【ニュースレター】国産広葉樹活用に「無人ヘリ」の森林計測が貢献

ヤマハ発動機株式会社

里山を歩き、樹木のデータを取得。その幹にタグを付ける国産広葉樹活用プロジェクトの皆さん
(C)黒田慶子・神戸大学名誉教授

「森の立木」をデジタルカタログで紹介
 森を歩き、ナラやカエデ、サクラの仲間など、各種広葉樹を探索し、記録をとっているのは神戸大学などでつくる「国産広葉樹活用プロジェクト」の皆さんです。樹種を特定し、幹の長さや直径を測り、さらには形状や生育状態等を確認してデータベースに入力していきます。
 「MORI TAGシステム」(外部リンク:https://www.arboreta.co.jp/moritag)は、広葉樹の活用や流通の活性化を目指して開発された、まったく新しい発想の森林管理システムです。樹木を伐り出すことなく立木のまま電子カタログに掲載することで、木々の個体情報を必要とする事業者等にお知らせすることができます。森の中に点在する広葉樹を材や財として浮かび上がらせ、その活用・流通を促せば、森林の持続的な管理にも期待ができることから2022年にはグッドデザイン賞も受賞しました。
 「かつて広葉樹は、薪炭や暮らしの道具の原材料として日本人の生活には欠かせないものでした」と話すのは、「MORI TAGシステム」を展開する合同会社アーボレータの黒田慶子代表(神戸大学名誉教授)です。「現在、家具等に使われている広葉樹のほとんどは輸入材。売り手と買い手をつなぐ仕組みをつくることで、伐る・使う・育てるの循環を創出し、日本の林業の振興や森林環境の保護、また放置山林の整備による防災等にも結び付けたい」と話します。

 
「MORI TAG」の付いた広葉樹は、立木のままデジタルカタログで紹介。買い手がついた後に伐り出される
(C)黒田慶子・神戸大学名誉教授

資源量の概算把握に「RINTO」を活用
 しかし、一方で課題もあります。樹木の調査やタグ付けには、写真のように人の手による大きな労力が必要です。広大なエリアを手当たり次第に歩いて広葉樹を探すのは効率も悪く、現実的ではありません。
 そこで連携したのが、当社のスマート林業支援サービス「RINTO(リント)」でした。産業用無人ヘリコプターによるレーザ計測で高精細な森林情報を取得し、計測データの解析や可視化を行うサービスです。
 「昨年、長野県の山林で空からのレーザ計測を試験的に実施しました。広葉樹林の幹計測はそれまでは困難とされていたそうですが、私から『落葉期なら計測できるのでは?』と提案したところ、『それなら同じ場所で空と地上から計測してみよう』と話が広がり、今回試行が実現しました」(黒田さん)
 デジタルカタログによる広葉樹の販売はすでに始まっており、昨年は大手家具メーカーが長野県の立木を購入。受注後、伐採~製材~納品へと進み、新しい流通・販売のスタイルが実現しました。
 「里山所有者の大半は農家の皆さんです。無価値だと思っている里山の広葉樹を“資産”と認識していただくことがその第一歩。今後は埼玉県川越市の平地林など、「MORI TAGシステム」の活用エリアを順次拡げていきたい」と意気込んでいます。

 
プロジェクトを支援する当社のスマート林業支援サービス「RINTO」。上空から広葉樹の密生エリアを探索する

■森林計測サービス RINTO(リント)
https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/forest/

■広報担当者より
「MORI TAGシステム」の仕掛人である黒田先生にお話を伺って、印象深かったのは、先生の広葉樹に対する深い愛情でした。「その情熱の源は?」とお尋ねしたところ、「学部生だった頃に顕微鏡で見た細胞」というお話をしてくださいました。「広葉樹の細胞は機能美に溢れている。その美しさに魅せられた」そうです。「薪炭用だから質が悪い」と誤解されてパルプ用に安く売られてしまうこともある日本の広葉樹。その価値が、黒田先生らの取り組みで見直されることを願っています。

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