効率的なIOWNオールフォトニクス・ネットワーク利用に向けた光と無線のリアルタイム連携制御を実証 ~工場のDXを支える無線利用状況に応じた光ネットワークの提供を推進~
- IOWN APNと無線システムを利用状況に応じてリアルタイムに連携制御する実証実験に成功しました。
- 今回の実証実験に際しては、IOWN Global Forumで検討中の、モバイルシステムと光システムを連携制御するためのインターフェースを採用しました。
- 本技術により、工場内のDXを支える移動型ロボットを持続的に操作することや、稼働する機器類の利用状況や用途に応じて、無線アクセスポイントからサーバまでのAPN回線の接続先を自由に変更できることを実現しました。
- これにより、IOWN APN を1回線のみで複数用途によるシェアが可能となり、工場におけるDXの効率化などが期待できます。
本成果により工場内のDXを支える移動型ロボットを持続的に操作することや、稼働する機器類の利用状況(端末台数、利用アプリケーションの変化)や用途(ビッグデータ収集解析、遠隔ロボット操作)に応じて、無線アクセスポイントからサーバまでのAPN回線の接続先を自由に変更できることから、IOWN APN 1回線の複数用途によるシェアが可能となり、工場におけるDXの効率化などが期待できます。
なお、本実証実験で実施した技術については2024年5月16日(木)~17日(金)に開催予定の「つくばフォーラム2024*5」にて紹介します。
1.背景
労働人口の減少を背景に、製造業におけるDXが急速に拡大しております。具体的には、工場内の各プロセスにおける機器の稼働状況などのデータをリアルタイムに収集・分析することで、最適化、効率化を図る対策はもちろんのこと、最近ではロボット導入による効率化・人手不足の解消の動きが活発化しております。こうしたDXを支えるネットワーク環境としては、無線・有線問わず、大容量・低遅延な性能に加え、サービスを途絶えなさせない信頼性が重要となります。特に無線ネットワークにおいては、工場内での利用が想定される無線LANやローカル5Gなどの自営無線アクセス環境での対応が重要となります。また、DX導入に向け課題となるのが、消費電力とコストです。ネットワークの観点では、ネットワーク回線数が増えるほど消費電力・コストも増大します。そのため、工場のDXの普及拡大に向けては、ネットワークの性能・信頼性を担保しつつ、ネットワーク回線の効率的な利用が課題となっていました。
2.実証実験の概要
工場内無線環境を想定したWi-FiアクセスポイントとIOWN APN回線を接続し、Wi-Fiアクセスポイント配下の無線端末とクラウドサーバ間で通信する環境を構築し、無線利用状況を把握するCradio®機能を実装した無線コントローラと、IOWN APN回線のリアルタイム切り替えを行う光コントローラを、eCTIを介して連携させることで、以下の2つの実証実験を行いました。
① ユーザ指示に基づく、用途に応じた無線+光連携実証
工場において、各プロセスのビッグデータ収集作業から遠隔ロボット操作作業への切り替えを想定し、それぞれの作業における性能要件に合わせ、使用するWi-Fiアクセスポイントと接続先クラウドサーバへの光パスを同時に切り替える実験を行い、連携動作が完了することを実証しました。
② 無線利用状況に基づく、接続ユーザ端末数に応じた無線+光連携実証
工場において、接続されるユーザ端末数を検知し、その情報に基づき自動で接続先クラウドサーバへの光パスを切り替える実験を行い、100ms程度で連携動作が完了することを実証しました。
3.技術のポイント
・無線区間の電波変動把握技術、および外部システムとの協調制御 (Cradio®)
端末近辺の無線フレームを常時収集する収集BOXにて、精緻な無線環境情報を取得することで、無線区間の電波変動を把握する技術。これにより特定のAP(アクセスポイント)に帰属する接続端末数の変化を観測し、その変動をきっかけとして、協調制御機能部へ通知(もしくはユーザ指示に基づき、協調制御機能部へ通知)。協調制御機能部は、外部システムである低遅延FDNの制御機能部に対し、連携制御を実現しました。
・光無線連携制御技術
Cradio®と低遅延FDNの制御機能部間で、eCTIを介して無線区間の電波状況や接続端末数、用途変更などの情報をやりとりし、無線+光区間のリアルタイム制御を実現しました。
・NWコンピュート連携技術
光ネットワークの伝送時間とエッジサーバ上のアプリケーションの処理時間をトータルで監視し、サービスが持続可能なようネットワーク経路および使用するエッジサーバをリアルタイムに同時に切り替える技術。本実証では、光ネットワークとしてIOWN APNを適用し、光スイッチの高速切り替えを実現しました。
4.今後の展開
本技術はWi-Fiやローカル5Gなどの自営系無線に加え、Beyond5G/6Gなどのセルラ系システムにも応用可能です。今後は、様々な無線システムとIOWN APNの連携動作、各種利用シーンを想定した実証実験を進め、IOWN APNと自営系無線を組み合わせたトータルネットワークソリューションビジネスの展開をめざします。
また、2024年度中を目途に、IOWN Global Forumにおいて検討中のエラスティック・ロードバランシング機能*6に適用し、無線基地局とIOWN APNを連携することで、モバイルシステムの省電力化に向けた実証実験を進めます。
【用語解説】
*1 IOWN APN
APNは、ネットワークから端末、チップの中にまで新たな光技術を導入することにより、これまで実現が困難であった超低消費電力化、超高速処理を達成します。1本の光ファイバ上で機能ごとに波長を割り当てて運用することで、インターネットに代表される情報通信の機能や、センシングの機能など、社会基盤を支える複数の機能を互いに干渉することなく提供することができます。APN IOWN1.0はNTT東日本、NTT西日本より商用提供されております。
https://www.ntt-west.co.jp/news/2303/230302a.html
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html
*2 拡張連携IF(eCTI)
拡張連携IF(eCTI:extended Cooperative Transport Interface)は、モバイルシステムと光システムを連携制御するためのインターフェースで、無線+光のネットワークにおいて、性能面・運用面で様々な効果が期待できます。Wi-Fiやローカル5Gなどの自営系無線システムやBeyond 5G/6Gなどのセルラ系無線システムなどと連携し、リアルタイム制御、プロアクティブ制御が可能です。
https://iowngf.org/wp-content/uploads/formidable/21/IOWN-GF-RD-IMN-PHSE2-1.0.pdf
*3 Cradio®
マルチ無線プロアクティブ制御技術(群)。複数の技術からなるIOWNの構成技術。本実証では協調制御技術を適用。
https://www.rd.ntt/research/AS0101.html
*4 低遅延FDN(Function Dedicated Network)
ネットワークの伝送時間とエッジコンピューティングの処理時間をトータルで監視し、サービス要件に応じて遅延等の品質をエンド・ツー・エンドで常に低遅延・低ジッタな状態を保ち、サービスを持続的かつ安定的に提供する技術。
https://journal.ntt.co.jp/article/23110
*5 つくばフォーラム2024
https://www.tsukuba-forum.jp/
*6 エラスティック・ロードバランシング機能(Elastic Load Balancing)
基地局のアンテナ側装置(Radio Unit/RU)と制御側装置(Distributed Unit/DU)をAPN回線で接続し、トラフィック状況に応じてAPN回線の切り替えを行いDUの分散/集約制御することで、DUの省電力化を図る技術。本機能実現においては、拡張連携IF(eCTI:extended Cooperative Transport Interface)を活用することで、APNの切り替えとDUの分散/集約制御を連携して制御が可能です。
https://iowngf.org/wp-content/uploads/formidable/21/IOWN-GF-RD-IMN-PHSE2-1.0.pdf