新型コロナウイルス感染から約1年後における抗ウイルス抗体および中和抗体の保有状況に関する調査
今回2021年3月末までに採血を実施した約250例のデータを解析し、感染から6か月後と1年後において(1)抗ウイルス抗体および中和抗体の量はいずれも6か月時点より緩やかに減少する傾向にあることを確認しました。一方で(2)依然として多くが抗ウイルス抗体および検出可能な量の中和抗体2を有しているという結果も得られました。
さらに拡大傾向にある変異株に対する中和抗体の保有割合についても評価を行ったところ、6・12か月時点の中和抗体保有割合は従来株に比べて低下傾向にあることが示されました。
研究のポイント
- COVID-19回復者を一定期間追跡した国内最大規模のデータ
- 高感度のAIA®-CL抗体検出試薬による抗ウイルス抗体の量と「hiVNTシステム3」を用いた迅速測定系の変異株パネルにより、中和抗体2を測定
- 抗ウイルス抗体、中和抗体のいずれにおいても時間経過に伴う減少傾向を確認
- 回復者の多くが、約1年後も検出可能な量の抗ウイルス抗体および中和抗体を保有
- 変異株に対する中和抗体保有割合は、従来株に比べて低下する傾向を確認
また、最近では、変異株の種類が多様化し、その感染者数が急激に拡大傾向にありますが、変異株に対する、特に日本人における中和抗体に関する情報は十分ではありません。昨年7月に本学が独自に開発したhiVNTシステム3を用いて、新型コロナウイルスの変異株に対する中和抗体を獲得しているかを合わせて調査しました。様々な変異株に対する免疫能を集団で評価することは、社会活動を回復させる後押しになると考えられます。
今後の展開
本研究において開発された全自動抗体検出技術や中和抗体検出技術が、装置と共に社会実装されることで、科学的・社会的意義の高いデータ解析の実施につながり、COVID-19の診断・治療等の向上に役立つことが期待されます。
今後、変異株の種類のさらなる増加も予想されるため、新たなコロナ変異株が登場した際に、変異株に対する中和抗体保有の状況を集団レベルですみやかに調べることが必要であり、本学の開発した技術を他機関や民間企業などを通じて社会実装につなげられるよう、検証を進める予定です。
1本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)「新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究(研究開発代表者:山中竹春)」の支援を受けて行われました。
参考URL:https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/covid19_antibody.html
(新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査PROJECT開始のお知らせ)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/20201202yamanaka.html
(新型コロナウイルス感染6か月後における抗ウイルス抗体保有および中和抗体保有調査に
関する中間報告)
2シュードウイルスによる中和曲線を用いた中和抗体価(pvNT50)が50以上、またはhiVNTシステムによる中和率(hiVNT値)が40%以上で定義
3 hiVNT(HiBiT-tagged Virus-like particle Neutralizing antibody Test)システム
令和2年7月に本学研究チームが開発した、SARS-CoV-2に対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる手法。感染性を有する生ウイルスやゲノムを含んだ擬似ウイルスを使用しないため、危険な操作が不要で、3時間以内に中和抗体の量を測定することが可能(J Mol Cell Biol. 2021 Mar 10;12(12):987-990)。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究(研究代表者:国立感染症研究所 鈴木忠樹; 分担研究者:横浜市立大学医学部 梁明秀)」の支援を受けて行われました。