データサイエンスで「看取りの質」向上へ ホスピス住宅における組織改善手法開発の共同研究を開始
研究内容のポイント
- 「看取りの質」およびその関連諸要因を数値により可視化することで、ホスピス住宅におけるサービスの改善に活用
- 人生最後の時を過ごすホスピス住宅における満足度「看取りの質」と様々な経営指標の相関関係をデータサイエンスの手法で研究
- 利用者の「看取りの質」を決定する要因の定量化をめざす
研究背景
「看取りの質」を測ることは、患者本人が最期まで自分らしく生きること、最期の振り返りで生きてきたことに満足すること、を外部から客観的に捉えていくことです。WHOによるとQOLの定義は、「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」です。自分自身の価値観を持って最期の時間を過ごすという「主観」を測定・評価をしていくというのは、とてもハードルの高いことです。そこで、「看取りの質」「人生を満足して終える」というのは、「最期を過ごした場所に関係するメンバーの満足度の相関によって増減する」という仮説に基づき、患者のQOLと、そこで働くスタッフのエンゲージメントやプレゼンティズム、離職意向、組織マネジメント状況の相関を研究し、この世界的な課題にアプローチするというのが本研究の趣旨です。データサイエンスの観点から医療従事者へのサーベイ、従業員満足度、顧客満足度、スタッフの離職意向等の測定により、様々なエビデンスに基づく経営管理手法を生み出し形式知化することで、利用者の看取りの質向上実現に向けて取り組みます。
今後の展開
さまざまなアプローチで「看取りの質」の測定と、在宅ホスピスの質の向上を図る研究を取り組んでまいります。現状では、在宅ホスピスに関わる組織マネジメントや従業員の離職が利用者に何らかの影響をもたらす可能性を発見しており、看取りの質の測定法を含めて更なる精緻化を行っていきます。最終的には、人生最後の時を過ごすホスピスの場を在宅で安心して過ごせるように、ホスピス住宅から大きく展開していくことをめざします。
用語解説
*1 ホスピス住宅
医療サポートが継続的に必要な、がん末期やALS等神経難病の方が、最期まで生活できる住宅。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に、訪問看護・介護を併設して、ご入居者の生活を支える。
参考
〇横浜市立大学
医学部とデータサイエンス学部を併せ持つ国内唯一の大学である横浜市立大学は、ヘルスデータサイエンスに特化した大学院として、令和2年4月にデータサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻を開設しました。予防・医療・介護に関するヘルス領域の専門知識を有する方が、ヘルスサービスの質向上に向けたデータサイエンス研究に取り組むための教育課程です。具体的には、研究デザイン学と生物統計学の基礎知識をベースに研究を展開します。
代表取締役 高橋 正
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