【京都産業大学】細菌の薬剤耐性化の原因となる新たな因子とその発現メカニズムの発見!国際学術誌 『Nucleic Acid Research』に掲載



京都産業大学、筑波大学などからなる研究グループは、幅広い抗菌薬に対する耐性(ARE(antibiotic resistance))に関係するタンパク質であるcplR遺伝子がディフィシル菌の抗菌薬耐性を上昇させること、また、抗菌薬に応答してcplR遺伝子の発現が調節されているメカニズムを明らかにした。




薬剤耐性菌は私たち人類にとって大きな脅威であり、薬剤耐性菌を制御するためには、薬剤耐性機構の理解が必要不可欠である。抗菌薬の効かない薬剤耐性菌の出現は、世界中で深刻な問題となっており、何も対策を講じなかった場合、2050年には薬剤耐性菌が原因で1000万人もの人が亡くなるとの試算がある(O'Neill, 2014)。
抗菌薬に対する耐性の発現に関係するタンパク質のARE-ABCF※1は、多くの細菌が有しているが、それぞれの生物で見いだされるARE-ABCF遺伝子配列は多様であることから、その多様性と薬剤耐性の関連については、これまで十分に解明されていなかった。
本研究グループは、ゲノム情報を駆使したバイオインフォマティクス※2によって、ディフィシル菌※3が持つARE-ABCF遺伝子(cplR)が、リンコサミド系とプレウロムチリン系の抗菌薬に対する薬剤耐性を媒介することを明らかにした。また、ディフィシル菌がcplRと同時に、可動性因子であるトランスポゾン上にコードされる薬剤耐性遺伝子ermBを持つことによって、相乗的にリンコサミド系薬剤に対する耐性が上昇することを発見。さらにcplR遺伝子の発現が、抗菌薬に応答して誘導されるメカニズムを明らかにした。CDIは、ディフィシル菌が高い抗菌薬耐性を持つために発生するもので、多くの場合、抗菌薬の投与によって発生し、慢性感染や院内感染の原因となる。特にリンコサミド系抗菌薬の投与によりディフィシル感染症が引き起こされることが示されており、ARE-ABCFおよびその遺伝子発現制御機構を標的とした予防・治療薬の開発が期待される。

この研究は、JST戦略的創造研究推進事業(ERATO)、JST戦略的創造研究推進事業(ACT-X)、科研費の研究プロジェクトの一環として実施され、成果は2023年3月23日(世界時)に、国際学術誌 『Nucleic Acid Research』に掲載された。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

■用語解説

※1 ARE-ABCF(ATP-binding cassette (ABC)-F protein subfamily)
幅広い抗菌薬に対する耐性(ARE(antibiotic resistance))に関係するタンパク質で、多くの細菌が有しており、院内感染の原因として知られている。

※2 バイオインフォマティクス
バイオ(生物学)とインフォマティクス(情報学)が融合した分野。大量のゲノム配列などの情報を、計算機を用いて情報学的に解析する手法。

※3 ディフィシル感染症(Clostridioides difficile infection: CDI)
抗菌薬使用などによりディフィシル菌が増殖して常在腸内細菌叢が撹乱され、下痢などを発症する感染症。高い抗菌薬耐性を有することから、抗菌薬投与から生き残ることができる。

<関連リンク>
・筑波大学 細菌の薬剤耐性化の原因となる新たな因子とその発現メカニズムの発見
 https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20230327141500.html
・京都産業大学 細菌の薬剤耐性化の原因となる新たな因子とその発現メカニズムの発見
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20230327_345_release_ka01.html



▼本件に関する問い合わせ先
京都産業大学 広報部
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