東京薬科大学の安達禎之准教授らがスギ花粉症の発症に関わる花粉内アジュバントと受容体について解明 -- スギ花粉症の新たな治療法の開発に期待

東京薬科大学

東京薬科大学薬学部免疫学教室の安達禎之准教授と菅野峻史助教、東京慈恵会医科大学自然科学教室生物学研究室の平塚理恵准教授らの共同研究グループは、スギ花粉粒に含まれる(1,3)-β-グルカンが免疫細胞の一種「樹状細胞」を活性化し、スギ花粉のアレルゲンに対する抗体産生などの免疫反応を促進することを発見した。この成果は、日本アレルギー学会の英文雑誌『Allergology International』に掲載され、9月17日(木)~10月20日(火)にオンラインで開催される「第69回日本アレルギー学会学術大会・国際アレルギー学合同会議」で発表される。 ■スギ花粉粒に内在する免疫促進物質(アジュバント)およびその免疫受容体が明らかになった。 ■スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質以外のアレルギー発症に関わる原因分子はこれまで明らかにされていなかったが、今回の研究により、スギ花粉粒内に潜在する多糖成分がアレルゲンに対するIgE抗体産生を促進させることが明らかになり、さらに発症に関わる免疫細胞および多糖成分に対する受容体の役割も明らかになった。 ■スギ花粉症を根本的に治療するための新たな治療ターゲットになると期待される。  スギ花粉症は日本人の4人に1人が発症する、言わば国民病でもある。しかし、その治療は依然として抗ヒスタミン薬などの対処療法に頼っている割合が高く、毎年の治療費負担等が社会的な問題にもなっている。  スギ花粉症では、花粉に含まれるタンパク質性アレルゲンに対するIgE抗体産生が発症の主な原因となることが知られているが、抗体産生を促進させるアレルゲン以外の免疫促進物質(アジュバント)については、あまり明確ではなかった。  今回、東京薬科大学薬学部免疫学教室の安達禎之准教授と菅野峻史助教、東京慈恵会医科大学自然科学教室生物学研究室の平塚理恵准教授らによる共同研究グループは、スギ花粉粒に含まれる(1,3)-β-グルカンが免疫細胞の一種「樹状細胞」を活性化し、スギ花粉のアレルゲンに対する抗体産生などの免疫反応を促進することを発見した。  まず、培養細胞を使った実験で、スギ花粉による樹状細胞の活性化には、(1,3)- β-グルカンと結合する受容体「デクチン-1」が関わることが判明。また、マウスを使った動物実験では、普通のマウスではスギ花粉を長期間鼻に接種するとスギ花粉アレルゲン特異的なIgE抗体が産生されるのに対し、デクチン-1の遺伝子欠損マウスは、そのIgE抗体が殆ど産生されなかった。くしゃみの回数もデクチン-1欠損マウスは少なく、アレルゲンに反応してリンパ球から産生されるサイトカイン(インターロイキン-13)も普通のマウスに比べ、デクチン-1欠損マウスは著しく低下した。  これらの結果から、アレルゲンに対する抗体産生やサイトカイン産生にはデクチン-1が強く関わることが明らかになった。さらに、スギ花粉の(1,3)- β-グルカンは水溶性のものと、花粉粒の外壁および生殖細胞表面に固定されているものがあることが電子顕微鏡での観察から判明。特に外壁の(1,3)- βグルカンがデクチン-1と結合し、樹状細胞を活性化することが分かった。  本研究により、スギ花粉に対するアレルギー反応には、デクチン-1を介した樹状細胞の活性化が重要な鍵を握っていること、花粉粒に内在する(1,3)- β-グルカンがアジュバントとしてデクチン-1に作用してアレルゲン特異的な抗体産生を促進させることが明らかになった。これらの発症メカニズムをさらに解析し、適切な対処法が開発されればスギ花粉症の新しい治療法となることが期待される。  なお本研究成果は、日本アレルギー学会の英文雑誌『Allergology International』( https://doi.org/10.1016/j.alit.2020.08.004 )に掲載され、JSA/WAO Joint Congress 2020(第69回日本アレルギー学会学術大会・国際アレルギー学合同会議、9月17日-10月20日オンライン開催)で発表される。 ▼本件に関する問い合わせ先 総務部 広報課 住所:東京都八王子市堀之内1432-1 TEL:0426766711 FAX:042-676-1633 メール:kouhouka@toyaku.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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