新型コロナの影響で需要が高まる、物流倉庫や製造施設などの低層建築物の木造化が期待される

カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン（所在地：東京都港区、代表：ショーン・ローラー）より、日本国内における非住宅木造市場の最新動向をご紹介します。

カナダ林産業審議会（COFI）日本事務所が先般発表した市場調査報告書「Beyond Housing:A Market Analysis of Timber Opportunities in Japanese Non-Residential Construction（日本の非住宅建設における木材の市場機会の分析）」の中で、日本国内では非住宅において木造建築の新たな市場機会が拡大していることが明らかになりました。

2019年の日本国内における非住宅の総床面積は3,900万平方メートルで、住宅市場の約55%に相当する規模でした。一方、住宅市場では構造用木材の使用率が約57.8%であるのに対し、非住宅市場の使用率は9.8％となっています。また、現在の非住宅市場における構造用木材の年間使用量は約672,000立方メートルと推測されます。

昨今、日本国内の非住宅木造市場は過去10年間で絶対量ベースと市場シェアのいずれにおいても着実な成長を遂げており、2011年から2019年の間に非住宅木造建築物の総床面積は317万平方メートルから384万平方メートルへと21％成長しました。この間、年間の非住宅木造建築物の着工数は17,626戸から19,373戸に増加しており、非住宅市場全体におけるシェアは総戸数では32％から36％、総床面積では9.3％から9.8％へと拡大しています。

日本国内における低層の非住宅木造建築物の優れた事例として、北海道中央牧場が所有する新設の「えりも農場」があります。

 
163,000平方メートルの敷地に合計9棟、総床面積18,120平方メートルの畜舎が建設され、各棟の間口は20メートル以上、奥行は約100メートルあります。一般的に畜舎はアンモニアや水蒸気の発生が著しく、鉄骨造では錆で腐食がすすみますが、木造の場合はこれらの被害が少なく、建物の寿命が長くなるというメリットがあります。

   
将来的に構造用木材の大幅な利用拡大が見込める未開拓市場とは、どのようなものでしょうか。現在、非住宅市場における木材使用率は平均10％弱に留まるのに対し、高齢者介護施設や農業用建築物などは最も高く、総床面積では市場全体の25～30％にも達しています。これまでに市場開拓努力が成功している非住宅分野の潜在的な市場機会予測をもとに推測すると、非住宅市場において総床面積の25～30％を占める成長目標は現実的に達成可能であると言えます。木材使用量がこの範囲まで増加すれば、構造用木材の年間需要は104万～138万立方メートルの純増となります。

平屋や2階建てなどの低層においては、鉄鋼や鉄筋コンクリートよりも木材が一貫して廉価となりますが、コスト面での優位性は中層から高層へと高さが増すにつれて徐々に低下します。COFIによる分析では、木材利用で最も顕著に実際の利益をもたらすボリュームエリアを階数と用途別にランク付けしており、今回の調査によって特定された未開拓市場の合計138万立方メートルのうち、約100万立方メートルが1～5階建てで占められていることが分かりました。つまり、短・中期的に見て木造化が現実的に可能なのは、低層・中層建築物であると言えます。

 
また、用途別で木材利用の成長が見込めるのは運輸・物流、製造、卸売および小売用の建築物で、これらを合わせた未開拓市場では、木材使用量が年間50万立方メートル以上も増加する可能性があります。特に、輸送・物流施設や倉庫は魅力的な成長機会を有しており、日本のeコマースの市場はすでに米国の3分の1に匹敵する規模となっています。今後も2025年までに年6％増のペースでの成長が予想されていることに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響がオンラインショッピングへのシフトを加速させました。結果として、物流センターや倉庫の需要が高まりを見せています。さらに、これまでにもカナダの構造用集成材はツーバイフォー工法の農業用建築物に採用されており、倉庫や製造施設などの低層の商業用建築物にも容易に応用できる成功事例が数多くあります。

COFI日本事務所では、これからも木造建築における革新的な技術の研究開発をすすめ、持続可能な社会の実現にも貢献する林産品の利用機会拡大を実現するべく、非住宅市場をはじめとした日本国内における普及活動に継続的に取り組んでいきます。