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【麻布大学】不育症の原因に亜鉛が関与〜妊娠の成立には子宮内膜の亜鉛が重要である〜

麻布大学

麻布大学(学長:川上泰、本部:神奈川県相模原市)獣医学部 動物繁殖学研究室の川田由以研究員(同大学大学院博士前期課程修了)、同獣医学部 影山敦子特任助教、野口倫子准教授、村上裕信准教授、寺川純平講師、伊藤潤哉教授、柏崎直巳教授らの共同研究グループは、マウス個体とマウス・ヒト子宮内膜細胞を用いた研究により、妊娠の最初のステップである胚着床には、子宮内膜細胞への亜鉛の取り込みが必須であることを初めて明らかにしました。本研究は、徳島文理大学薬学部病態分子薬理学研究室の深田俊幸教授との共同研究です。 現在、不妊症が大きな社会問題となっており、体外受精などの生殖補助医療技術が不妊治療として用いられていますが、出産に至る割合は低いことが知られています。その原因の一つとして不育症(妊娠は可能なものの流産や死産を繰り返す)が考えられており、胚の染色体異常などが原因として考えられていますが、母体側の要因は明らかになっていませんでした。また、必須ミネラルの一つである亜鉛が体内で不足すると妊娠しにくい状態をもたらすことが知られていましたが、亜鉛の詳細な役割も分かっていませんでした。 本研究グループは、母体側の亜鉛に着目し、子宮内膜細胞に取り込まれた亜鉛(イオン)が、女性ホルモンであるプロゲステロンの働きに欠かせないことをマウス個体とマウス・ヒト子宮内膜培養細胞を用いた解析により、世界で初めて明らかにしました。 この研究は、日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)、基盤研究(C)、新学術領域研究(全能性プログラム:デコーディングからデザインへ)、文部科学省私立大学ブランディング事業、麻布大学ヒトと動物の共生科学センターの助成による成果です。 本研究成果は、米国の国際学術誌「PNAS Nexus」に2025年2月10日付で掲載されました。 <研究のポイント(本研究で新たに分かったこと)> ・子宮内膜細胞で亜鉛輸送体ZIP10遺伝子を欠損したマウスでは、胚が子宮内膜に浸潤できない着床不全となり、結果として不妊となることが明らかになりました。 ・亜鉛輸送体ZIP10遺伝子を欠損したマウスでは、子宮の細胞で亜鉛の取り込みが障害され、妊娠維持に重要なプロゲステロンのシグナル伝達を行えないことが明らかになりました。 ・培養細胞を用いた研究から、マウスだけでなくヒトにおいても子宮内膜細胞内の亜鉛イオンがホルモン応答に重要なことを明らかにし、亜鉛が妊娠の成立と維持に欠かせない理由を分子レベルで解明しました。 <背景と目的>  近年、不妊症や不育症が大きな社会問題として取り上げられています。生殖補助医療技術が進むなかで、妊娠しやすい母体環境を整える重要性が指摘されています。体内で作ることができない必須ミネラルである「亜鉛」は、食事から取り入れる必要があります。亜鉛の不足が、妊娠しにくい状態をもたらすことは知られていましたが、亜鉛の詳細な役割は分かっていませんでした。研究グループは、子宮の細胞に亜鉛(イオン)を取り込む役目を持つ亜鉛輸送体ZIP10に着目し、子宮内膜細胞でZIP10を欠損したマウスの妊孕性や女性ホルモンに対する応答性について検討しました。 <結果と考察> 子宮で亜鉛輸送体ZIP10を欠損したマウスでは、胚着床の初期反応は認められるものの、胚が子宮内膜に侵入できず、結果として胎盤の形成が不完全となり不育症や流産といった不妊を引き起こすことが明らかになりました。その理由として、子宮内膜細胞でZIP10が欠損すると細胞内に亜鉛(イオン)が取り込まれず、妊娠の成立と維持に重要なプロゲステロンのシグナル伝達に異常をきたすことを明らかにしました。なかでも亜鉛(イオン)は、GLI1と呼ばれるZinc Finger転写因子の核―細胞質間輸送を制御していることが明らかになり、これはヒトの子宮内膜細胞でも同様であることを明らかにしました。 本研究結果は、妊娠を望む女性での「亜鉛」の摂取が、妊娠しやすい体づくりに重要であることを分子レベルで明らかにしたのものです。成人女性の多くは潜在的な亜鉛欠乏であるとする研究報告もあり、本研究は妊娠における亜鉛の重要性を改めて見出したものです。 <掲載論文> 掲載誌:PNAS Nexus 論文リンク: https://academic.oup.com/pnasnexus/advance-article/doi/10.1093/pnasnexus/pgaf047/8006602 原題:Endometrial zinc transporter Slc39a10/Zip10 is indispensable for progesterone responsiveness and successful pregnancy in mice. 和訳:子宮内膜にある亜鉛トランスポーターSlc39a10/Zip10は、マウスにおいてプロゲステロン応答と妊娠成立に不可欠である 責任著者:寺川 純平(獣医学部比較毒性学研究室) 伊藤 潤哉(獣医学部動物繁殖学研究室、ヒトと動物の共生科学センター) <参考情報> ●麻布大学について 麻布大学は、2025年に学園創立135周年を迎えます。動物学分野の研究に重点を置く私立大学として、トップクラスの実績を基盤に新たな人材育成に積極的に取り組んでおり、獣医学部(獣医学科、獣医保健看護学科、動物応用科学科)と生命・環境科学部(臨床検査技術学科、食品生命科学科、環境科学科)の2学部6学科と大学院(獣医学研究科、環境保健学研究科)の教育体制の下、ヒトと動物のよりよき関係をつなぐ専門性の高い人材育成を進めていきます。 麻布大学の概要: https://www.azabu-u.ac.jp/about/ ▼本件に関する問い合わせ先 事務局 入試広報・渉外課 中山、檜垣 住所:神奈川県相模原市中央区淵野辺1-17-71 FAX:042-754-7661 メール:koho@azabu-u.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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