【東芝エネルギーシステムズ】佐賀市のCO2分離回収商用設備で、耐久性が高く環境にやさしいCO2吸収液の実証運転を完了
東芝エネルギーシステムズ株式会社
~新吸収液を用いたCO2分離回収設備の販売開始~
当社は、2016年に佐賀市清掃工場に、当時、清掃工場向けとしては世界初となるCO2分離回収商用設備を納入しました注1。現在、佐賀市清掃工場では、ゴミ焼却の際に発生する排ガスの一部から、1日で最大10トンのCO2を分離回収しています。今般の開発は、この商用稼働しているCO2分離回収設備を用いて、当社エネルギーシステム技術開発センターが開発した新吸収液を活用し、合計8000時間以上の運転を行いました。
排ガスからCO2を分離する際、低温状態でCO2を吸収し、高温状態でCO2を放出するアミン系の水溶液を吸収液として使用しています。設備は長期間使用するため、事業者からは、吸収液の性能向上によるCO2分離回収設備の維持管理費抑制が求められていました。そのような背景から、CO2回収量1単位あたりの必要エネルギー(回収エネルギー)を現行吸収液と同等に保ちながら、吸収液の劣化度合いを抑えた新吸収液を開発してきました。また、環境配慮の観点から、大気中へのアミン成分排出量の抑制も考慮して開発を行ってきました。
本実証運転では、新吸収液の性能について、現行の吸収液と新吸収液の劣化速度および大気中へのアミン成分排出量について比較を行いました。その結果、福岡県大牟田市にある当社製パイロットプラントで約800時間の運転検証を行った際の試験結果と同様に、吸収液の劣化速度は従来の3分の1まで、アミン成分排出量は従来の10分の1程度にまで低減することを確認しました。
また、当社製パイロットプラントでも新吸収液の性能試験を並行して行っており、その中で、新吸収液が現行の吸収液に比べ、特に排ガス中のCO2濃度が低い領域で回収エネルギーを低減できることを確認しました。このため「TS-X™」を用いることで、比較的濃度の低いCO2が排出される天然ガス火力発電向けなどの設備でより効率的にCO2を分離回収することができます。
当社は、吸収液のより効率的な運用を目指し、電気透析によりCO2分離回収後の吸収液に徐々に蓄積される不純物を選択的に除去して浄化する「電気透析法」について、本年4月から佐賀市と共同で研究を開始しました。
カーボンニュートラルの実現に向け、排ガスからのCO2分離回収への期待は高まっています。当社は、CO2分離回収技術開発によりCCUS注2の社会実装を支えてまいります。
注1 佐賀市「清掃工場バイオマスエネルギー利活用促進事業」二酸化炭素分離回収活用システムの実証試験設備として納入
https://www.global.toshiba/jp/company/energy/topics/thermal/ccu.html
注2 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):火力発電所や工場等から排出されるCO₂を分離回収、利用、貯留する技術
佐賀市清掃工場CO2分離回収設備の写真
*東芝エネルギーシステムズ株式会社は株式会社東芝の100%子会社です。