欧州初のカーボンキャプチャー(CO2分離回収)実証実験を成功裏に開始
この実験は、脱炭素化が難しい産業向けの低コストのCO2回収ソリューションを実用化することを目的とした英国の国家プロジェクト(XLR8 CCSプロジェクト)の一環であり、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省および民間セクターの追加拠出を合わせ、総額270万ポンドの資金規模となっています。
今般、当社グループのPilkington United Kingdom Limited社(英国、以下「ピルキントンUK社」)のグリーンゲート事業所(同国セントヘレンズ)にあるフロート窯において、当プロジェクトを主導するC-Capture社(英国)の汎用型CO2回収溶媒ユニット(CCSCU)が設置され、成功裏に分離回収実験を開始しました。
現在、このCCSCU はフロート窯の煙突基部に接続され、煙突内の煙道を流れる排出ガスからCO2を分離回収しています。
今回の実験の主目的は、CCSCUがガラス製造窯から排出される不純物を含む排気ガス中においても十分に機能を発揮できることを確認する点にあり、この実験の期間は数か月間を予定しています。
またWood社は、当プロジェクトの一環として、グリーンゲート事業所でのC-Capture社技術による100トン/日レベルのCO2分離回収の実現可能性についても調査を完了しています。
当プロジェクトの成功が確認された後、C-Capture社とそのプロジェクトパートナーは、2030年までに年間数百万トンレベルのCO2を回収可能な商業ベースの施設を3つの業界に展開する予定にしています。
NSGグループは、サステナビリティへの取り組みは、環境や社会課題の解決、および事業の持続的な発展を両立させる重要な活動であると位置づけ、サステナビリティ活動を通じて社会と共に成長することを目指しています。
なかでも気候変動対策をはじめとする環境問題への取組を最重要課題の一つとして位置付け、製造工程で発生するCO2の削減、再生可能エネルギーへのシフトに積極的に取り組んでいます。NSGグループが掲げる温室効果ガスの排出削減目標は、日本のガラス製造業として初めて「科学的根拠に基づいた目標」としてSBTイニシアティブ(SBTi)(※1)に認定されている他、世界で初めて水素エネルギーや100%バイオ燃料によるガラス製造実験に成功するなど、環境問題に対する積極的な取り組みを進めています。
NSGグループ グローバルR&Dポートフォリオ・マネージャー Paul Skinner
「今回の実験は、ガラス製造工程においてもCO2回収が実際に可能であることを実証しています。これは非常に画期的な開発であり 、カーボンニュートラルなガラス製造を目指すNSGグループにとって脱炭素化技術の道のりにおける重要なマイルストーンとなるものです。このプロジェクトを通じて、C-CaptureやGlass Futuresのチームと協力できたことは素晴らしい経験であり、今後、さらに貴重な学びを得ることを楽しみにしています。」
C-Capture社 CEO Tom White氏
「ガラス製造業界におけるCO2回収実験のスタートが成功し、ネットゼロへの道のりにおける重要な一歩を発表できることを誇りに思います。CO2回収は、気候変動に取り組むために喫緊に必要とされている多くの解決策の重要な部分です。しかし現在、コスト、技術の成熟度、複数の業界における互換性などの障壁が、CO2回収の普及を妨げています。既に実用化されている他のアプローチとは根本的に異なる化学的性質に基づく当社の次世代技術はCO2回収分野におけるイノベーションです。アミンの使用に依存しないため、低コストで環境にやさしいことが特徴であり、非常に堅牢であるため、ガラスやセメントなど、世の中に不可欠であるが、排ガス中の不純物が多く脱炭素化に課題を抱える産業での使用にも適しています。 C-Captureのアプローチの利点は、現在、CO2回収・貯留技術の普及を妨げている障壁を打ち破り、気候変動への取り組みに世界的に大きく貢献する可能性を秘めていることを意味します。このプロジェクトは、これらの業界にとって大きな前進であり、ネットゼロへの道のりの重要な部分となることでしょう。」
英国エネルギー効率担当大臣 Callanan卿
「CO2回収は、重工業を脱炭素化し、野心的な環境目標を達成するために不可欠な役割を果たします。私たちはすでにこの技術に約3億5,000万ポンドを投資しており、その中には今回のヨーロッパの板ガラス業界における初のCO2回収試験も含まれています。この革新的な実験は、産業全体のCO2回収技術を変革する可能性があり、ネットゼロへの移行における重要な一歩となります。」
