PwC、年次調査「グローバル エンタテイメント&メディアアウトルック2022-2026」を発表
PwC Japanグループ
急拡大するエンタテイメント&メディア業界:ゲームやeスポーツが業界全体を牽引する中、
VR市場の驚異的な成長が見込まれる
※以下の内容は、2022年6月20日にPwCが発表したプレスリリースの翻訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
2022年6月20日- 2021年、世界のエンタテイメント&メディア(E&M)業界は世界経済全体の成長率を大きく上回る急成長を遂げました。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2.3%減少していたE&M業界の収益は、2021年には2兆1,200億米ドルから2兆3,400億米ドルへと10.4%もの大幅な増加となりました。E&M業界のデジタル化、モバイル化、若者志向が進み、ゲームやeスポーツといったセグメントが業界を牽引する中、バーチャルリアリティ(VR)が驚異的な成長を遂げると見込まれています。また、デジタル広告も業界全体へ拡大を続けています。これらの数値は、PwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2022-2026」(https://www.pwc.com/outlook-perspectives)に依拠しています。本調査は今年で23年目を迎え、52の国・地域における消費者および広告のE&M支出に関する分析および予測をまとめたものです。
本年の調査で明らかになったその他の主な結果は以下の通りです。
- 2021年、世界のビデオゲームとeスポーツの収益は総額2,156億米ドルに上り、2026年には8.5%の年平均成長率(CAGR)で以って3,235億米ドルに達すると予想されます。2021年の収益はアジア太平洋地域が1,094億米ドルと圧倒的なシェアを占め、第2位の北米のほぼ2倍になりました。ゲームは今やデータ消費型のE&Mコンテンツの中で、ビデオと通信に次いで3番目に大きな収益を上げるカテゴリーとなっています。
- VRはE&M業界の中では、比較的小規模でありながらも最も継続的に急成長を遂げているセグメントです。世界のVRへの支出は、2021年に前年比で36%増加して26億米ドルとなり、39%の急増を記録した2020年に続く高い伸びとなりました。2021年から2026年までの年平均成長率は24%と予想され、収益は76億米ドルまで増加すると見込まれます。特にゲームコンテンツはVRの収益に大きく貢献し、2021年には19億米ドルとなりました。この分野はさらに、2026年には65億米ドルまで増加してVRセグメントにおける収益総額の85%を占めるようになると予想されます。
- デジタル化が大きく進む広告は、E&M業界内で大きなシェアを占めるカテゴリーの1つです。広告の収益は2020年に7%近く落ち込んだ後、2021年には22.6%増と目覚ましい成長を実現し7,472億米ドルに上りました。全般的にデジタル化により牽引された広告は、2026年までに年平均成長率6.6%で伸びていくと見込まれます。中でもインターネット広告の収益はこれを上回り、年平均9.1%の成長が予想されます。2026年には広告が1兆米ドル規模の市場となり、消費者支出やインターネットアクセスを抜いて、E&M業界最大の収益源になると思われます。
- オーバー・ザ・トップ(OTT)ビデオの収益は2020年に35.4%増加した後、2021年にも22.8%増加して791億米ドルまで拡大しました。今後、OTTの収益増加ペースは幾分落ちるとみられるものの、2026年までに年平均7.6%で増加し、その収益は1,141億米ドルまで押し上げられる見通しです。OTTストリーミングサービスとの競争にさらされている従来のテレビは、今なお大きな収益を伸ばしているものの、その減退は避けがたく、2021年の2,310億米ドルから2026年の2,221億米ドルに至るまで年平均0.8%で収益の減少が続くと予想されます。
- 世界の映画館の収益はパンデミックによる大きな損失から回復傾向にあり、2023年には464億米ドルの新記録に達すると見込まれます。興行収益は2021年の208億米ドルに対し、2026年には年平均18.9%で増加して494億米ドルになると予想されます。2020年には米国を抜いて世界最大の映画市場となった中国が、その首位の座を2026年まで維持する見通しです。
- ライブ音楽の収益はパンデミック前の水準を2024年に超えると見込まれます。デジタル音楽の定額配信がレコード音楽部門の伸びを牽引しており、その収益は2021年の361億米ドルから2026年には458億米ドルまで増加すると予想されます。
