新米コンテスト参加やプログラミング炊飯器を活用したSTEAM※1教育に参画
~Panasonic Cooking@Lab炊飯部の歴史と次世代への継承~
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社(以下、くらしアプライアンス社)は、1956年にパナソニック(旧松下電器産業株式会社)として初めて「電気自動炊飯器」を発売して以降、1979年マイコン式、1988年IH式と業界初の技術を採用するなど炊飯器の進化を通じて、常に米のおいしさを追求しています。
農林水産省の調査によると、人口減少等の背景から米の主食需要は年々低下
※2し、“米離れ”が顕在化しているものの、産地品種銘柄米は年々増加傾向にあります。
※3くらしアプライアンス社では、炊飯器の開発に携わり、米飯食味評価精度試験適正者
※4に認定された社員が全国で開催されている新米などを評議するコンテストに審査員として参画。産地品種銘柄米の発展に関わるなど、日本の米文化継承にも一役買っています。
さらに、小学生などを対象としたプログラミング授業として、独自のプログラマブル炊飯器
※5(非売品)を開発し、「おいしいごはんとは何か」を自分たちで考え、炊飯器のプログラムを作り、炊き上げて、それを体験・評価する講義を行っています。実生活と結びつけたパナソニックならではのプログラミング講義を通じて、試行錯誤する機会を与え、生活の豊かさや新たな気づきを増やすことを目的にしています。
多様化するライフスタイルにおいては、時短や効率を重視することが増え、炊き立てのおいしいごはんは、もはや“贅沢品”と言える側面もあります。パナソニックは、常に最高のおいしさを追求し続けるとともに、引き続き、日本の米文化をハードとソフトの両輪から支えていきます。
※1 ※STEAMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念です。
※2出典:農林水産省農産局 「米の消費及び生産の近年の動向について」 (令和6年3月発表)、農林水産省農産局「米をめぐる状況について」(令和6年3月発表)
※3出展:農林水産省「稲、麦、大豆の種子をめぐる状況」(令和6年8月発表)
※4 一般社団法人 日本精米工業会 認定
※5 自分自身で考えた炊飯プログラムをIoT機能を活用して機器に送信し、実際に炊飯できる炊飯器
米文化の継承に挑戦するのは、くらしアプライアンス社で調理家電の開発・企画に携わる、調理機器ビジネスユニット傘下のPanasonic Cooking @Lab炊飯部に所属し、炊飯器の調理ソフト開発を行う社員です。
Panasonic Cooking@Labは、
“おいしさを科学し、食卓に笑顔と感動をお届けする”というミッションの下、キッチン空間全体の統一性、くらしの豊かさの維持向上を目指し、炊飯器・調理器・オーブンレンジ・IHクッキングヒーター・冷蔵庫の調理ソフト開発を担う専門メンバーで構成された研究チームです。
“おいしさを科学する”とは、食材ごとの“真のおいしさ”を引き出せるよう、おいしさを数値化するなど科学的な視点で実験や研究を重ねることです。その結果をベースに、調理家電に備わる調理ソフトを開発して、誰もが簡単においしいを実現しています。研究内容は外部にも評価され、各地の研究機関から相談も寄せられています。
<炊飯のデータ蓄積の過程で築いた“感性と経験”を活かし、コンテストの審査員を担う>
どの品種で炊いても“おいしい”を引き出すことが、「おいしさを科学する」というミッションの体現につながると考え、毎日のように米を炊きながら膨大なデータを積み重ねています。
その研究で培った知見と経験によって、一般社団法人日本精米工業会の米飯食味評価制度試験に合格。「米飯食味評価精度適正事業所」として認められ、炊飯部に所属する社員は評価適正者に認定されています。数多くの品種を炊飯し、食べ比べる中で磨かれた味覚に加えて、見た目や手触りでの判断を含めた「感性と経験」を活かし、日本全国の銘柄米コンテストに審査員として参画しています。
<米-1グランプリinらんこし 向山実行委員長のコメント>
本大会が広く認知され、長く愛され続けているのは、パナソニックさんの協力があってこそ、と思っています。どんなお米でもおいしく炊き上げる炊飯器を追求するパナソニックさん、どんな炊飯器でもおいしいく炊きあがるお米を追求する米-1グランプリ、この2つが交わる先に究極のごはんがあると考えており、開発チームのおいしいごはんを追求する姿勢と、米-1グランプリの目的は重なるものがあります。食味計を使わず全ての審査を経験と感性に基づく官能審査で行うことにこだわり、より消費者目線で今後もおいしいお米を追求していきます。パナソニックさんの炊飯器はお米がおいしく炊きあがりすぎてしまうので、審査員の皆さんは採点が大変だと思います。加古さんはじめ、チームの皆さんの舌には叶いませんし、皆さんが開発された製品も信頼しています。
<おいしいごはんを炊く鍵を握るプログラミング技術を用いた食育を次世代へ>
