購買データ分析による改善案と情報提供で商業施設のデリバリーサービス利用者数・売上が増加 今年度はモバイルオーダー、OMOで新たな共同研究を展開
昨年度における研究成果
コロナ禍でフードデリバリー・テイクアウトの活用が一般に広く浸透してきました。これまでフードデリバリー・テイクアウトから生成されるデータは、学術研究の対象とされたことがありませんでした。そこで、店外収益の可視化と商業施設や店舗の支援を目的として、令和3年度、フードデリバリーのプラットフォーム(NEW PORT*4)を運営するスカイファームと横浜市立大学は共同研究を実施しました。
昨年度は、購買データを共同で分析し、キャンペーン時における購買行動を理解するために、商品ごと売り上げ時系列データによる時間的推移、メッシュ統計データを用いた空間的傾向の把握を行いました。そして、共同で作成したデータ分析レポートを基に、デザイン思考に基づく商業施設を運営するデベロッパーを含めた3者によるワークショップを実施、施策の検討を行いました。お客様アンケート分析による、効果検証についても共同で実施しました。
昨年の研究成果として、データ分析レポート(図1)の共同作成、データ駆動型ワークショップなどの開催において、新たにサイトの利用者目線からのアクセスのしやすさという問題点に気が付き、その気づきを元にした改善案と商業施設への情報提供を実施しました。これにより、キャンペーンを実施、実施店舗数の増加や利用者数の増加、売上増加につながる反響がありました。
また、キャンペーン実施時における注文数・売上や時間帯による内容変化、店舗分類による売上変化、メッシュ統計による商品配送エリアの把握、新規顧客とリピート顧客による違いなどをベースにした顧客ジャーニーマップ(図2)などの作成を行いました。これにより、デリバリーの時空間傾向の評価が可能となり、データ駆動的なデリバリーに関する事業戦略を発見することができました。
今年度の取組内容と今後の展開
スカイファームが新たに展開する2つの事業において、昨年度と同様の手法を展開しながら、以下について新たに共同研究を実施します。
- フードコート等で開始するモバイルオーダーシステムにおける購買データの分析
- 商業施設におけるOMO(Online Merges with Offline)での購買データの分析
昨年度のフードデリバリー・テイクアウトに続き、今年度のモバイルオーダー、OMOの研究を通し、提供するプラットフォームの改善を図り、各システムの比較や実証テストを継続することにより、顧客行動の新たな知見が発見されることが期待されます。
参考
スカイファーム株式会社と横浜市立大学みなとみらいサテライトキャンパスは、三菱地所株式会社が設置した「産学連携イノベーション拠点NANA Lv.(ナナレベル)」のプロジェクトスペースに入居していることから、昨年度共同研究にいたったものです。
横浜市立大学みなとみらいサテライトキャンパスは、社会人教育拠点として、データサイエンス研究科をはじめとする大学院の授業やリカレント教育、イノベーション人材育成などに取り組んでいます。
用語説明
*1 昨年度の共同研究:横浜市立大学とスカイファーム株式会社が共同研究を開始。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20211001skyfarm.html
*2 モバイルオーダー:フードコートにおいて、自席にいながらスマートフォン・タブレット等で出店店舗の注文を行うシステム。
*3 OMO(Online Merges with Offline):オンラインとオフラインを融合した形で、実店舗で商品を確認し、オンラインで商品を購入するシステム。
*4 NEW PORT:スカイファーム株式会社が提供する美味しい食事や手土産をお届けするデリバリーサービスと、店頭で直接お受け取りいただけるモバイルオーダーサービスのプラットフォーム。今後はEC機能も拡充しOMOサービスを展開していく予定。
*5 UIUX:UI(ユーザーインターフェース)はユーザー(利用者)と製品・サービスをつなぐインターフェイス(接点)、UX(ユーザ―エクスぺエリアンス)はユーザ―が製品やサービスを通して得られる体験や経験。Webを通して提供されるシステムでは、UIはデザイン(見た目や使いやすさ)、UXはそのサイトで得られる体験を指す。