膵がん患者の予後にケストースが好影響を与えることを示唆

ケストースを用いた食事療法が乱れた腸内細菌叢を改善し、膵がんの新たな治療法へつながる可能性

藤田医科大学(愛知県豊明市)消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス学講座(廣岡芳樹教授)は、ウェルネオシュガー株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:山本貢司)と共同で、膵がん患者に対するプレバイオティクス※1の有用性を確認する研究を行いました。
膵がんと診断された患者のうち化学療法に反応するのは半数以下しかありません。その一因として、膵臓がん患者の腸内細菌叢は健常者のそれと大きく異なり、腸内細菌叢の乱れが化学療法の効果に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。そこで研究グループは、腸内細菌叢を改善するプレバイオティクスの代表格で、さまざまな疾患に効果を発揮することが報告されている「ケストース」を膵がん患者に12週間投与。その結果、ケストースが腸内細菌叢を改善し、予後に関わる要因に好影響を与えることが示されました。今後、より大規模かつ長期的な研究により、膵がん患者の予後改善に向けたケストースの効果検証が期待されます。
本学とウェルネオシュガー社は本研究成果について現在、特許を申請しており、将来的には藤田医科大学が行っている膵がんの最先端治療と、ケストースを用いた食事療法を組み合わせることで、病気の改善および予防に寄与していきたいと考えます。

本研究成果は2024年8月29日、栄養に関する国際科学ジャーナル「Nutrients」(オンライン版)に公開されました 。
論文URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/16/17/2889


<研究成果のポイント>
  • ケストースが腸内細菌叢を改善し、膵がん患者の予後に関わる要因に好影響を与えることが示唆された
  • フルクトオリゴ糖であるケストースを12週間にわたり1日9g投与した膵がん患者で、腫瘍マーカーCA19-9が有意に減少
  • 好中球とリンパ球の比率(NLR)が低下し、炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)増加が抑制
  • 血清アルブミンの減少が抑制され、栄養状態の改善が確認された 
  • 膵がん患者で増加している大腸菌が、ケストースの摂取により顕著に減少
  • 将来的には、ケストースを用いた新たな膵がんの治療法の確立につながる可能性が期待される


<背 景>
膵がんは予後が非常に悪く、診断時には多くが進行しており、化学療法に対する反応率も低いため、治療が困難ながんの一つです。膵がんの進行や治療効果には腸内細菌叢が深く関与していることが示唆されており、新たな治療アプローチとして腸内環境の改善が注目されています。


<研究方法>
今回の研究は、フルクトオリゴ糖であるケストースが膵がん患者に与える臨床的な効果を検討するためのランダム化されたパイロット試験です。
本研究では、膵がん患者を対象に、ケストースを12週間にわたり1日9g投与したグループと、非投与グループに分け、両グループの血液マーカー(CA19-9、NLR、アルブミン、CRP)、画像検査、身体所見、および腸内細菌叢の変化を比較・評価しました。腸内細菌叢の変化は、とくに大腸菌の量に注目して分析しました。
研究の結果、ケストースを12週間摂取したグループでは、腫瘍マーカーであるCA19-9の有意な減少や、好中球とリンパ球の比率(NLR)低下が確認されました。さらに、栄養状態の指標である血清アルブミンの減少が抑制され、炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)の増加も抑えられるなど、体内の炎症状態や栄養状態の改善が見られましたまた、膵がん患者で増加傾向がある大腸菌が、ケストースの摂取によって顕著に減少しました。これらの結果は、ケストースが腸内細菌叢を整え、膵がんの予後に関連する重要な要因に好影響を与える可能性を示しています。

<今後の展開>
ケストース の膵がん治療における効果をより詳細に検証するためには、大規模かつ長期的な臨床試験が必要です。将来的には、ケストースのようなプレバイオティクスの活用による腸内細菌叢改善を通じて膵がんの治療効果を高め、化学療法の反応性を向上させる新しい治療アプローチが期待されます。これら腸内環境の調整を含めた包括的な治療が、膵がん患者の予後改善に寄与する可能性があります。

<用語解説>
※1 プレバイオティクス
体に存在する良い効果を発揮する菌を選択的に増やす食品成分。オリゴ糖・食物繊維など。

<文献情報>
●論文タイトル
Efficacy of 1-Kestose Supplementation in Patients with Pancreatic Ductal Adenocarcinoma: A Randomized Controlled Pilot Study

●著者
中岡和徳1、大野栄三郎1、倉満健人1、葛谷貞二1、舩坂好平1、栃尾巧1・2、藤井匡2、髙橋秀昂1、近藤修啓4、宮原良二1、橋本千樹3、廣岡芳樹1

●所属
1 藤田医科大学 医学部 消化器内科学
2 藤田医科大学 医学部 医科プレ・プロバイオティクス講座
3 藤田医科大学ばんたね病院 消化器内科 
4 ウェルネオシュガー株式会社

●掲載誌
Nutrients

●掲載日
2024年8月29日(オンライン版)

●DOI
10.3390/nu16172889
本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

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組織名
学校法人藤田学園
ホームページ
https://academy.fujita-hu.ac.jp/
代表者
星長 清隆
資本金
19,209,900 万円
上場
非上場
所在地
〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98
連絡先
0562-93-2800

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