【ニュースレター】世界記録に挑む「四輪EV」にモーターユニットを供給
やるからには世界一を目指す
「20年ほど前になりますが、私は市販車『WRX』の開発で8分00秒の壁に挑んだことがあります。もちろん比べるべきものではないのでしょうが、その経験と照らし合わせると6分40秒(400秒)というタイムは異次元の目標です。いずれにしても、ドライバーが意のままに操ることのできるクルマでなくては到達できない領域だと考えています」
今年1月に開かれた東京オートサロン2022。そのスバルブースでひと際注目集めたのが、写真のコンセプトモデル「STI E-RA CONCEPT」です。「やるからには世界一を目指さなければならない」という高い志で、スバルテクニカインターナショナル(株)(以下・STI)が開発を進める近未来モータースポーツEVです。
冒頭の述懐は、「STI E-RA」の開発プロジェクトを牽引する同社の森宏志さん(新規事業推進室 部長)によるものです。「走りのスバル」のキーマンとして“スバリスト”に広く知られる森さんは、「ニュルブルクリンク※北コースで一周400秒切りを目指す」と、「STI E-RA」の開発に明確な目標を設定しました。同車には、当社が供給するハイパーEVモーターユニット4基が搭載されています。
「GTレースの将来」を見据えて
「私は学生時代からモータースポーツが好きでしたが、当時、ヤマハ発動機はすでにレーシングカーのエンジン開発でも実績を挙げている存在でした。ですから私の中には技術力の高い会社という印象がずっと刻まれていて、このチャレンジのパートナーに決まった時には心強く思いました」と、森さん。会社の枠を超えた勉強会で当社の担当エンジニアとの交流が以前からあったそうですが、「まさか一緒に仕事をすることになるとは思わなかった」と驚いたそうです。
化石燃料を使用しないEVモータースポーツの頂点には、フォーミュラEが存在します。それでも2シーターのGTカーでのチャレンジに照準を合わせたのは、「GTレースの将来の姿を見据えて」のこと。まずは2022年内に国内のサーキットでテストを開始し、2023年以降にニュルブルクリンクで新記録の達成に挑戦する計画です。
東京オートサロンでの発表後、STIが取り組むチャレンジは大きな話題として国内外に広がりました。「多くは期待と応援です。スバル時代からお付き合いの深いモータージャーナリストの方には、『森さんの卒業試験のようなものですね』という言葉もいただきました」
モーター1基あたりの最高出力は200kW。4基搭載で計800kWというスペックは、馬力に換算すると1,088PS。「車名についたRAは、レコード・アテンプトを意味します。シミュレーションをしっかり積み上げて、必ず目標に到達してみせたい」と意気込みを見せています。
※ニュルブルクリンク= 「ニュルブルク24時間レース」の開催地として知られるドイツ北西部に位置するサーキット。北コースの全長は20.832km。
■STI向けハイパーEVモーターユニットの提供について(リリース)
https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2022/0114/ev-motor.html
■広報担当者より
高い目標へのチャレンジは常にワクワクするものです。それが世界記録への挑戦ともなれば、そのワクワクはより大きくなります。STI様が掲げた目標の達成に向けて、当社のテクノロジーが貢献できたとしたら、それは本当に嬉しいこと。400秒の壁の突破に注目したいと思います。