三井不動産サステナブルSTORY Vol.3「街づくりから社会の架け橋をつくる 誰もが働けるインクルーシブな社会へ」

三井不動産株式会社

三井不動産グループでは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。
街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをニュースレターとしてお届けしてまいります。
今回のテーマは「ダイバーシティ&インクルージョン」。
あらゆる人々が安全・安心な時間を過ごし楽しむことができる街づくりに取り組み続けているなかで、三井不動産グループが新たに手がけるさまざまな「働き方」に関する取り組みも紹介します。

 

マンション居住者様向け
暮らしを彩る“アートサブスク”で、多様な人材が活躍できる社会の実現へ

「PARA ART サブスク by studio FLAT」
三井不動産グループである三井不動産レジデンシャルは、2021年7月よりパラアートサブスクリプションサービス「PARA ART サブスク by studio FLAT」の提供を、「Kosugi 3rd Avenue The Residence」(神奈川県川崎市)にて始めています。
マンション居住者様が暮らしに彩りを添えるアート作品と出会う機会を、月額3000円でお届け。季節や気分に応じて月ごとに新しいアートと出会うことができます。さらに気に入った作品はそのまま購入も可能です。
協業しているNPO法人studio FLATは、障がいの有無に関わらず共に生きる社会を目指し、アート活動を通してSDGsに貢献しています。本サービスでは、studio FLATに所属するパラアーティストの方々が、作品の制作に加えて、梱包やマンションへの配送業務を担い、パラアーティストの方々の安定した経済的自立支援を目指している点も特徴です。

 

NPO法人studio FLAT
2019年5月設立。川崎市幸区の生活介護事業所を拠点にアート活動を展開。障がいのあるアーティストたちの経済的自立や新たな才能の発掘と育成、アートによるインクルーシブな社会作りを目指す。2021年5月、第1回「かわさきSDGsゴールドパートナー」に認証。
 


マンション共用部も「アートの学びや愉しみの場」に

マンション居住者様向けアートサブスクに続き、マンションの共用部においても「パラアート」の採用が決定しました。第1弾として、「パークホームズ横浜本郷台リバーサイドヴィラ THE EAST」(神奈川県横浜市)の共用部エントランス、ゲストルームにパラアーティストによるアートが飾られます。本プロジェクトは、障がいのある人たちがアートを仕事にできる環境をつくることを目的に設立された「エイブルアート・カンパニー」に協力いただき、アート作品購入費の一部がパラアーティストの方々に還元されます。
この取り組みによって「アートを愉しみ学べる場」の創出に加えて、パラアーティストの自立支援や活躍できる場の提供を目的としています。そして三井不動産グループ長期経営方針「VISION 2025」における主要な取り組みとして、「街づくりの一層の進化」を掲げ、多様な人材が活躍できる社会の実現を目指しています。

 
 
【左】エントランス(ガーデンホワイエ)
【右】ゲストルーム

持続可能な“アートサブスク”で、働く機会を創出する

SDGsにも貢献する「PARA ART サブスク by s tudio FLAT」の取り組みについて、NPO法人studio FLAT理事長の大平暁氏、studio FLAT所属アーティストの大槻蒼波氏、三井不動産レジデンシャルの村上由梨子に話を聞きました。

 

-「PARA ART サブスク by studio FLAT」の特徴を教えてください。

三井不動産レジデンシャル・村上(以下、村上):
「PARA ART サブスク」は、実際に描いた作品をアーティストの方々に届けてもらえるところが特徴です。こちらのマンションはstudio FLATさんとの距離も近く、アーティストの方が直接お届けすることができます。居住者様にとっては自宅に飾る絵画をより身近に感じられる“地域密着のサービス”だと思います。
また、配送を月1回に絞っている点もポイントです。こうしてアーティストの方々の作品を届けることは願わしいことである一方で、何でもお客様優位にして配送をより頻繁にしたり、フレキシブルにしたりしてしまうと、アーティストの方々にとって負担になってしまいます。彼・彼女らの働きがいも両立しなければ意味がないと思い、月1回に絞ることで持続可能なモデルにしています。

-絵を描くほかにも、アーティストの方々が梱包や配送も担当しています。みなさんの反応はいかがですか?

