日本の経営者の55%がサステナビリティの課題と経営戦略を結びつける構えを示すものの、実効性のあるアクションの着手はグローバルに後れを取っていることが明らかに
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一、以下「デロイト トーマツ」)は、デロイトが27か国、約2,100名の企業経営者を対象に実施した、サステナビリティに関する取り組みや意識に関する調査について、日本の経営者139名の回答結果との比較をまとめた「2024年CxOサステナビリティレポート日本版」を発表します。今回の調査結果からは、日本の経営者は気候変動などのサステナビリティの課題に関して、ビジネスモデルの変革を戦略の中核に据える割合がグローバルの経営者よりも高く、ビジネスにより直接的な変化をもたらすメリットを求めていることが明らかになりました。一方で、目に見える変化に繋がるアクションへの着手は、グローバルに後れを取っていることもわかりました。
調査結果の主なポイントは以下の通りですが、詳細は下記からご覧ください。
「デロイト 2024年 CxOサステナビリティレポート 日本版」
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/news-releases/jp-2024-sustainability-report.pdf
【主な調査結果】
■日本の経営者の55%は、ビジネスモデル変革をサステナビリティ対応における戦略の中核に据えている
直近1年間において、日本とグローバルともに8割以上の経営者が、サステナビリティ投資を若干または大幅に増加させている(図表1)。サステナビリティの課題に対するアプローチとしては、「気候変動などのサステナビリティの課題に対応するためにビジネスモデルを変革していくことが自社戦略の中核である」と回答した経営者の割合が、日本は55%で、グローバルを10ポイント上回った(図表2)。サステナビリティ対応と、ビジネスモデル変革などの経営戦略を結びつけて考える経営者の割合が、グローバルと比較して高いことがわかった。
図表1:この1年にサステナビリティへの投資がどのように変化したか
図表2:サステナビリティの課題に対する取り組み姿勢
■目に見える変化に繋がるアクションへの着手は、グローバルに後れを取っている
日本の経営者が、自社のサステナビリティの取り組みの一環として既に講じているアクションの上位は、よりサステナブルな原材料の利用や自然再生プロジェクトの実施など、比較的着手しやすいものが多い。それぞれのアクションに取り組んでいる割合はグローバルをややリードしている。一方で、実行が非常に困難だが、目に見える変化に繋がるアクションの上位は、総じてグローバルよりも講じている割合が低い。これらのアクションは、役員報酬とサステナビリティの実績の連動、気候変動の影響に対応する強靭なサプライチェーンの再構築、気候に配慮した商品・サービスの開発など、ビジネスモデル変革に結びつくものが多く、戦略に対してアクションが追いついていない状況がうかがえる。(図表3)
図表3:自社のサステナビリティの取り組みの一環として既に講じているアクション(▲▼は昨年比5%以上の増減)
■日本の経営者は、サステナビリティの取り組みに対して、事業や収益に対するメリットを今後に期待している
日本の経営者が今後5年間でサステナビリティの取り組みに期待するメリットの上位は、サプライチェーンの効率化や既存ビジネスからの収益などであり、いずれもグローバルが期待する割合を上回っている。今までのメリットの上位には、ロイヤルティや従業員のウェルビーイングなど、ブランディング観点でのメリットが含まれていたが、ビジネスにより直接的な変化をもたらすメリットへと期待がシフトしている。(図表4)
図表4:サステナビリティの取り組みから得られるメリット(▲▼は昨年比5%以上の増減)
デロイト トーマツ グループ パートナー Sustainability&Climate Virtual Business Unit Leader
岩村 篤
今回の調査では、日本の経営者は経営戦略としてのサステナビリティ対応への感度が高く、サステナビリティ投資にも積極的であるという結果が見られた。一方で目に見える変化に繋がるアクションへの着手はグローバルに後れを取っており、実際には取り組みやすいものに着手して満足している可能性がある。
事業・インフラ・サプライチェーンの再構築や、気候に配慮した新商品・サービスの開発など、実効性のあるアクションは中長期での取り組みや大きな投資が必要になるためにハードルが高い。しかし、グローバルが先行してこれらのアクションにおける成果を生み出すようになると、日本の国際競争力低下に繋がる可能性があり、サステナビリティの実現と競争優位性の両観点から、これらのアクションを避けて通ることはできない。
サステナビリティ対応を単なるCSR活動として捉えるのではなく、事業や収益と直結する経営戦略として捉えるところまで視座が上がってきているのは良い兆候であり、今後は戦略に基づき実効性のある取り組みが展開されることに期待したい。
Sustainability&Climate Virtual Business Unit(S&C VBU)とは
デロイト トーマツ グループではS&C領域において、グループ全体のシナジー強化を目指し、様々なプロフェッショナルが連携する事業横断の組織を設置しています。気候変動やサステナビリティの幅広い領域でクライアントの課題を解決するために、知見の集約および活用をしています。S&C VBUではプロフェッショナルがそれぞれの強みを融合させることで、より高度化したワンストップのサービスを提供します。
・詳しくはこちら
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/topics/sustainability-and-climate.html?icid=wn_sustainability-and-climate
・デロイト トーマツ グループのS&C関連サービス
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/sustainability-and-climate/services.html
【調査方法】
本レポートは企業経営者2,103名(うち日本の経営者は139名)に対する調査を基にしています。調査はKS&R Inc.とデロイトによって2024年5月から6月にかけて実施されました。調査対象の回答者は27カ国にわたり、46%が欧州/中東/南アフリカ、26%が米州、28%がアジアパシフィックです。全ての主要業界をサンプル抽出すると共に、KS&Rとデロイトは一部の世界の業界リーダーに対して一対一の面談を実施しました。
・Deloitte 2024 CxO Sustainability Report
https://www.deloitte.com/global/en/issues/climate/cxo-sustainability-report.html