世界最小ワイヤレス給電チップセット「ML7630(受電側)」「ML7631(送電側)」を開発

ローム株式会社

~13.56MHz帯ワイヤレス給電で、ヒアラブル機器にワイヤレス充電時代が到来~


<要旨>
ロームグループのラピスセミコンダクタ株式会社(以下ラピスセミコンダクタ)は、ウェアラブル機器向けに、世界最小※ワイヤレス給電制御チップセット「ML7630(受電・端末側)」「ML7631(送電・充電器側)」を開発しました。(※ 2018年3月ラピスセミコンダクタ調べ)
本チップセットは、ウェアラブル機器の中でも特に実装スペースに制約のあるBluetooth®ヘッドセットなど、ヒアラブル機器※1のワイヤレス給電に適したワイヤレス給電制御LSIです。ヒアラブル機器に対応するために、13.56MHzの高周波数帯で電力伝送を行いアンテナ(コイル)を小型にすると同時に、送受電に必要な機能を1チップに統合、SoC※2(システムオンチップ)としたことで、実装スペースの削減(対MicroUSBコネクタとの面積比で50%減)を可能にしました。従来難しかったヒアラブル機器でのワイヤレス給電を実現することで、機器の小型化はもちろんのこと、充電利便性、防水性・防塵性の向上に貢献します。

受電側の「ML7630」は、アンテナの磁界から電力を生成しバッテリが空になっても動作を開始することが可能です。また、200mW出力までのワイヤレス給電を、2.6mm角の小型WL-CSPパッケージで実現しています。さらにNFC Forum Type3 Tag v1.0※3機能も搭載しており、NFCタッチによるBluetooth®のペアリングなどをサポートします。一方、送電側の「ML7631」は、モバイルバッテリなどUSB電源から供給される5Vで動作できるため、充電器のモバイル化に貢献します。
なお、本チップセットは現在サンプル出荷中で、2018年5月より量産開始の予定です。生産拠点は前工程がラピスセミコンダクタ宮城株式会社(宮城県)、後工程は「ML7630」がラピスセミコンダクタ宮崎株式会社(宮崎県)、「ML7631」がROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.です。
今後もラピスセミコンダクタは、小型電子機器向けワイヤレス給電商品・ソリューションを開発することで、社会のスマート化に貢献してまいります。

<背景>
近年、新世代のウェアラブル機器として耳につける「ヒアラブル機器」が注目されています。ところが、ヒアラブル機器は超小型であるため、MicroUSBコネクタなど給電用の端子が小型化や省スペース化の大きな課題となっています。
その中で、ワイヤレス給電は端子レス化により、機器の小型化に貢献することができます。また、端子レス化で防水性・防塵性などの安全性も向上できるため、超小型機器においては有効な給電システムです。
ロームグループは、これまでにスマートフォンやタブレット端末向けのワイヤレス給電規格(WPC Qiなど)に対応した商品を開発・提供してきました。ラピスセミコンダクタは、NFC Forumのプリンシパルメンバであるロームグループの一員として、ロームと共に超小型ワイヤレス給電システムが求められるウェアラブル機器に適した13.56MHzワイヤレス給電の規格策定に積極的に取り組んでいます。

<新商品の特長>
  1.  ワイヤレス給電で給電部を省スペース化
    本チップセットは、13.56MHz帯域を用いたワイヤレス給電を行うことで、1µH程度の小型アンテナを使うことができます。ヒアラブル機器など、ウェアラブル機器のワイヤレス給電を実現し、端子レス化によって機器のさらなる小型化に大きく貢献します。たとえば、超小型アンテナ(例:株式会社MARUWA製 MNA4040)を使用することで、従来のMicroUSBコネクタ
    を使用した給電部の占有面積と比較して、面積比で50%(当社算出比)が可能です。

     
  2. マイコンレスで省スペース化を実現、ソフトウェア開発不要でシステム構築可能「ML7630」と「ML7631」は、受電と送電に必要な機能をそれぞれ1チップに統合しているため、マイコンレスでワイヤレス給電制御を実現することができます。そのためソフトウェア開発が不要なだけではなく、マイコンの実装スペース削減により小型化にも貢献します。充電電圧や再充電電圧などのカスタマイズは専用のPCツールから設定することが可能です。

     
  3. 多彩な機能でヒアラブル機器をサポート

    バッテリが空になっても動作を開始
    受電側の「ML7630」は、給電時に生成されるアンテナの磁界から電力を供給できるため、バッテリが空になっても動作を開始することが可能です。

    200mW出力のLDOと温度管理でLi-ion電池を充電
    「ML7630」には200mW出力可能なLDOを搭載しており、その出力に充電ICを使用することで、Li-ion電池への充電を行うことができます。加えて、内蔵の10ビットADコンバータとコンパレータによって、Li-ion電池で重要となる温度管理(温度検出、閾値管理)をプログラマブルに実施できるため、信頼性の高い充電制御を行うことが可能です。

    NFC Forum Type 3 Tag機能搭載
    「ML7630」にはNFC Forum Type3 Tag v1.0機能を搭載しており、スマートフォンなどのNFC搭載機器から、「ML7630」内のFlash ROMに書き込まれたTag情報を読むことができるため、画面操作やスイッチ操作が不要なNFCタッチによるBluetooth®のペアリングなどに対応することが可能です。
<開発サポート>
本チップセットには、簡単にワイヤレス給電の評価を開始できる「ML763x」評価キットをご用意しています。また、ユーザ個別の設定がPCから可能なコンフィグレーションツール、アンテナサポートに関するドキュメントも用意しており、様々な充電スタイルをサポートします。
■13.56MHzワイヤレス給電 (NFC)チップセット エンジニア向け 技術情報サイト (サポートサイト)
http://www.lapis-semi.com/jp/datasheet/wpt.html
■13.56MHzワイヤレス給電(NFC) (特設サイト)
http://www.lapis-semi.com/jp/semicon/wpt/landing/ml7630_31.html



【応用分野】
ウェアラブル機器、ヒアラブル機器

<用語説明>
※1:ヒアラブル機器(Hearable)
耳に装着するウェアラブル機器を示し、ワイヤレスヘッドホンやワイヤレスイヤホンなども含まれる。近年、スマートフォンと連携し高機能化が進んでいる。
※2:SoC(System on a Chip、システムオンチップ)
一般に、システムの動作に必要な機能を集積したIC。ここではワイヤレス給電に加えて、充電対応、温度管理などを1チップ化していること指す。
※3:NFC Forum Type3 Tag v1.0
NFC(Near Field Communication)とは、13.56MHzの周波数を使用して触れる程度の距離で通信する近距離通信技術、NFCフォーラムで仕様を定義している。Type3はその規格の一つ。

ロームグループのラピスセミコンダクタは、低消費電力技術、高周波回路技術、デジアナ混載技術、メモリ設計技術などを得意技術とし、これら技術でロジック、メモリ、表示ドライバといったLSI商品を創出しています。また、お客様が設計し当社の工場で製造するファンダリサービスも主軸の一つで、お客様の様々なご要求にお応えします。
「品質第一」を企業目的に掲げ、お客様のニーズを満足する商品を創出し、国内だけでなく世界規模でグローバル社会に貢献しています。

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