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京都産業大学は東京大学、フライブルグ大学(略)、産業技術総合研究所、宮崎大学、モナシュ大学(略)、金沢大学の研究グループとの共同研究により、TOM複合体の精密構造をクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法(分解能3.8Å)で決定することに成功した。
ヒトはミトコンドリアが正常に機能することにより健康を維持することができ、逆にミトコンドリアの機能低下は老化やさまざまな病態と関連することが知られている。正常に機能するミトコンドリアを維持するためには、性質も機能も異なる1000種類に及ぶタンパク質が必要で、このような多様なタンパク質を、前駆体タンパク質という形でサイトゾル(外)からミトコンドリア内に膜を通過して配送する必要がある。このミトコンドリアへのタンパク質搬入口として働くのが、複数のタンパク質が組み合わさってできたTOM複合体である。
このたび、京都産業大学らの研究グループは、TOM複合体の精密構造をクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法(分解能3.8Å)で決定することに成功した。TOM複合体の全体構造は各サブユニット2個ずつから成る2量体で、タンパク質の通り道(膜透過チャネル)となる円筒形のTom40同士の界面に、Tom22 2分子と脂質1分子が入り込んでいた。一方、Tom40のN端部分は、Tom40の円筒内部をサイトゾル(外)側から膜間部(内)側に向かって貫き、Tom5が膜間部側でこのN端部分をつなぎ止めていた。多様な前駆体タンパク質のうち、プレ配列を持つものはTom40同士の界面の側に出口があり、プレ配列を持たないものはTom40の2量体の外側に出口があった。このように、タンパク質の膜透過チャネル内に、プレ配列を持つ前駆体タンパク質と持たない前駆体タンパク質専用の通り道と出口を同一チャネル内に別々に用意し、出口で待ち構える各輸送経路の下流の因子に前駆体タンパク質を受け渡すことで、性質も機能も異なる1000種類に及ぶ前駆体タンパク質の外膜透過を効率良く行っていることが分かった。
ミトコンドリアへのタンパク質搬入のメカニズムの解明により、ミトコンドリアへのタンパク質配送に関連する病気の治療法の開発や、ミトコンドリアへのタンパク質配送の効率を制御することで、老化を防ぐなどの可能性が開けることが期待される。
なお、本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業および国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) の戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)の一環として行われた。
この研究成果は、2019年10月11日 に英国科学誌「Nature(オンライン版)」に掲載された。
むすんで、うみだす。 上賀茂・神山 京都産業大学
関連リンク
・ミトコンドリアへのタンパク質搬入口TOM複合体の精密構造と働く仕組みを解明
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20191010_345_release_ki01.html
・生命科学部 遠藤 斗志也 教授らの研究グループが、タンパク質の細胞内輸送校正システムを発見
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20190821_345_release_ki01.html
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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