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芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)システム理工学部の木村元教授(量子情報システム研究室)らの研究グループは、開放量子系における緩和速度の普遍的な上限を証明し、量子力学の基礎理論とその応用に新たな光を当てる画期的な成果を発表しました。本研究は、開放量子系のダイナミクスにおける普遍的性質である「完全正値性」の実験的検証の可能性を示すとともに、量子コンピュータなどの次世代量子情報技術の実現を妨げる量子的性質の喪失(デコヒーレンス)の理解に重要な手がかりを与えることが期待されています。
この研究に関する詳細は、「Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical」誌(Volume 58, Number 4)に掲載されています。
ポイント
開放量子系における緩和速度の普遍的な上限を証明
量子力学の基礎理論における20年来の未解決問題に解答
量子情報処理や量子通信における基礎技術の開発に寄与
開放量子系で求められる普遍則を証明。20年来の未解決問題を解決
原子や素粒子の振る舞いを理解するための基礎理論である量子力学では、「シュレーディンガー方程式」が基本方程式として知られています。一方、周囲の環境(熱浴など)との相互作用を考慮する「開放量子系」では、いまだ多くの未解決の課題が残されています。
その一つが、「完全正値性」と呼ばれる性質の普遍性です。この性質の必要性については議論があり、実験的な検証もこれまで試みられてきました。特に、量子ビット系と呼ばれる比較的単純な量子系においては、2002年に木村教授自身がこの性質の検証可能性を初めて示しました。
しかし、「より一般的な量子系においても完全正値性が成立するのか」という問題は、長らく未解決のままでした。今回の研究では、あらゆる開放量子系におけるマルコフ過程の緩和速度が、ある普遍的な法則に従うことが理論的に示されました。これにより、今後この法則に反する実験結果が得られた場合、それが完全正値性の破れによるものか、あるいはマルコフ性の破れによるものかを判定する手がかりが得られるようになります。
なお、本研究は完全正値性を一般化した枠組みにおけるさらなる普遍則の解明へと発展しており、英国物理学会(Institute of Physics)が発行する国際的な物理学誌 Physics World の「Research Highlight」として紹介されています。
https://physicsworld.com/a/the-secret-limits-governing-quantum-relaxation/
手法
本研究では、すべての開放量子系において、緩和速度がある上限に制限されることを示し、この理論的枠組みを実験的に検証可能な形で提供しました。
研究チームは、量子チャネルが示す緩和速度の最大値が、ヒルベルト空間の次元で割った緩和速度の総和により上から制限されるという予想を厳密に証明しました。この証明には、古典力学のダイナミクス解析におけるリャプノフ指数の理論を応用し、量子チャネルの進化を詳細に解析することで実現しました。
量子を応用した技術へ——量子コンピュータの実現に向けて
今回の研究成果は、量子情報処理や量子通信における基盤技術の開発に貢献することが期待されます。量子コンピュータをはじめとする量子技術の実現においては、量子性の喪失が最大の課題となっていますが、本成果はあらゆるデバイスを用いた場合でも、その喪失時間を評価する手法として応用可能です。今後は実験的な検証を通じてさらなる応用可能性を探り、量子技術の発展を加速させることを目指します。また、量子力学の理論的限界を含む、量子物理学の理解をさらに深める研究を継続していきます。
論文情報
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1751-8121/adaa3f(オープンアクセス)
研究グループ(著者):ヘルシンキ大学(フィンランド) Paolo Muratore-Ginanneschi
芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 木村 元
ニコラウス・コペルニクス大学(ポーランド) Dariusz Chruściński
▼本件に関する問い合わせ先
入試・広報部 企画広報課
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メール:koho@ow.shibaura-it.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/