小説家 堀辰雄愛用の蓄音機を修復! ~昭和初年代の音色を当時のままに再現~

横浜市立大学

 公立大学法人横浜市立大学と軽井沢高原文庫は、小説家 堀辰雄(1904-1953)愛用の蓄音機1台を調査・修復しました。この蓄音機は、軽井沢高原文庫が所蔵しており、開館した1985年8月に堀辰雄夫人、堀多恵氏より寄贈された堀辰雄関連資料のうちの1点です。
 軽井沢高原文庫の「堀辰雄旧蔵蓄音機」を調査するにあたり、「軽井沢高原文庫蔵 堀辰雄旧蔵蓄音機修復可能性調査」(2021年5月6日開始、12日終了)を実施し、その結果を踏まえ「調査及び修復計画」を立案し実施しました。なお、「修復可能性調査」及び「調査及び修復」は、株式会社シェルマンアートワークスに業務委託をして行いました。
 分解、清掃などを通して得た最も大きな成果は、堀辰雄氏旧蔵の蓄音機が1930年以降に日本国内で製造された1台であると判明したことです。ただし、製造元については製造元や製造番号が記された銘板等が確認されなかったため、今回の調査では明らかにできませんでした。また、分解を伴う全面的な修復により、SPレコードの演奏(再生)が可能となり、堀辰雄自身が聴いて愉しんだ音色をその当時のまま再現することが可能となりました。


【堀辰雄愛用の蓄音機】

 
     <修復中>                  <修復後>

【本修復作業実施の背景と経緯】
 庄司達也教授(横浜市立大学 国際教養学部)は、日本近代文学を主たる領域として研究に取り組んでいます。特に、芥川龍之介の人と作品の探究との課題を研究活動の核としています。その関連から「芥川龍之介と同時代芸術」、そして「近代作家と西洋音楽」という研究テーマを設定し、これまでにもこれらに関わる研究成果を論文、講演、蓄音機とSPレコードによる演奏会などの形で公開してきました。
 この度、以前より関心を強くしていた軽井沢高原文庫が所蔵する「堀辰雄旧蔵蓄音機」について、同文庫のご理解とご協力を得て、本格的な調査と修復計画を実行することが叶いました。本計画の遂行にあたっては、2013年の「近藤東氏旧蔵蓄音機の点検・調整」、また、今春に本学と福島県郡山市とが共同で取り組み、田山花袋、里見弴などの映像を確認した「郡山市蔵久米正雄旧蔵映像フィルム修復調査」の経験を充分に活用して取り組みました。

【本研究の意義・成果】
 堀辰雄の文学には西洋音楽の影響を強く受けて執筆、成立した作品が多くあることは、彼の文学の特徴の1つとして知られています。今回の修復計画によって、堀が直接に聴いた音源をその再生装置を使用して当時のままに鑑賞することが可能となったことで、これまで以上に創作の現場に近づくことが可能となりました。堀辰雄における西洋音楽の受容の実際に直接に触れることは、彼の西洋音楽の摂取が一般に行われていた当代の蓄音機の普及とその実態に深く関わっていることを知る事にも繋がります。この事を踏まえた文化史的な観点からのアプローチも、従来の堀辰雄研究の枠組みに囚われないものとして進展する可能性があります。

【今後の予定】
 8月7日(土)に堀辰雄文学記念館(長野県北佐久郡軽井沢町大字追分662)の「緑陰講座」にて、庄司達也教授が「音楽で出会う堀辰雄」と題して講演を行い、軽井沢高原文庫の協力を得て、修復した蓄音機を使用して同記念館が所蔵する堀辰雄旧蔵のSPレコードから数曲を演奏する予定です。
 (「緑陰講座」のお申込みは定員に達したため、現在は締め切られております。)
 今後の課題としては、蓄音機の製造元の特定を行う為の調査と、堀辰雄旧蔵SPレコード関連資料の調査を継続して行うことで、堀辰雄と音楽という研究テーマの深化をはかっていきます。
 また、当代の他の文学者らとの比較を通して、より広い視野からの堀文学へのアプローチを心掛け、その実態に迫ります。

※参 考
【堀辰雄について】
 東京生まれの小説家[1904~1953]。芥川龍之介に師事。フランス文学、特に心理主義的手法の影響を受け、知性と叙情の融合した独自の世界を築く。代表作『風立ちぬ』は、2013年にスタジオジブリでアニメ映画化されました。

【軽井沢高原文庫について】
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町長倉202-3
概 要:軽井沢高原文庫は、軽井沢の豊かな文学世界を体験できる施設として、1985年8月に塩沢湖畔に
    開館しました。敷地内には堀辰雄が愛した山荘を旧軽井沢から移築し、内部を公開しているほか、
    有島武郎別荘“浄月庵”などを有しています。

【株式会社シェルマンアートワークスについて】
 蓄音機の修復について数多くの実績がある国内屈指の専門店であり、庄司達也教授が2013年に詩人の近藤東氏旧蔵蓄音機をご遺族より受贈した際に点検と調整を依頼した実績を持つことから、横浜市立大学と軽井沢高原文庫が協議し修復を依頼しました。

 




 

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