【ニュースレター】仕組みで押す! 生産現場の「成長スイッチ」
少ない経験、ひろがる管理領域
「振り返ってみれば、私たちが若手だった時代は、経験を積み上げる機会や環境、刺激などに溢れていたのだと思います。しかし時代の流れとともに生産の現場も変わっています。そうした背景の中で次代を担う若手人財を育てていくためには、一人ひとりへの愛情に加えて、現状に即した育成の仕組みが不可欠なのだと思います」
こう話すのは、浜北製造部生産課第1工区の工長、高橋伸昌さん。上のイラストをご覧ください。〈過去〉の文字の下に立っているのが若かりし日の高橋さんです。「国内生産量の多い時代でしたから、そもそも手を動かした場数が多い。また、採用も多く、向上心を掻き立ててくれる同世代のライバルがたくさんいましたし、海外生産への移行期には生産立上のための支援といった経験を現地で積むこともできました」
対して右側は、現在の若手従業員が置かれた環境です。
「経験の幅をひろげたり、チャレンジの機会が私たちほど多くはない一方で、管理や責任の領域だけが以前と比べて増えています。これではモチベーションを保つのは難しい。だからこそ育成環境を整えるのは私たちの責務だと考えています。仕組みの中で自ら向上心を膨らませられるような、そんな人財育成の在り方が必要でした」
「良い文化」は必ず受け継がれていく
そこで高橋さんは、現場の監督者に求められる基本スキルとして、「情報伝達力」「改善能力」「行動力」「判断力」「問題解決力」の5項目をピックアップ。自らのキャリアを振り返ることで、それらのスキルをいつ、どのような立場で身に着けたのかを徹底的に分析し、「リーダー研修」と銘打ったカリキュラムを立案しました。改善、製造技術、保全技能などの経験や知識を計画的に身に着けられるこの仕組みで、2016年のスタート以来、すでに5名の職場リーダー、1名の職長代行、1名の職長が誕生しています。「リーダー研修」は、成果の上がる育成システムとして、現在では他の工区でも導入が進められています。
高橋さんは、この仕組みを「心を鍛えて技を磨け! ~後戻りしない人財育成プログラム~」としてまとめ、今年1月、全国から各社の生産現場のリーダーが集う「第38回 第一線監督者の集い」で発表。参加した皆さんの大きな共感を得て、最優秀事例賞に選出されました。
「ヤマハ発動機の生産現場は、伝統的に人財育成を非常に大切にしてきました。もちろん私自身もそうした愛情の中で育ててもらった一人です。若い世代を大切に育てていけば、その人財がきっと次の世代を育ててくれる。時代ややり方は変わって当然のこと。でも、良い文化だけは必ず受け継がれていくと信じています」
「後戻りしない人財育成プログラム」を、各社から集まった監督者の前で発表
最優秀事例賞を受賞した高橋さん(右)