大規模建築の木造化が10年間で着実に広がる。環境負荷低減にも注目

カナダウッドジャパン

セルコホームでは東日本大震災の復興プロジェクトをきっかけに大規模木造建築に積極進出

カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)より、日本国内の大規模建築の木造化に関する動向をご紹介します。

近年、木造建築は人に与える温もりや香りの効果だけでなく、木の建材としての柔軟性、衝撃や音の吸収、そして木材を使用することによる工期の短縮化やコスト軽減といった点が高い評価を受けています。特にサステナビリティに対する貢献度は大きく、木材が再利用可能な循環資源であることや二酸化炭素貯留効率の高さなど、環境負荷を低減する建材としても多くの注目が集まっています。また、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)に関しては、床・壁・屋根が一体となった強固な「六面体構造(箱構造)」によって荷重を一点でなく面全体に分散させて外力に対して抜群の強さを発揮し、建物の変形や倒壊を防ぐという耐震性能も兼ね備えています。
実際に、日本国内では住宅以外の木造建築が増加傾向にあり、カナダ林産業審議会(COFI)日本事務所が発表した市場調査報告書「Beyond Housing:A Market Analysis of Timber Opportunities in Japanese Non-Residential Construction(日本の非住宅建設における木材の市場機会の分析)」では、2011年から2019年の間の日本の非住宅市場全体における木造建築の占める割合は、総戸数では32%から36%、総床面積では9.3%から9.8%へと拡大していることが明らかとなりました。日本の非住宅木造市場は過去10年間で着実な成長を遂げていると言えます。

商業施設をはじめとし、医療施設や老人福祉施設、保育施設など、さまざまなジャンルの大規模建築の木造化がすすめられる中で、宮城県名取市閖上の「ゆりあげ港朝市 メイプル館」も一つの事例として挙げられます。ハウスメーカーであるセルコホーム株式会社(本社:宮城県仙台市、代表取締役社長:新本 恭雄、以下セルコホーム)は、今や朝市のシンボル的な存在となっている「メイプル館」の設計・施工を手掛けたのを契機として、大規模木造建築に本格的に進出しました。


 
 
「ゆりあげ港朝市」には、日曜日や祝日ともなると多い日で7000人もの買い物客が押し寄せる。
「メイプル館」の大きく弧を描く屋根を支えるのはカナダ材の大断面構造用集成材

設計を担当したセルコホーム取締役 開発担当 杉浦洋一氏は、「本プロジェクトでは、東日本大震災で被災した人々のために、多くのカナダの善意を寄せていただきました」と当時を振り返ります。東日本大震災によって甚大な被害を受けた「ゆりあげ港朝市」の再建において大きな力となったのは、「カナダ-東北復興プロジェクト」による支援でした。2011年11月に立ち上がったこのプロジェクトは、カナダ連邦政府とブリティッシュコロンビア州およびアルバータ州政府、カナダ林産業界並びにカナダウッドグループが一体となり、被災地域のコミュニティ再生に役立つ施設をカナダ材で建設することを主な目的としたものです。

「メイプル館」の設計・施工にあたって同氏は、「住宅の支援は応急仮設住宅等で進捗していましたが、非居住用施設の再建は遅れていて、地区の商業施設を喪失した閖上もその一つでした。新鮮な地元の魚や野菜や花をいち早く供給すると共に、地域のコミュニティの再建に大きく貢献する施設にしたいと、計画を持ち掛けた当初から地元の設計事務所やゆりあげ港朝市協同組合、また地域市民とのワークショップを何度も開催し、実効性のある建物を目指しました」と話します。
また、「メイプル館」のデザインは、カナダ・ペンティクトンのオカナガン湖の岸に立つレストランにインスピレーションを得ており、採用した集成材やマスティンバーのCLT(Cross Laminated Timber)もペンティクトンの工場で生産されたものであることから、カナダとの強い結び付きが窺えます。

その後、「メイプル館」と13戸の店舗棟を収入源として新規補助金を得ることができ、第2期工事へとつながりました。セルコホームがプロデュースを行った第1期「ゆりあげ港朝市」プロジェクトは、2017年度のグッドデザイン特別賞[復興デザイン]を受賞し、カナダ関係者からも高く評価されています。現在では東日本大震災以前よりも来場数が増えており、活気のある朝市となりました。

セルコホームでは、この「メイプル館」に続くかたちで大規模木造建築を多数手掛け、宮城県内ではセルコホーム仙台支店の社屋である「シティフォレスト宮城野ビル」やレストラン「たんや善治郎」、「秋保ヴィレッジ(株)農産物直売所『アグリエの森』」、「特別養護老人ホーム 抱優館 南光台東」などがあります。


 
 
写真左:宮城県仙台市「シティフォレスト宮城野ビル」/軸組工法
写真右:宮城県仙台市「たんや善治郎」/枠組壁工法
 
 
写真左:宮城県仙台市「秋保ヴィレッジ(株)農産物直売所『アグリエの森』」/軸組工法(大断面)
写真右:宮城県仙台市「特別養護老人ホーム 抱優館 南光台東」/枠組壁工法

大規模木造建築に関しては、eコマースの市場拡大に伴って需要が高まっている倉庫や物流センターなどの低層の商業用建築物も魅力的な成長機会を有していると考えられ、今後のさらなる木造化の広がりが期待されます。

カナダウッドジャパンでは、これからも木造建築に関わる革新的な技術の研究開発をすすめ、持続可能な社会の実現にも貢献する林産品の利用機会拡大を実現するべく、大規模建築の木造化をはじめとした日本国内における木造建築の普及活動に引き続き取り組んでいきます。




 
本件に関するお問合せ先: カナダウッドジャパン TEL 03-5401-0531
 

 


 

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