木造住宅の土台における防腐・防蟻処理の重要性
D1樹種でも辺材は非耐久性樹種と同等。市場調査では各社による認識の違いも
カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)より、木造住宅の土台における防腐・防蟻処理に関する情報をお送りいたします。2022年2月25日(金)、APAエンジニアード・ウッド協会とカナダ林産業審議会沿岸グループの共催で、木造住宅の防腐・防蟻の重要性に関するセミナーを開催しました。
日本木材防腐工業組合の山口氏からは、腐朽しやすく、構造上重要で、維持管理が難しいという3つの要素が重なる部位には防腐・防蟻処理が必要との説明があり、樹種による処理の考え方に関しても触れました。JAS(日本農林規格)による規定で耐久性区分「D1」とされている樹種は、心材が高い耐久性を持っているため劣化しにくいとされています。建築基準法では地面から1m以内の部分には有効な防腐措置を講ずるように規定されていますが、日本住宅性能表示基準では土台に関してはD1樹種を使用すれば、防腐・防蟻処理は必ずしも必要ではないとされています。しかし、D1樹種は高耐久性樹種と言えるものの、辺材(心材の周辺部)の耐久性は非耐久性樹種と同程度であるため腐りやすくなっており、D1樹種未処理材を用いたシロアリ食害試験では辺材部分に食害が発生しました。そのため、構造部材はたとえD1樹種であっても、辺材を含む場合は防蟻・防腐処理が重要だと言うことができます。
これに関連して、カナダウッドジャパンでは2021年7月から12月にかけて「日本の住宅業界における土台に関する市場調査」を実施しました。この中で、D1樹種未処理材の土台に関する各社の見解としては、住宅建設会社の中でも、「耐久性の高い住宅を供給するため土台の木材の防腐処理を必須としている」という会社もある一方で、「性能表示の認定取得は土台だけでなく住宅の総合的な評価であり、その中でJASのD1樹種を使用する場合は基準を満たすと考えている」と考えている会社もあることが分かりました。プレカット企業では、「土台で使用するD1樹種については防腐処理した方が望ましい」と考える意見が多かったものの、現在のJASの規定があることから、未処理で使用することに理解を示す意見も聞かれました。防腐処理会社おいては、「全ての樹種に防腐処理をするべき」との考えを示しており、この調査を通して土台の防腐・防蟻処理に対する認識には多少の差異があることが確認できました。
続いて、カナダ林産業審議会沿岸グループプログラムマネージャーのスコット・アンダーソンから、カナダツガ防腐土台の紹介を行いました。カナダツガは日本と縁の深い木材で、関東大震災の復興期を機に輸入されて以来多く利用されています。保存処理が容易に行えること、また釘の保持力やビスの固定能力に優れていることから土台材に適しており、日本におけるカナダツガKD材、グリーン材の最大の使用量の用途は土台です。カナダツガ防腐土台は2×4住宅の他にも、宮崎県西臼杵郡の準耐火構造の特別養護老人ホーム雲居都荘をはじめとした非住宅分野の大規模木造建築においても広く採用されています。
カナダウッドジャパンでは、日本国内におけるカナダ材をはじめとした木材の利用機会拡大を促進するべく、木造建築関連技術の普及および情報発信に引き続き取り組んでいきます。