後づけ簡単IoT!既存の製造装置の稼働状況をモニタリングできる電流センサ用「CT Sensor Shield 2」を販売開始
電流センサの計測用電流を再利用することで電源工事不要となり、導入がさらに容易に
<要旨>ロームグループのラピスセミコンダクタ株式会社 (以下ラピスセミコンダクタ) は、電源工事不要で工作機械などの稼働状況を容易にモニタリングできる電流検出用中継基板「CT Sensor Shield 2」の販売を開始しました。
新製品は、ラピスセミコンダクタの無線通信マイコンボード「Lazurite(ラズライト) 920J」と、市販のクリップ式 CTセンサ*1)を接続する中継基板 (シールド基板) です。
本シールド基板を使い、「Lazurite 920J」とCTセンサによるセンサノードを構成することで、工作機械の電流変動を読み取り、ゲートウェイへデータ送信出来るようになります。
低消費電流が特長の無線通信マイコンボード「Lazurite 920J」と組み合わせることにより、消費電流(待機時)をわずか10µAに抑えることに成功。さらに電流センサの計測に使用される誘導電流*2)を再利用する機能を搭載したことで、装置の近くにAC電源などを確保する必要がなくなりました。別途ソフトウェアやクラウドサービスを構築いただくだけで、工作機械の稼働状況を容易にモニタリングすることが可能となります。
本シールド基板は、2018年4月から チップワンストップ、ザイコストア (コアスタッフ社) 、スイッチサイエンス の3社からインターネット販売を開始しています。
<背景>
近年、情報通信技術、センサ技術、ビックデータ解析などの技術進化に伴い、IoT化によって設備の稼働状況やその環境をモニタリングし、情報を解析して新たな価値を創造したいという要望が増えています。しかし、追加装置の購入費用や工事費用、IoTソリューション導入費用が高額であることなどが原因で、工作機械を使う生産現場ではIoT化が進んでいないのが現状です。
ラピスセミコンダクタは、装置に流れる電流を計測し無線送信することで安価に稼働状態を把握できる「CT Sensor Shield」と「Lazurite Sub-GHz」によるシステムを2017年6月に発表しましたが、外部電源が必要なため、定期的な電池交換をするか装置の近くに電源を確保する必要があり、実運用する上で課題がありました。そこで、工作機械の動作中にCTセンサが出力する誘導電流に着目。誘導電流を蓄電して再利用する機能を搭載した「CT Sensor Shield 2」を開発しました。
<新製品の詳細>
「CT Sensor Shield 2」は工作機械の動作中にCTセンサが出力する誘導電流を蓄電する機能を搭載しました。低消費電流が特長の「Lazurite 920J(待機時:7µA)」をマイコンボード/920MHz無線モジュールとして使用することで、システム全体の待機電流をわずか10µAに抑えることができるため、装置が稼働していれば半永久的に稼働状況を無線で送信します。また基板上にはバックアップ電池(CR2032)も搭載できるため、十分な蓄電ができない場合(装置が10分以上停止など)でも長時間、稼働状態を把握することができます。
<活用方法:実証実験>
ラピスセミコンダクタでは、より多くの企業で「工場の見える化」による生産効率改善を支援するために、「CT Sensor Shield 2」を活用した稼働状況モニタリングのクラウドサービスを株式会社フージェットと共同開発し、小杉織物株式会社(福井県坂井市)様で実証実験を開始しました。
本システムでは、CTセンサで計測した装置の電流値を920MHzでゲートウェイまで送信し、ゲートウェイ上で稼働率や稼働状況に変換します。ゲートウェイからは株式会社SORACOMの回線を用いてAWS(amazon web services)上に構築したIoTサーバーに保存し、PCやスマートフォンなどのブラウザで稼働状況を確認することが可能です。
システムの主な機能は、装置の稼働/停止をリアルタイムに表示するダッシュボード、時系列で停止/動作状態を示すバーチャート(作業ログ)、稼働率を一目で把握できる稼働率ヒートマップ表示の3つで構成されています。ビジュアライズ化されたユーザインタフェースによって、社内/外出先問わず即座に装置の稼働状況を把握できます。なお、本システムは2018年中にサービスを開始する予定です。
<その他製品仕様>
■CT Sensor Shield 2
・広範囲な測定レンジ0~100mAまでの誘導電流を計測可能 (2000:1のセンサ使用時:200Aまで)
・推奨CTセンサであるクランプ式AC電流センサ30A(販売元:株式会社スイッチサイエンス)との直接接続可能
■Lazurite 920J
・Lazurite Sub-GHzの機能をそのまま、SDカードサイズに凝縮した無線通信マイコンボード
・待機電流約7mA、Arduino比で99.98%削減し、単三電池3本で10年以上動作可能
<開発環境>
「Lazurite 920J」にPC上で開発したプログラムを書き込むための開発用ライタとして「Lazurite mini writer type A」も新たにラインナップしており、開発環境も充実しています。
■Lazurite mini writer type A
・LazuriteIDEからLazurite 920Jのプログラム書込みが可能
・PCからLazurite920Jの制御を行って無線データの送受信が可能
<用語解説>
*1) CTセンサ (Current Transformer センサ)
電流が流れると磁界が発生する特性を利用したセンサです。非検体のケーブルに流れる交流電流によって発生する磁界を電流に変換します。クランプ式のCTセンサであれば装置を止めることなく非接触で非検体に取り付けることが可能です。
*2) 誘導電流
CTセンサが磁界から変換した電流の事を誘導電流と呼びます。
ロームグループのラピスセミコンダクタは、低消費電力技術、高周波回路技術、デジアナ混載技術、メモリ設計技術などを得意技術とし、これら技術でロジック、メモリ、表示ドライバといったLSI商品を創出しています。また、お客様が設計し当社の工場で製造するファンダリサービスも主軸の一つで、お客様の様々なご要求にお応えします。
「品質第一」を企業目的に掲げ、お客様のニーズを満足する商品を創出し、国内だけでなく世界規模でグローバル社会に貢献しています。