Glass Futures R&Dプロジェクトリーダー Masimba Toperesu博士
「ガラス業界にとってのこの欧州初の試みは、ガラス業界や他の分野のパートナーがCCUSをよりよく理解するのに役立つ本技術の実装に向けた記念碑的な一歩です。このような稼働中の生産現場での実証を通じて、最終的にはこれらの基幹産業を脱炭素化していきます。」
Wood社 コンサルティング担当エグゼクティブプレジデント Azad Hessamodini氏
「CO2回収は、ネットゼロへの道のりを加速させる上で重要な役割を果たしており、当社はテクノロジーパートナーやクライアントと協力して、スケーラブル、投資可能で提供可能なソリューションを作成することで、この歩みを前進させることに注力しています。Woodのチームにとって、脱炭素化の専門知識を応用し、競争力のあるCO2回収ソリューションを提供して重工業などCO2削減が困難な産業の排出量を削減することは非常にやりがいのあることです。エネルギー安全保障・ネットゼロ省、C-Capture、XLR8 CCSプロジェクトパートナーとともに、C-CaptureのCO2回収技術の展開と最初のオンサイト試験の開始が達成できたことを非常に誇りに思っています。」
Heidelberg Materials UK CEO Simon Willis氏
「CO2回収はセメント生産を脱炭素化する唯一の方法であり、2050年までにネットゼロカーボンを達成するためには不可欠です。ウェールズ北部のパデスウッド・セメント工場は、すでにHyNet North Westの炭素回収・貯留プロジェクトの一部であり、ケットン工場のXLR8 CCSプロジェクトへの関与は、新技術の開発に対する当社のコミットメントの一例です。私たちはピルキントンUKの試験を注意深く見守っており、2024年に独自の試験を開始することを楽しみにしています。成功すれば、Heidelberg Materialsグループの他の拠点にも展開される可能性があります。」
(※1)SBTi(Science Based Targets initiative):
CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)およびWWF(世界自然保護基金)による共同イニシアティブで、気候変動リスクの低減に向けて企業に対し、科学的知見と整合した温室効果ガス削減目標の設定を推進しています。
NSGグループのサステナビリティ活動指針について
NSGグループは、2019年に取得したSBT認証を2021年に見直し、2030年までのCO2の排出削減目標を2018年対比30%に引き上げた上で、2050年までのカーボンニュートラル達成にコミットし、この実現を目指しています。この新たな目標は、2022年5月にSBTiに認定されており、将来のカーボンニュートラルの達成に向けた、サステナブルな社会の実現に向け様々な活動を推進しています。
サステナビリティ活動の取り組みについて:https://www.nsg.co.jp/ja-jp/sustainability
NSGグループ(日本板硝子株式会社およびそのグループ会社)について
NSGグループは、建築および自動車用ガラスとクリエイティブ・テクノロジー分野で事業を展開する世界最大のガラスメーカーのひとつです。
建築用ガラス事業は、各種建築用ガラス、太陽電池パネル用ガラス等を製造・販売しています。
自動車用ガラス事業は、新車用(OE)ガラスや補修用(AGR)ガラスの分野で事業を展開しています。
クリエイティブ・テクノロジー事業の主要製品は、プリンターやスキャナーに用いられるレンズ、タイミングベルトの補強材であるグラスコードを中心とした特殊ガラス繊維やガラスフレーク、およびファインガラスです。
C-Capture社について
C-Capture社は、気候変動の影響を緩和するための次世代の炭素回収技術を開発しています。同社のソリューションは、現在市販されているアミンの使用に依存しているアプローチとは根本的に異なる化学的性質に基づいており、より安全で安価な代替品を提供します。非常に堅牢で、O2、SOx、NOxなどの産業用排ガス中の不純物に対する高い耐性があります。その炭素回収技術は、削減が困難な産業など、幅広い用途に適しています。同社のソリューションの利点は、現在、二酸化炭素回収・貯留技術の普及を妨げている障壁を打ち破り、気候変動への取り組みに世界的に大きく貢献する可能性を秘めていることを意味します。C-Capture社は、リーズ大学化学科からスピンアウトして2009年に設立されました。投資家には、IP Group、Drax、BP Ventures、Northern Gritstoneが含まれます。
C-Capture社の詳細はこちら:https://c-capture.co.uk/