Green Transformation)× Innovation」の略称であり、社会へのソリューション提供を通じてGX分野でInnovation(変革)をおこし、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していく取り組みです。

〈参考〉
【推計の方針】

地球温暖化対策計画に基づき、2030年度のストック建物について、対策を行ったケース(対策ケース)と、対策を行わないケース(なりゆきケース)での、エネルギー消費削減量の差分からEBを、省エネ建築物の新築・省エネ改修実施面積の差分からNEBsを推計。2024年度から2030年度において、省エネ改修または新築される建物を推計対象とした。

【推計に用いた前提】
  • 非住宅建築物のうち「事務所」用途が占める割合については、平成30年建築物ストック統計及び平成30年法人土地・建物基本調査確報集計より、民間・公共建物を対象に推計
  • ワーカーの人数により効果を推計するロジックである健康増進や知的生産性向上、離職率低下効果については、日本全体における省エネビルの新築・改修の総面積からワーカー一人あたりの床面積を割り戻す形で対象人数を推計し試算。棟数単位で効果を推計するロジックである広告宣伝効果については、令和4年度着工統計より、事務所1棟あたりの平均面積から対象棟数を推計
  • 健康増進・知的生産性向上効果については、省エネにつながる施策を最低限実施した場合に発現する効果を想定し推計
  • 炭素税軽減効果については、IEA「World Energy Outlook 2021」より、2030年の炭素価格を引用し推計
  • 不動産価値向上効果及び定量化を検討中の4項目(内外装の美観向上、環境認証・格付の取得、社内啓発、資金調達)については、本推計においては検討外とした

【推計の対象範囲】
2024年度から2030年度までに省エネ改修された建物と、同期間に新築された省エネ建築物を対象とし、2030年度における効果額を推計した。例えば、2024年度に竣工された建物により発生する効果は、2024年以降毎年効果が発生し、2025年度以降に竣工された建物についても同様である。
2030年度では、2024年度~2030年度に竣工された建物による効果が積みあがる形で効果額が発生していると想定し、推計している。
 
表1 NEBs評価指標の定義

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