【名城大学】巨大地震から建物内の電力・通信ケーブルを守る新技術 ― 吊り式ケーブルラックの弱点を実大実験で解明し、簡易補強法の有効性を実証―

名城大学

巨大地震発生後は、建物の構造体が無事でも、天井や電気設備などの建築設備が損傷すると建物としての機能が長期間停止してしまいます。そのため、巨大地震発生後も建物を継続利用できる「レジリエンス(災害に強い社会)」の重要性が高まっています。 名城大学理工学部 建築学科の松田和浩教授らの研究グループは、建物内で電力ケーブルや通信ケーブルを支える吊り式ケーブルラック(図1)について、日本の耐震設計指針の妥当性を実大振動台実験 注1)によって初めて体系的に検証しました。その結果、耐震支持部材は十分な耐力を有している一方で、ケーブルラック本体が先に損傷することを明らかにしました。さらに、この弱点を補うため、鋼製ワイヤーを用いた施工性・経済性に優れた簡易補強法を開発し、その有効性を実験により実証しました。本成果は、様々な建物の設備被害低減や、災害時の事業継続(BCP)の実現に貢献することが期待されます。 本研究成果は、2026年7月1日にElsevier社の国際学術誌「Engineering Structures」 に掲載されました。 【ポイント】 ・日本の吊り式ケーブルラック耐震設計指針を実大振動台実験で初めて体系的に検証した ・地震では耐震支持部材ではなくケーブルラック本体が先に損傷することを解明した ・鋼製ワイヤーによる低コスト・施工性に優れた簡易補強法を開発し、高い補強効果を確認した 【詳細な説明】 1.背景 近年、巨大地震発生後も建物を継続利用できる「レジリエンス(災害に強い社会)」の重要性が高まっています。ケーブルラックは建物内の電力ケーブル・通信ケーブルを支える設備です。大規模施設ではケーブルを含めた重量が1mあたり100kgを超える場合もあり、地震によってケーブルラックが落下すると人命に関わる重大な危険を招くだけでなく、停電や通信障害を引き起こし建物全体の機能停止につながるおそれがあります。しかし、ケーブルラックの耐震性能については、これまで十分な実験的検証が行われていませんでした。 2.研究内容及び本成果の意義 本研究では、日本の耐震設計指針に基づいて設計された3種の実物大(10m超)吊り式ケーブルラックを製作し、大型振動台による加振実験を実施しました(図2)。さらに、耐震支持部材およびケーブルラック本体について静的載荷実験を行い、それぞれの力学特性を詳細に調べました。 その結果、 ・耐震支持部材は設計どおり十分な耐震性能を有すること ・地震時にはケーブルラック本体の変形が支配的となり、先に損傷すること ・ケーブルラック本体の補強が耐震性能向上の鍵となること を明らかにしました。 そこで、鋼製ワイヤーをケーブルラック内に配置する新しい補強方法を考案しました(図3)。一般的な斜めワイヤー配置では、途中でワイヤーが滑ってしまい十分な補強効果が得られません。本研究では1本のワイヤーが全領域で抵抗するように配線方法を工夫することで、ケーブルラック全体に効率よく補強効果を発揮させることに成功しました。補強後のケーブルラックは、日本の耐震設計で要求される耐震支持部材以上の耐力を示すことが確認されました。 3.今後の展開 本研究では、ケーブルラック本体が耐震性能向上の鍵となることを明らかにするとともに、その補強方法を提案しました。今後は、本補強方法のさらなる改良や設計法の構築を進めることで、建築設備の耐震性能向上と防災・減災への貢献を目指します。 【用語解説】 注1 実大振動台実験: 模型や縮小版ではなく、実物大の建物や構造物を巨大な振動台の上に実際に建て、過去の大地震や想定される巨大地震の揺れを実際に与えて耐震性能や崩壊過程を検証する実験のこと。 【掲載論文】 雑誌名: Engineering Structures タイトル: Verification of Japanese seismic design guidelines for suspended cable tray systems and proposal of a simple reinforcement method  (吊り式ケーブルラックシステムに関する日本の耐震設計指針の検証と簡易補強方法の提案) 著者名: Kazuhiro Matsuda, Eisaku Asatsuma, Kazuhiko Kasai, Huanjun Jiang  (松田和浩、浅妻栄作、笠井和彦、蒋欢军) 掲載日時: 2026年7月1日 DOI : 10.1016/j.engstruct.2026.122624 【著者のコメント】 建物の耐震化は大きく進んできましたが、地震後も建物を使い続けるためには、建築設備の耐震化も欠かせません。2011年の東日本大震災では、多くの建物でケーブルラックが損傷・落下し、建物機能に大きな影響を与えました。本研究では、実大実験によって日本の耐震設計指針の妥当性を検証するとともに、現場で実用化しやすい簡易補強方法を提案しました。研究成果が、様々な建物の防災力向上や、より安全・安心な社会の実現に役立つことを期待しています。(松田和浩教授) 【研究助成金】 本研究の一部は中国同済大学の地震工学国際共同研究所(International Joint Research Laboratory of Earthquake Engineering:ILEE)における、同済大学と日本の研究機関との共同研究プロジェクトの一環として実施されました。 【本件に関するお問い合わせ先】 ・研究内容に関すること  名城大学 理工学部 建築学科   教授 松田 和浩(まつだ かずひろ)   Tel : 052-838-2633   Email : matsuda@meijo-u.ac.jp ・広報担当  名城大学渉外部広報課   Tel : 052-838-2006   Email : koho@ccml.meijo-u.ac.jp ▼本件に関する問い合わせ先 名城大学渉外部広報課 住所:愛知県名古屋市天白区塩釜口1-501 TEL:052-838-2006 FAX:052-833-9494 メール:koho@ccml.meijo-u.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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