シュローダー マクロ経済見通し(2021年6月)

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

基本シナリオ

【世界】
2021年の世界経済成長率見通しは、緩和的な金融政策・財政政策に加え、新型コロナウイルスワクチンの配布に伴う経済活動の回復が下支えとなり、5.9%を見込んでいます。また、経済再開を背景に、経済成長の原動力は、産業セクターからサービスセクターに移ると考えます。欧州や日本の経済は2022年も回復が継続すると考えますが、米国や中国を含む多くのエマージング諸国の経済成長率は減速すると考えていることから、2022年の世界経済成長率は減速が見込まれますが、4.5%と高い水準で維持されると考えます。コモディティ価格の上昇により、2021年のインフレ率は、2.9%に押し上げられると見込んでいますが(2020年のインフレ率は1.8%)、2022年には、2.5%に落ち着くと考えています。また、米中関係の緊張は、今後も継続すると考えます。

【米国】
財政刺激策などが下支えとなり、2021年の米国経済成長率は6.7%を見込んでいます。インフレ率については、コモディティ価格の上昇により2021年4-6月期に4.6%程度まで上昇すると考えていますが、コアインフレ率は、2022年半ばにかけて低下していくと考えています。2022年1月に需給ギャップが解消されると見込んでおり、2022年後半からは、コアインフレ率は加速すると考えています。経済活動の回復に伴い、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2021年10-12月期に量的緩和の縮小を開始し、2022年末に政策金利を引き上げると考えています。

【ユーロ圏】
新型コロナウイルスワクチンの配布が進むことで集団免疫の獲得が見込まれ、冬までには経済再開、旅行者数も一部増加することが期待されることから、2021年のユーロ圏経済見通しは4.1%としています。2022年については、ユーロ圏GDPの5.4%程度に相当する欧州復興基金が下支えとなり、4.9%を見込んでいます。インフレ率見通しについては、コモディティ価格の上昇により1.9%への上昇を見込んでいますが、2022年には1.3%に低下すると考えています。欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を据え置き、追加の量的緩和は行わないと考えています。

【英国】
新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでおり、制限措置の緩和に伴い、力強い経済回復が見込まれます。2021年、2022年は拡張的な財政政策が維持され、量的金融緩和政策は2021年内は維持されると考えています。これらを背景に、英国の経済成長率見通しは、2021年を6.8%、2022年は6.1%としています。

【日本】
新型コロナウイルスの抗体保有率は低く、2021年も引き続き新型コロナウイルス感染を巡る問題は継続すると考えます。引き続き輸出や産業セクターの回復が見込まれますが、行動制限は国内需要にとってマイナス要因となります。2021年の日本の経済成長率見通しは1.1%、2022年は経済再開が進み国内需要の改善が見込まれることから2.3%としています。日本銀行はイールドカーブ・コントロールを維持することが見込まれます。

【エマージング諸国】
エマージング諸国経済成長率見通しについては、先進国程の大幅な上方修正は行っていません。 2021年のエマージング諸国経済の成長率は7.1%に回復、2022年は4.8%に減速すると見込んでいます。食品価格およびエネルギー価格上昇、経済回復を背景に一部の中央銀行は金融政策の引き締めを開始しました。ただし、多くの国々の経済では、長期間インフレは抑制された水準で推移することが見込まれ、極端な引き締めには至らないと考えます。


今後想定される他のシナリオ
基本シナリオ以外で今後想定される景気シナリオとして、 リフレ―ションシナリオの「経済の過熱とその後の冷え込み」が挙げられます。同シナリオでは、新型コロナウイルスワクチン配布に伴い、経済が急回復し、財政・金融政策も期待されていた以上の効果を発揮しますが、その後インフレ上昇に伴い、財政・金融政策の引き締めが実施され、経済の冷え込みが予想されます。そのほか、デフレーションシナリオの「新型コロナウイルスワクチンの失敗」などが挙げられます。


世界の実質GDP成長率見通し



シュローダー・エコノミクス・チームによる見通し(基本シナリオ)


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