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神奈川工科大学は2022年2月の「国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT(エヌアイシーティー))」が主催する[超高精細映像遠隔配信実験2022]において、大同大学、琉球大学、ミハル通信株式会社と共同で、8K映像をネットワーク上で製作・配信する実験に成功した。高速処理が要求される映像フォーマット変換を、映像処理エッジを連携させることで実現。製作者が映像切り替え要求を出すと瞬時にフォーマット変換済みの映像に切り替わることで、つながりが自然な映像製作・配信が可能となった。
神奈川工科大学は2014年から編集素材として用いるため品質を落とすことができない8K超高精細映像を、非圧縮で伝送・蓄積配信するシステムの開発に取り組んできた。また、この蓄積配信システムに加え、ネットワーク上のクラウドと複数のエッジ*1が映像処理を分散して行うことで、8K映像の製作・配信をネットワーク上で行える環境の開発に取り組んでいる。現在8K並みの高精細映像の製作はその映像サイズが莫大であるため、専用機を用いたローカルなシステムでしか行うことができないが、本環境を用いることで誰でもどこからでもネットを通して高精細映像の製作・配信が可能になる。
2022年2月のNICT主催の超高精細映像遠隔配信実験2022*2において、大同大学、琉球大学、ミハル通信株式会社と共同で、全国に分散したいくつもの8K映像ソースを、ネットワーク経由で自在に切り替え、配信する実験に成功した。具体的には、札幌8Kカメラ、沖縄8Kカメラ、クラウドに構築した2つの8K映像サーバなど多地点から、異なるフォーマットの8K映像(8Kデュアルグリーン:8K-DG 24Gbps、フルサイズ8K 48Gbpsなど)を用いて、端末で製作作業をしている製作者の要求に従って瞬時に切り替えると同時に、切り替え後の8K映像をフォーマットの変換を無劣化で提供した。
フォーマット変換はミハル通信株式会社と神奈川工科大学が新規に共同開発したソフトウェアベースのパケットスイッチを用いた。IP入出力処理と(A)8K-DGを8K RGBに変換する処理、(B)8K RGBをフルサイズ8Kに変換する処理 を組み合わせて実装し、1フレーム(16.6ms)以内の変換処理を実現した。また映像スイッチングと組み合わせることで、受信拠点では端末の要求に従い複数の映像ソースを1映像フレーム(16ms)以内に無瞬断で切り替えて編集を行う。このように、エッジの複数の映像処理機能がネットワーク内で共用可能となり、映像編集拠点毎に集約していた映像処理機能が不要となる。
なお本実証実験は、NICT、「大学共同利用機関法人・情報・システム研究機構 国立情報学研究所」をはじめとする複数の関係組織との共同で、札幌-東京-大阪―沖縄間の400Gbps広帯域国内回線を用いて実施した。また上記のシステムを用いたライブ映像編集実験はグランフロント大阪の実験拠点でデモンストレーションを行った。
今後は、本技術を発展させることで、手持ちのPCをネットワークに接続するだけで、誰でも8K映像編集・配信が可能となる新たなメディア製作手法の確立にむけて研究開発を進めていく。
本実証実験の実施にあたり、独立行政法人 情報処理推進機構 産業サイバーセキュリティーセンター様、サイバー関西プロジェクト様、宜野座村ITオペレーションパーク様、北海道テレビ放送株式会社様、池上通信機株式会社様、アストロデザイン株式会社様、シャープ株式会社様、アリスタネットワークスジャパン合同会社様、セイコーソリューションズ株式会社様、ピュアロジック株式会社様をはじめ関連組織の皆様のご協力をいただいた。本研究成果の一部は、NICTの委託研究により得られたものである。
*1 エッジ:端末とクラウドの間に配置したコンピューティングリソースを示す。端末に近いためリアルタイムな処理を得意とし、処理後の大容量なデータをクラウドに格納するような機能分散を行う。
*2 超高精細映像を用いた広域映像配信実証実験
https://testbed.nict.go.jp/event/yukimatsuri2022-press.html
▼本件に関する問い合わせ先
神奈川工科大学 工学教育研究推進機構
担当: 井藤 晴久
住所:〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
TEL:046-291-3299
メール:ito.haruhisa@cco.kanagawa-it.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/