炊飯器にとってプログラミング技術は、おいしいごはんを炊く鍵を握る重要な技術です。炊飯器では、米の品種ごとなど、様々な炊き方パターンをプログラミングすることで、“どの米を誰が食べてもおいしいごはん”を実現しています。近年は、その技術を活かし、研究用に特殊加工を施したプログラマブル炊飯器
※5(非買品)を用いて、食育を目的としたプログラミング授業を日本各地の小学校や中学校、大学などで行っています。
かつては“ライスレディ”という愛称で活動。炊飯部の歴史と次世代への継承 |
炊飯器の調理ソフト開発に携わる社員は、かつて“ライスレディ”という愛称で親しまれ、1979年の発足から45年間にわたり、23名のメンバーが技術を繋いできました。調理科学や栄養学を学ぶ学生は女性が多かったという背景から、技術開発職としては発足当時より珍しく女性が多い職場でしたが、これまで男性社員も“めし炊き王子”として一緒に開発に励んできました。現在は、ベテランと若手、合計4名のメンバーが研究開発に励んでいます。
<ライスレディの誕生背景>
65年前、当時の電気炊飯器は発火力が弱いという課題があり、「便利だけどおいしくない。ガスやかまどの方がおいしい」という声は少なくありませんでした。「おいしいごはんってなに?」を科学的に追求することを目的に、調理科学に長けた人材を雇用し始めたことがきっかけで、かつてのライスレディは誕生しました。江戸時代から伝わる歌としても有名な米をおいしく炊くコツ“はじめちょろちょろ中ぱっぱ”を本格的に検証しはじめたことが、現在も受け継がれるPanasonic Cooking@Labのミッション
“おいしさを科学する”の先駆けです。その結果、炊飯のノウハウと細かな高火力制御を実現するIH加熱という技術が合わさって、1988年、電気炊飯器に大きな革命を起こすことになりました。
<ライスレディOGと現役リーダーが語る“今だから伝えたいこと”>
ライスレディ(現炊飯部)OG堀内美和氏 1988年入社(2021年退社)
ライスレディの一員となって、まずIH炊飯器1号機の初期開発に携わりました。入社後、新製品として完成したIH炊飯器を初めて目にした時、無からアイデアを出し、どう動 かすかのソフトを搭載して製品に仕上げていく、ものづくりの一連の面白さを感じました。
先輩から調理ソフト開発は特殊ゆえ、退職しても他に生かす仕事はあまりないと言われましたが、特殊だからこそ「強み」にもなると感じています。時代の変化に食文化の変化はつきものですが、「調理して食べる」行為は生きている限り続くため、現役の皆さんには、その一連の流れに真剣に向き合う「調理ソフト開発」という仕事に誇りを持ってほしいですね。
<調理ソフト開発技術の継承、令和のライスレディはどう考える?>
私は入社以来30年以上、先輩や同僚と同じ釜の飯を食べ、議論を重ねて「おいしいごはん」を追求してきました。炊飯の理化学的解析や嗜好の変化の調査を通して分かったことは、おいしさの定義はいつも同じではないということ。その変化を、若手のメンバーにも“市場と呼吸する“ように感じてほしいと思い、私自身が経験を積ませてもらったのと同じように、コンテストや授業など積極的に社外で活動してもらっています。お客様、生産者、専門家など、様々な人のごはんにかける想いを吸収し、自分のスタンスを作り上げ、世界中に胸を張って自慢できる商品を開発し、「おいしいご飯」実現への想いを伝えてほしいです。
私たちの「おいしいごはん」を炊き上げる仕事は、お米に関わる多くの方々の熱い想いを最終アンカーとしてお客様に届けることだと、生産者や専門家に話を聞く度に強く感じています。開発で悩んだ際は、「市場の声を第一に信じて大丈夫!」という上司の励ましが自信となり開発に活かされました。社内に籠って開発に向き合うだけでは良い商品は生まれないという、これまで様々な方とのヒアリングを大切にしてきた先輩方からの教えを受け継いできました。今後ますます先輩方の礎を大切に、世界中のより多くのお客様に「ごはんが心からおいしい!」と思っていただける炊飯器の開発に勤しみたいです。
「おいしいごはん」が不変でないということを、お客様との対話やプログラマブル炊飯器の授業の中で実感しています。生産者さんや専門家の方とお話しすると、よいお米をおいしく食べてほしいという強い思いやこだわりを痛感します。どのご家庭でもおいしく炊ける炊飯器を、自信をもって世に出したいと日々開発に注力しています。先輩方の築き上げてきた経験を活かし、市場の変化にフィットするごはんを提案していきたいです。
入社2年目なので、お米の奥深さ、炊飯器の面白さを実感する日々ですが、生産者や専門家の方から学ぶだけでなく、プログラマブル炊飯器の授業などを通して、炊飯へのこだわり、技術を継承していく活動にも力を入れていきたいです。また、炊飯器開発の長い歴史の中で培ってきた技術や知識を日々吸収しながらも、これからの食生活に合った新しい「おいしさ」も取り入れ、柔軟な考えを持ちながら開発に携わっていきたいです。
くらしアプライアンス社は、
「100年育んできたくらしに寄りそう力で、人と地球の未来に続く、感動の商品とサービスを創造する」というビジョンの実現に向け、今後も日本の生活環境に最適な製品を提供し続けることで炊飯器及び米文化の普及拡大に努め、日本の未来のくらしを支えていきます。