- E&M業界全体のコンテンツ増加は、データ消費量の増大を助長しています。2021年には260万ペタバイト(PB)であったデータ消費量は、年平均26%増加して2026年には810万ペタバイトに達すると見込みです。最も急速にデータ消費量を増加させているのはゲームであり、このセグメントのデータ消費量は年平均29.6%で増加すると予想されます。モバイル端末は2021年から2026年までの間に最も成長するデバイスカテゴリーとなり、年平均28.8%で拡大し、モバイルデータ消費量は110万ペタバイトから380万ペタバイトまで増加すると見込まれます。
PwCドイツのグローバル エンタテイメント&メディア・インダストリーのリード・パートナーであるヴェルナー・バルハウス(Werner Ballhaus)は次のように述べています。
「業界メディアはE&M業界の有力企業に焦点を当てる傾向があります。しかし、何十億人もの消費者が自分たちの時間、関心、お金をどこに投じるかという選択によって、業界の変容に拍車がかかり、新たなトレンドが作り出されているのです。今後数年間で、より若くデジタルに精通し、ストリーミングやゲームに一段と関心のある消費者層が世界のE&M業界に登場すると考えられます。こうした状況が業界の将来を形作っていくのです。」
地域別に見た一人当たりのE&M業界支出は北米が圧倒的に多いもののそれ以外の地域でより加速的に支出が伸びている
地域別にみると、一人当たりのE&M支出は北米が2,229米ドルと圧倒的に多く、西欧の1,158米ドルの約2倍に上っています。これに対し、2021年には地域別の収益がE&M市場の中で最も大きい8,447億米ドルに上ったアジア太平洋地域ですが、一人当たりの支出では224米ドルにとどまる結果となりました。また中東およびアフリカにおける一人当たりの支出は世界最低水準の82米ドルでした。
一方、年平均成長率でみると、成長市場の上位10地域は、中南米、中東、アフリカ、アジアに集中しています。特に、OTTビデオとゲームがこれら地域の収益拡大の大部分を占めており、同様にeスポーツと映画も急速に成長しています。今後5年間における、E&M業界に対する消費者支出の成長見通しで上位にランクインしているのは、トルコ(推定年平均成長率14.2%)、アルゼンチン(同10.4%)、インド(同9.1%)、ナイジェリア(同8.8%) です。
メタバースが待ち受ける
そう遠くない未来、メタバースは驚くほど現実的な世界となり、その中で消費者はVRヘッドセットやその他の接続デバイスを介して没入型の仮想体験にアクセスできるようになります。メタバースは企業や消費者が製品やサービス、そしてお互いのコミュニケーションの方法を大きく変えかねない進化であるため、メタバースの持つ潜在的な金銭的・経済的価値はVRをはるかに超えています。やがて、ビデオゲーム、音楽公演、広告、さらにはeコマースでさえ関連する収益の多くが、メタバースに移行する可能性があります。
メタバースにおけるE&M業界のチャンスの大きさを考える出発点となるのが、急成長しているVRの市場です。現在、この市場は小規模なセグメントの1つに過ぎませんが、過去1年間で世界の支出が36%増加したことは長期的な可能性を示唆していると言えます。スタンドアローン型およびテザー型のVRヘッドセットの全世界設置台数は、2021年の2,160万台に対し、2026年には6,590万台まで増加すると予測されています。
ヴェルナー・バルハウスはさらに次のように締めくくっています。
「E&M業界の目覚ましい成長と可能性に伴い、驚異的な変動が起きると共に、企業間、セクター内、地域間、世代間での分断や破壊的変化と呼ばれるものが生じます。企業にとっては、熾烈な争いや絶え間ない混乱が今後も続くでしょう。このアウトルックのデータは、収益と支出の構成が急速に変化していることを示しています。この分断が急増・拡大するに従い、E&M業界におけるすべてのビジネスは破壊的変化を迎える可能性があります。今後E&M業界で立てられる課題や目標は、消費者を理解することでこうした破壊的変化を正しい着地点に導くものでなければなりません。」
グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2022-2026について
https://www.pwc.com/outlook-perspectives
PwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック」とそれに付随する「Fault Lines and Fractures: Innovation and Growth in a New Competitive Landscape」は、世界のエンタテイメント&メディアの消費者および広告の支出に関し詳細な分析を行ったものです。このアウトルックには、52の国・地域における16のE&M業界のセグメントに関する過去5年間のデータと今後5年間の予測が盛り込まれています。これらのセグメントには、広告(テレビ、インターネット、屋外広告)、書籍、B2B、映画、データ消費、インターネットアクセス、音楽・ラジオ・ポッドキャスト、新聞と一般雑誌、OTTビデオ、テレビやホームビデオに加えて、今年初めてメタバースと非代替性トークン(NFT)が含まれました。
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