【東芝】「SCiB」が船舶へのリチウムイオン電池の適用を承認する鑑定書を国内で初めて取得
-日本海事協会の「大容量蓄電池ガイドライン」に基づく鑑定書の取得により、海洋環境を含む地球環境の保全に貢献-
当社は、当社のリチウムイオン電池「SCiB™」を使用した「電池モジュール&コンポーネント」について、一般財団法人日本海事協会 (以下、日本海事協会)から、船舶への適用を承認する鑑定書を取得しました。日本海事協会によるリチウムイオン電池モジュール&コンポーネントの鑑定書の発行は、国内で初めてとなります。SCiB™を使用した蓄電池システムを船舶に搭載することにより、例えば、航行中に自然エネルギーからの電力供給をSCiB™に蓄電し、排ガス規制の強化(注1)が進む中、停泊時の船内の電力を賄ったり、入港時などの動力源に使用するなど、海洋環境を含む地球環境の保全に貢献します。
鑑定書を取得した蓄電池システムコンポーネントは、SCiB™電池モジュールをはじめ、電池モジュールの電圧、温度、電流を監視する電池管理ユニット(以下、BMU)や電流センサなど12種類の部品により構成されています。鑑定書の取得により、蓄電池システムに組み込む部品毎に必要な各種検査が免除され、船舶用蓄電池システム構築の短縮化を図ることができます。
日本海事協会は、世界に120か所以上の専任検査員事務所を構えるグローバルな機関で、船舶に関するさまざまな事業の進歩発展を図り、人命及び財産の安全、さらに、海洋環境の保全を期すことを目的として活動している民間の団体です。今回取得した鑑定書は本協会の「大容量蓄電池ガイドライン」に基づくもので、本ガイドラインの要件の一つであるBMUは、経済産業省が所管する独立行政法人「製品評価技術基盤機構」の蓄電池評価センター(NLAB)で試験を実施し、産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システムの安全性について規定している規格「JIS C8715-2」にも適合しています。
国際海事機関(IMO)によれば、海運から排出される温室効果ガス(GHG)のほとんどがCO2であり、また、船舶からの排出においては、CO2に加え、NOx(窒素酸化物)や硫黄酸化物(SOx)等も問題となっています。2012年においては、世界中のCO2排出量の約2.2 %を海運が占め、毎年、ドイツ一か国分の排出量に匹敵する約8億トンのCO2が発生しています。世界経済の成⻑を背景に海運による輸送需要は増加傾向にあり、IMOは国際海運全体での GHG削減目標として、(1)2030年までに効率 40%以上改善、(2)2050年までに総排出量 50%以上削減、(3)今世紀中なるべく早期に排出ゼロを目指すことを掲げています。
船舶の主動力源となる燃料において、重油から、CO2、NOX、SOXの排出量が少なく環境性能が優れているLNG(液化天然ガス)への転換が進む一方、さらなるCO2の排出を削減する手段として、船内で利用する電力、または航行に必要な電力の一部を蓄電池で賄う方法が注目されています。
船舶における蓄電池にはこれまで鉛電池が多く使用されてきましたが、エネルギー密度に比べて電池自体の体積・質量が非常に大きいという制約がありました。リチウムイオン電池は鉛電池よりもエネルギー密度が高く、小型で大容量の電力を供給することが可能ですが、非常時に逃げ場が限定される船舶への適用においては、熱暴走による蓄電池の破壊や発火等といった特に安全面の対策が最重要の課題となっています。
当社が開発し事業化を進めるSCiB™は、安全性の高いチタン酸リチウムを使用することで、外部からの圧力などによって内部短絡が発生する状況においても、破裂・発火の可能性が極めて少ないという優位性があります。さらに、2万回以上の充放電が可能な長寿命性や-30℃の環境下でも充放電可能な特性により自動車、産業機器、定置用など高い安全性と信頼性が要求される様々な分野での使用に適しており、電池推進船や国内の内航船での採用実績を含め、既に国内外の様々な分野で活用が拡大しています。
2018年8月には、鉄道車両向け欧州規格の認証(注2)を、リチウムイオン電池を使ったシステムとして世界で初めて取得し、グローバルにおける鉄道向け蓄電池システム事業の強化も図っています。
当社は、本鑑定書の取得により、小型船舶から大型船舶までSCiB™システムの搭載を提案し、鉄道分野に加え船舶分野でもSCiB™事業を強化し、海洋環境を含む地球環境の保全への貢献を推進してまいります。
SCiB™を搭載した電池モジュール 電池管理ユニット(BMU)
鑑定機器一覧
蓄電池システムコンポーネント構成図
注1 船舶による大気汚染の防止を図るため、1997年に国際海事機関(IMO)において、マルポール条約が改正され、船舶の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などに対する全世界的な規制が2005年5月から開始。2020年からは、燃料油に含まれる硫黄濃度を3.5質量%以下から0.5質量%に引き下げられ、規制強化が行われている。
国土交通省海事局 2020年SOx規制適合船用燃料油使用手引書 http://www.mlit.go.jp/common/001284545.pdf
注2 欧州規格EN50126(RAMS注3)およびRAMSの安全性(Safety)に関するEN50129の認証をSIL 4注4(最高水準)として取得しました。
注3 RAMS(Reliability Availability Maintainability and Safety)信頼性,有効性,保守性,安全性の仕様と実証
注4 SIL4(Safety Integrity Level 4)1時間当たりの危険側失敗の平均頻度 1×10-8(マイナス8乗)未満の水準