酪農学園大学の大学院生がハスカップの果皮(搾汁残渣)を用いたワインの製品化に成功 -- ビタミンやアントシアニンなどを多く含む北海道の地元食材を有効活用

酪農学園大学

酪農学園大学(北海道江別市)大学院酪農学研究科食品栄養科学専攻修士課程1年の前野奈緒子さん(指導教員:山口昭弘教授)がこのたび、有限会社はすかっぷサービス(北海道苫小牧市)との共同研究で「はすかっぷクルゼイワイン」を完成させた。前野さんは、地元食材を活用した商品開発を目的として、これまで利用が進んでいなかったハスカップの果皮(搾汁残渣)を用いたワイン醸造について研究。完成したワインは4月以降、数量限定で一般販売される予定になっている。なお、ワインラベルのデザインは、食と健康学類3年(応用微生物学研究室)の西村有未さんが担当した。  前野さんは酪農学園大学の研究生を経て大学院修士課程に所属。地元食材を活用した付加価値を高める商品開発を目指し「ハスカップの果皮(搾汁残渣)を用いたワイン醸造と製品開発」をテーマとした研究を進めている。  ハスカップは苫小牧市勇払原野に自生していた小果樹で、ビタミンや鉄分などが豊富なほか、目に良いとされているアントシアニンも多く含むため、近年の健康志向の高まりによって注目を集めている。  しかし、元々収穫量が少なく、さらに果実が痛みやすいため、多くは冷凍果実または果汁(搾汁液)として用いられ、生果実として流通するのは初夏の極めて短い期間のみ。また、利用法も菓子などとして加工されることがほとんどだった。  さらに、搾汁後の残渣(果皮)にもアントシアニンが多く含まれているにもかかわらず、これもほぼ有効利用されていないのが現状であった。  前野さんは、搾汁後の残渣である果皮にハスカップ果実から分離した酵母Candida Kruseiを加え、「ばんけい峠のワイナリー」の協力を得て、アルコール度数7%と9%の2種類を試作。官能検査などの結果、アルコール9%のワインが商品化されることとなった。  なお、この研究は公益財団法人道央産業振興財団の製品開発支援助成事業の助成を受け、有限会社はすかっぷサービスとの共同研究で実施された。 ■前野奈緒子さん(酪農学研究科食品栄養科学専攻修士課程1年)のコメント 1.大学院進学と研究テーマ  ハスカップはpHが低く、S.cerevisiaeのような一般的な酵母ではアルコール発酵が進まないため、さまざまな酵母を試しました。十分に発酵する酵母を見つけても、色素や香りが良くないために採用できない酵母もありました。最終的にCandida Krusei酵母を用いることで酸性条件下でもしっかり発酵し、ハスカップ特有の爽やかな酸味と色素を表現することができました。  今回の製品は、「ばんけい峠のワイナリー」さんに、ハスカップの解凍果皮をそのまま漬け込み発酵させたアルコール度数9%のワインと、ペースト状に粉砕して発酵させたアルコール度数7%の2種類を試作していただいたものです。実験室では上手くいく結果が出ても、実際にワイナリーで製造すると環境も分量も大きく異なるため、その点で難しさを感じました。 2.ハスカップワインと実験内容  地元食材の付加価値を高め、健康に有用な製品を開発することを目指して研究を進めています。  今回注目したハスカップは、冷凍果実として活用されていますが、未利用資源である搾汁残渣の有効利用を検討する探索研究を行っています。ハスカップは道内外で高機能食材として有名であり、主に菓子などに利用されていますが、搾りかすである残渣はポリフェノールやアントシアニンなどが含まれているにも関わらず活用が進んでいませんでした。以前所属していた大学では実験機器が十分ではなかったため、新たな研究環境を求めて酪農学園大学の山口先生の下で研究に取り組むことに決めました。 3.今後の展望や計画  今回のワインの製品化により、ハスカップの残渣を有効利用することは実現できましたので、次は、貴腐菌(Botrytis cinerea)をもちいて発酵させたワイン醸造を実験中です。アルコール発酵前に貴腐発酵を行うために貴腐菌を用いることから、一般的に知られている甘い貴腐ワインとは異なります。貴腐発酵が不均一にならないように工夫したり、香りがカビ臭くならないように実験を繰り返しています。  そのほか、ハスカップの搾りかすが入ったパウンドケーキを試作して江別市内の飲食店で提供することも検討しています。  大学院に入って1年が経ちましたが、商品化までスムーズに実現することができました。ご指導いただいている山口昭弘教授に本当に感謝しています。  今後は、栄養士の資格を活かしながらハスカップ残渣の栄養成分やカロリーなどの分析を進め、データ化するような取り組みに携わりたいと考えています。そのことが実現すれば、ハスカップ残渣がさまざまな商品に使用されることがスムーズになると考えます。健康食品、飼料、薬学などもっといろいろな分野で活用されることを期待しています。 ■西村有未さん(農食環境学群食と健康学類3年 応用微生物学研究室)のコメント  最初に、前野さんと「どういうラベルを作りたいか?」ということについて時間をかけて話し合いを行い、前野さんの意図や思いを反映することを第一に考えました。  まず、星空が好きということで、ベースとなる背景に星空を、ハスカップの後ろには月を模した円形を入れました。ハスカップの果実を中心に据えることはもちろんですが、果実を1つにするか2つにするかも検討し、文字よりも絵が大きく目立つように考えました。さらに、ラベル下部の左右にハスカップの花を配置し、その間に一番星を描きました。最後に、全体的なデザインをステンドグラス調にしました。酪農学園大学で礼拝が行われる黒澤記念講堂にステンドグラスがあるためです。  大まかな配置が決まった後も加工を何度も行って試行錯誤を繰り返しました。前野さんから「思いを120倍盛り込んでくれた」と喜んでもらえました。  大学に入学してから今回のデザインが3本目のボトルデザインとなりました。自分が関わったデザインが採用された製品を手にすることができて、やりがいを感じるとともにとてもうれしく思っています。 ■「はすかっぷクルゼイワイン」概要 【製造】ばんけい峠のワイナリー (有限会社フィールドテクノロジー研究室)  https://sapporo-bankei-winery.jimdofree.com/ 【完成】2021年4月以降を予定 【販売】数量限定で一般販売を予定 【共同研究】有限会社はすかっぷサービス  https://haskap.jp/ 【特徴】ハスカップ搾汁時に発生する果皮にハスカップ果実から分離した酵母Candida Krusei を合わせて作ったもので、ハスカップ特有の爽やかな酸味が感じられる果実味豊かなワイン。 ※酒税法上の分類は甘味果実酒 ●酪農学園大学HP記事 ・ハスカップの果皮(搾汁残渣)を用いたワインの製品化に成功 (大学院修士課程1年前野奈緒子さん)(2021.03.08)  https://www.rakuno.ac.jp/archives/13743.html ▼本件に関する問い合わせ先  〒069-8501 江別市文京台緑町582番地  酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類  応用微生物学研究室 教授 山口 昭弘  TEL・FAX: 011-388-4910  E-mail: yama-aki@rakuno.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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