東京医科大学が「慢性骨髄性白血病患者における新型コロナウイルスワクチン2回接種の効果を検証 ~ワクチン接種はチロシンキナーゼ阻害薬投与下でも同等の効果が期待~」

東京医科大学

 東京医科大学 (学長:林 由起子/東京都新宿区)血液内科学分野 後藤明彦主任教授、片桐誠一朗助教を中心とする研究チームは、東京医科大学病院外来通院患者を対象とした前向き観察研究を実施しました。チロシンキナーゼ阻害薬を継続もしくは中止している慢性骨髄性白血病患者と健常者ボランティアを対象に2回の新型コロナウイルスワクチン (BNT162b2ワクチン; ファイザー製)接種前後の抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体値の推移を解析し、チロシンキナーゼ阻害薬治療が抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体獲得及び維持を阻害しないことを明らかにしました。 【概要】  東京医科大学 (学長:林 由起子/東京都新宿区)血液内科学分野 後藤明彦主任教授、片桐誠一朗助教を中心とする研究チームは、東京医科大学病院 (以下、当院) 外来通院患者を対象とした前向き観察研究を実施し、慢性骨髄性白血病 (以下、CML)患者におけるチロシンキナーゼ阻害薬 (以下、TKI)が新型コロナウイルスワクチン(以下、SARS-CoV-2ワクチン)接種後の抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体 (以下、S-IgG)獲得に与える影響を解析しました。 この研究チームは、TKIを継続もしくは中止しているCML患者と健常者ボランティアを対象に2回のSARS-CoV-2ワクチン (BNT162b2ワクチン; ファイザー製)接種前後のS-IgG値の推移を解析し、TKI治療がS-IgG獲得及び維持を阻害しないことを明らかにしました。これらの研究成果は、2022年8月27日 国際医学雑誌「Vaccines」(IF: 4.961)に掲載されました。 【本研究のポイント】 ●当院通院中のCML患者及び健常者コントロールを対象にBNT162b2ワクチン接種前後のS-IgG抗体価の推移を前向き観察研究として解析しました。 ●CML患者ではTKIの投与有無に関わらず、BNT162b2ワクチン接種後のS-IgG獲得及び維持は健常者と同等な効果が得られていることが示されました。 【研究の背景】  COVID-19が世界的に流行している現在、COVID-19発症及び重症化予防のためSARS-CoV-2ワクチンが広く普及してきています。しかし造血器腫瘍患者では疾患による影響、抗腫瘍薬や免疫抑制薬の使用によりワクチンの効果が低い可能性が懸念されています。CMLはTKIにより長期生存が可能となっていますが、多くの患者さんでは治療の継続が必要です。治療中のCML患者さんに対するSARS-CoV-2ワクチンの長期的な効果はこれまで明らかになっていませんでした。 【本研究で得られた結果・知見】 ●当院通院中のCML患者 (TKI継続例、中止例)及び健常人コントロールを対象にBNT162b2ワクチン接種前、2回目接種後1-5週間後 (T1)、約半年後 (T2)でのS-IgGを測定しました。 ●T1時点では健常者、TKI継続例 (CML-TKI)、TKI中止例 (CML-TFR)のいずれでもS-IgG抗体価の上昇がみられ、各群の間で有意な差は認めませんでした (図1A)。CML-TKI群では投与されているTKIの種類でS-IgG抗体価上昇に有意差はありませんでした (図1B)。 ●T2時点では全ての群でT1時点と比較して有意にS-IgG抗体価が低下していました (図2A)。しかし3群間ではS-IgG抗体価に有意差はありませんでした (図2B)。 【今後の研究展開および波及効果】  本研究ではTKI投与の有無、種類に関わらずCML患者さんでは2回のBNT162b2ワクチン接種によるS-IgG獲得及び維持は健常者と同等の効果が得られていたことが示され、TKI治療中のCML患者さんに対しても複数回のSARS-CoV-2ワクチン接種が健常者と同等に有効であることが示唆されました。この結果は、コロナ禍におけるCML患者さんの治療継続に大きく役立つと予想されます。 【掲載誌名・DOI】 掲載誌名:Vaccines DOI: 10.3390/vaccines10091404 【論文タイトル】 Tyrosine kinase inhibitors do not promote a decrease in the SARS-CoV-2 anti-spike IgG after BNT162b2 vaccination in chronic myeloid leukemia: a prospective observational study 【著者】 片桐誠一朗※、赤羽大悟、大月俊輔、須藤ありさ、山田晃子、勝呂多光子、浅野倫代、吉澤成一郎、田中裕子、古屋奈穂子、藤本博昭、岡部聖一、後藤守孝、伊藤良和、後藤明彦 ▼本件に関する問い合わせ先 企画部 広報・社会連携推進室 住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1 TEL: 03-3351-6141 メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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