AIスーツケースの社会実装による共生社会の実現を目指し、「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム」の活動を1年延長へ
実用モデルと先進技術の開発を推進
アルプスアルパイン株式会社(本社:東京都大田区、代表取締役社長執行役員:栗山年弘、以下、アルプスアルパイン)、オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長 CEO:山田義仁、以下、オムロン)、清水建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:井上和幸、以下、清水建設)、日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:山口明夫、以下、日本IBM)の4社が、共生社会の実現を目指し、正会員として活動する一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム(以下、コンソーシアム)」は、視覚障がい者が自立して街を移動し、日常の活動をスムーズに行うためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」の開発を進め、社会実装に向けた取り組みをより加速させるため、2022年11月30日までと予定していた活動期間を、2023年11月30日までの1年間、延長します。また、実用度を高めた新しいモデルを開発し、東京都中央区の日本橋にて実証実験を実施しましたこと、先進技術開発の進捗をご報告いたします。■実用モデルの開発に向けた取り組み
実用モデルではバッグメーカーエース株式会社の協力のもと、走行時安定性の向上、交換可能なバッテリーの採用によるメンテナンス性の向上、発熱の低減等を実現しました。また、市街地を連続走行できるようにソフトウェアも改良しました。このモデルを用いて、三井不動産株式会社が管理する日本橋室町地区の5つのビルと東京メトロ三越前駅地下道を結ぶ市街域内の店舗や施設を自由に移動する、初となる大規模なパイロット実験を2022年9月から1ヶ月間実施し、成功させました。
本実験には約40人の視覚障がい者が参加し、実験開始前の数分間の練習で、30分から1時間、安全に利用できることが確認できました。参加者からは、「人とぶつからずに移動できて感動した」「自分一人で歩ける達成感がある」「長い距離を歩いてウィンドウショッピングをした気分になれた」といったコメントが寄せられ、多くの視覚障がい者が自立した街歩きを実現する新たな技術の有用性を再確認できました。
■先進技術への各社の取り組み
コンソーシアムでは実用度を向上した「実用モデル」の開発と、先進技術の開発を同時に推進し、先進技術としては、以下の技術開発に各社が取り組みました。
先進技術の動画:
https://youtu.be/af9440zWCGo
1. 屋内外連続走行技術の実現
日本IBMはRTK-GNSS測位 (衛星を用いた高精度な測位)を用いた屋外走行を実現するとともに、屋内と屋外にまたがるルートを連続して走行する技術を開発しました。
2. 周囲の歩行者の行動予測技術の向上
街中を歩く上で、対向者とぶつかることなく、より安全に歩行するためには周囲の歩行者の動きを予測して状況を使用者に伝え、AIスーツケースの動作を制御する必要があります。オムロンは周囲の歩行者の視線や体の動きによって、歩行者がそのまま直進してくるのか、または進行方向を変えて回避してくれるのかを、事前に予測する技術を開発しました。
3. スーツケースのハンドルによる進行方向提示の改善
実用モデルのAIスーツケースはハンドル上に設置している振動子によって進行方向を伝えています。アルプスアルパインが開発した新型ハンドルではディスク型の方向提示装置によって、曲がる方向をより正確かつ直感的に提示することが可能になりました。
4. 地図無し走行に向けた研究促進
現在のAIスーツケースは、事前に壁・障害物形状データ、基本ルート地図、そして店舗・施設のデータを作成する必要があります。日本IBMは早稲田大学と共同で、こうした地図データが無い環境でも、通路の交差点を検出しながらナビゲートする技術の研究開発を行いました。
■AIスーツケースの技術展示と体験会
1月28日(土)、29日(日)の2日間、日本科学未来館において、こうした先進技術も含めたAIスーツケースの技術展示と体験会を行います。一般の方も無料でご体験いただけます※。 また1月28日(土)から2月6日(月)に実施される東京都Digital Innovation City協議会主催のモビリティ体験イベントにおいては、コンソーシアムの技術協力のもと日本科学未来館で開発をした屋外走行モデルの実証が実施されます。 ※ 展示フロア内で実施する一部展示・体験会については入館料が必要となります。
■今後の展望
コンソーシアムでは引き続き、視覚障がい者の生活の質の向上を目指して、AIを活用した先進的移動支援技術のさらなる研究開発を進めていきます。また、関係する組織と連携しながら、ビジネスモデルの確立や、制度やインフラストラクチャーの整備など社会実装のための課題解決にも取り組みます。こうしたコンソーシアムの活動を通じて、障がいのある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら共に生きる「共生社会」の実現を目指していきます。