子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

横浜市立大学

<妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連について―エコチル調査>

 神奈川ユニットセンター・京都大学 准教授の竹内正人、横浜市立大学 教授の伊藤秀一らの研究チームは、エコチル調査の約2,100組の親子のデータから、妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連について解析しました。その結果、妊婦の血中重金属濃度は、生まれた子どもの口唇口蓋裂と関連が認められませんでした。この結果から、口唇口蓋裂の発症原因に関する研究が発展することが期待されます。
 なお、今回の妊婦の血中重金属濃度は総じて低かったため、解析には限界があり、さらに妊婦の高い血中重金属濃度と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連については、今後の検討課題となります。
 本研究の成果は、令和4年3月25日(日本時間 午前3時)付でPublic Library of Scienceから刊行される学術誌「PLOS ONE」に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

1.発表のポイント
・重金属(鉛、カドミウム、マンガン、水銀)に関して、妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連は認めなかった。

2.研究の背景
 子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしています。
 エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。
 口唇口蓋裂は唇と上顎の形成不全を特徴とする先天性形態異常です。日本では出生1万人あたり17-19人に認められ、この頻度は世界の中でも高いとされています。口唇口蓋裂の原因に関しては複数の要因が関連するとされていますが、いまだ定まった見解はありません。ここ数年、海外からの報告では妊婦の重金属ばく露と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連が示唆されています。しかし、これらの報告では妊婦が直接受けた重金属のばく露量を測定していないなどの問題もあります。
 今回私たちの研究チームでは、エコチル調査のデータの中から、妊婦の血中重金属濃度を指標として、生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連について解析を行いました。

3.研究内容と成果
 生後1ヶ月以内に口唇口蓋裂と診断された192人の子どもと、年齢や生活習慣(喫煙など)、ストレスなどの母親の特性を合わせた1,920人の口唇口蓋裂のない子どものデータを用いて比較を行いました。この結果、4種類の重金属(鉛、カドミウム、マンガン、水銀)に関して、妊婦の血中重金属濃度は生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連を認めませんでした。また、対象集団や統計解析手法などを変えた追加解析においても同様の結果が得られました。
 一方で、今回の妊婦の血中重金属濃度は、総じて国際的に設定されている危険域を超える水域ではないため、さらに高い妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連に関しては否定できず、今後の研究が待たれます。

4.今後の展開
 今回の対象集団では、総じて妊婦の血中重金属濃度は低いものであり、このことが結果に影響を与えた可能性はあります。したがって、さらに高い妊婦の血中重金属濃度では、生まれた子どもの口唇口蓋裂との関連が認められる可能性があり、今回の対象集団と同じ妊婦の血中重金属濃度を維持または低減するような一層の努力が私たちに求められることが示唆されます。
 引き続き、子どもの発育や健康に影響を与える化学物質等の環境要因を明らかにしていくことが期待されます。

5.参考図
<該当なし>

6.補足
<該当なし>

7.用語解説
<該当なし>

8.発表論文
題名(英語):Association of maternal heavy metal exposure during pregnancy with isolated cleft lip and palate in offspring: Japan Environment and Children’s Study (JECS) cohort study

著者名(英語):Masato Takeuchi
1, Satomi Yoshida 1, Chihiro Kawakami 2, Koji Kawakami 1, Shuichi Ito 2, and the Japan Environment and Children’s Study Group3

1 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野:所属
2 横浜市立大学:所属
3 グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成

掲載誌:PLOS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0265648

 

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