NPO法人studio FLAT 理事長・大平暁氏(以下、大平):
誰かのところに自分たちの作品がちゃんと届くんだという思いは、みんなの力になっています。障がいのある人たちが社会と関わる機会は非常に少ないのが現状です。以前は、展示会で絵の前にいてちょっとお話できることもあったのですが、コロナ禍ではそうした機会もなくなってしまいました。外部の人と関わることが少ないと、自分が社会と関わっていると実感することも少ないんです。
だから、作品が届いている実感を持てることで、みんなが「もうひとつ頑張ろう」と思ってくれている感じがします。「あそこ(マンションの個人宅)に飾るじゃない?」と言うと、本人たちにも伝わりやすく、もうひと頑張りしたくなっていると思いますね。
配送日の今日も、蒼波さんは朝すごく緊張していて、「行くよ」と言ったら、「本当に自分の作品を届けるのか」と何度も確認されましたね(笑)。

-蒼波さん、絵をお客様にお渡しする時緊張しましたか。

studio FLAT所属アーティスト・大槻蒼波氏(以下、蒼波):
(笑いながらうなずく)

大平:あはは(笑)。蒼波さんはstudio FLATに来て毎日制作をしていくなかで、すごく成長されて、今ではうちのエースです。蒼波さんの場合は、数カ月かけて描いていますね。もともとの絵は、お母様がサーフィンがお好きということもあり「波みたいだね」と話していたのですが、川崎市の別の企画で「お花を描いてください」とお題をもらったことをきっかけに、今のスタイルになっていきました。毎日ちょっとずつ、その絵が仕上がっていく。頑張り屋さんですね。

蒼波:うん。

-今日のように、家に作品を持って行ったときはどう感じますか?

蒼波:
(親指を立てる“いいね”のジェスチャー)

一同:あはははは。

大平:彼女たちがこうしてやりがいを持ちながら、経済的な自立を目指している点は、私たstudioFLATの目標でもあり、「PARA ART サブスク」が目指すところでもあります。

 

-障がいのある人たちの経済的な自立は、重要なテーマですよね。こうした取り組みを行うとき、三井不動産の強みはどんな点ですか?

村上:
やはり「街づくり」を通じてリアルな場所を提供できることが当社の強みだと思います。グループ全体でみると、住宅や、商業施設、そしてホテルなど、さまざまな場所があり、そこで飾られているアートはたくさんあります。
今、アーティストの方々もやりがいを感じていただいているとお話がありましたが、それだけではありません。届けてもらう側も、描いている方が届けてくれることは嬉しく、その絵に対する思い入れがグッと上がります。ある居住者様は、チラシを見たときに、中学生の頃に障がいのある方のボランティアをしていたことを思い出したそうです。「改めて何か応援できることをしたいと思って申し込みました」と言っていただきました。
きっかけを作れることはとても大切に感じています。今の時代、「応援したい」「貢献したい」「寄付したい」と思っている人は増えていると思いますが、きっかけが少ないんです。ただ単にお金を提供することは好ましくないと思う人も多いなかで、ご自身が本当に欲しいと思うアートにお金を払い、飾って楽しみ、それがアーティストのみなさんの応援になるのは、あるべき姿なのではないでしょうか。

-ほかにはどんな方が利用されているのでしょうか。

村上:
今日お渡しした方は、玄関に飾りたいとのことでした。毎月の配送で絵を替えて楽しんでいただいているので、季節感や気持ちを通してアートのある暮らしを楽しんでいただけていると思います。希望する方には、毎月交換することも気に入った作品を飾り続けてもらうこともできますし、購入していただくこともできます。

-今後、蒼波さんたちの作品や生活がどのようになってほしいですか?

大平:
経済的な自立はハードルの高い目標ではありますが、こうした取り組みがきっかけとなって、どんどん蒼波さんの作品が売れて、そのうち「蒼波さんの作品、高くて買えないよ!」みたいな(笑)。ニューヨークで個展とかね。国内だけでなく、海外にはアートの大きな市場があります。アートフェアなどにも参加していきたいという思いはありますね。
福祉とお金は、タブーではないですが、あまりセットにしてはいけないような風潮もあるようです。ただ、今回の取り組みのポイントは、お客様がただ「応援したい」という気持ちだけで注文していただけているのではなく、飾りたいと思ってもらえる作品のクオリティをアーティストのみんなが保っていることです。作品の良い・悪いに障がいは関係ないですから、作品をきちんと見てもらえてることを踏まえて、経済的な自立への道を探っていきたいですね。

-今後の展望を教えてください。

村上:
現状は「Kosugi 3rd Avenue The Residence」だけでサービスを提供していますが、川崎には別の物件もあるので、studioFLATさんの負担にならない範囲で少しずつ広げていきたいです。
今まさに、当社グループのマンション内にあるアート作品について社内で話し合っていて、今後は、「こういう絵を飾りたい」「地元のアーティストの絵を飾りたい」「studioFLATさんの絵、蒼波さんの絵を飾りたい」といった想いを大切にしていきたいですね。
さらに、新しい取り組みとしては、たとえば共用部で飾っている絵を買えるような仕組みも考えているところです。「多様化するお客様のライフスタイル、ニーズにお応えするサービスとは何か?」、一方で、「アーティストさんたちにとってのやりがいは何か?」と、それぞれの立場に立って一生懸命考えた結果、今回のようなサービスができました。今後も様々な方のニーズをくみ取ることで自然とSDGsにも貢献していきたいと思います。

日本橋の多様なプレイヤーが交わる結節点に現れた
分身ロボットカフェ、街の魅力の発信拠点へ


「分身ロボットカフェ DAWN ver.β(ドーン バージョンベータ)」をご存知でしょうか。ALSなどの難病や重度障害で外出の難しい方々が、分身ロボットの「OriHime」「OriHime-D」を介して遠隔でサービススタッフとして働く株式会社オリィ研究所が主宰・運営する実験カフェです。そんな「DAWN ver.β」の初の常設実験店が、2021年6月、東京・日本橋エリアでオープンしました。

「DAWN ver.β」が位置する「日本橋EASTエリア」では、テナントや地域の方々と協働しながら、多様な人材が活躍できる社会の実現を目指しています。カフェの立地する場所は、再開発が進む「日本橋WESTエリア」と古いビルをリノベーションしアートホテルやスタートアップが集積する「日本橋EASTエリア」の結節点。いままで日本橋を訪れたことがないような人を招き入れ街のにぎわいを向上させること、そして、ライフサイエンスやスタートアップなど新産業創造に貢献することを目指してテナント誘致を行い、「DAWN ver.β」のオープンが実現しました。なお、オリィはカフェが入居するビル5階にテナントとして入居いただいており、8階にはOriHime Biz(リモートワーク、テレワークに最適化されたコミュニケーションロボット)が設置されています。

ロボットの「OriHime」「OriHime-D」を介して、「DAWN ver.β」では新たな雇用を生み出すだけではなく、EASTエリアの他のお店を知ってもらい、その情報を来客者に紹介してもらうなど、障がい者のコミュニケーションのスキルアップにもつながるような日本橋の新たな発信拠点を目指しています。

 

日本車いすラグビー連盟のオフィシャルパートナーを2016年から継続

車いすラグビーの第一線で活躍してきた経験を生かして働く社員が、三井不動産にいます。広報部ブランド・マネジメントグループの福井正浩です。三井不動産は、福井が架け橋となり、2016年から一般社団法人日本車いすラグビー連盟のオフィシャルパートナーとなっています。
車いすラグビー(ウィルチェアーラグビー)とは、四肢の麻痺などのある人々が車いすを用いて競技するラグビーで、欧米を中心に広く世界で普及しています。
福井は2004年アテネ大会に日本代表主将として出場するなど、黎明期から支えてきました。アシスタントコーチとして参加した東京2020パラリンピックで日本チームは銅メダルを獲得いたしました。なお、東京2020パラリンピック後世界ランキング2位に浮上いたしました。

三井不動産が2016年より車いすラグビー連盟のトップパートナーとなって日本代表の選手をサポートするとともに、冠大会や競技の魅力を社内社外に発信してきたことによって、障がい者スポーツがより身近になって理解も深まって、応援しやすい環境が進んできたのではないかと思っています。
日本で多くの人たちが見て胸を躍らせたパラリンピックは今回が初めてだったかもしれません。色々な障害を持つ選手が活躍する車いすラグビーの迫力や魅力に触れて、障がい者だけでなく健常者も自分の可能性に一歩踏み出してみようと思ったのではないでしょうか。日本代表は目標としていた金メダルは叶いませんでしたが、多くの皆様からの応援があり、おかげさまで銅メダルを獲得でき、それ以上の価値も見出せたと思っています。日本代表は3年後のパリ大会に向けてさらに進化していくので、引き続き応援よろしくお願いします。
今後も性別・人種・国籍・障がいの有無を問わないダイバーシティやバリアフリーな街づくりが進んでいく中で、こころの豊かさやお互いに応援しあえる社会も作り上げていきたいと思います。

 

三井不動産株式会社
広報部 ブランド・マネジメントグループ 福井正浩

三井不動産グループのSDGsへの貢献について
三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。さらに「重点的に取り組む6つの目標」に取り組むことで「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/esg_csr/

重点的に取り組む6つの目標
1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
4. オープンイノベーションによる新産業の創造
5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

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