今後の展開
本研究により、SCA27Bにおけるリピート配列、およびリピート数と疾患の関連が明確になりました。本疾患の遺伝学的理解が深まるとともに、SCA27Bの正確な遺伝学的診断のために有用な情報(リピート数のみでなく、リピート伸長を構成している配列を確認する必要性)を提供するものです。
研究費
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業「未到達領域のロングリードジェノミクス:未解決症例の解明(研究代表者:松本直通)」、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「運動失調症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究班」、日本学術振興会、武田科学振興財団、および横浜市立大学の支援を受けて実施されました。
論文情報
タイトル:Complete nanopore repeat sequencing of SCA27B (GAA-
FGF14 ataxia) in Japanese
著者:Satoko Miyatake, Hiroshi Doi, Hiroaki Yaguchi, Eriko Koshimizu, Naoki Kihara, Tomoyasu Matsubara, Yasuko Mori, Kenjiro Kunieda, Yusaku Shimizu, Tomoko Toyota, Shinichi Shirai, Masaaki Matsushima, Masaki Okubo, Taishi Wada, Misako Kunii, Ken Johkura, Ryosuke Miyamoto, Yusuke Osaki, Takabumi Miyama, Mai Satoh, Atsushi Fujita, Yuri Uchiyama, Naomi Tsuchida, Kazuharu Misawa, Kohei Hamanaka, Haruka Hamanoue, Takeshi Mizuguchi, Hiroyuki Morino, Yuishin Izumi, Takayoshi Shimohata, Kunihiro Yoshida, Hiroaki Adachi, Fumiaki Tanaka, Ichiro Yabe, Naomichi Matsumoto
掲載雑誌:Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry
DOI:
https://doi.org/10.1136/jnnp-2024-333541
用語説明
*1 小脳失調症:主に小脳と呼ばれる脳の一部の障害によって、歩行時のふらつき、四肢の協調的な運動の障害、ろれつが回らない、物が二重に見えたりめまいを感じたりする、などの症状をきたす疾患群。
*2 リピート伸長病:特定の塩基配列の繰り返し(リピート配列:多くは3から6塩基の反復ユニット配列で、ショートタンデムリピートとも呼ばれる)が正常範囲を超えて異常に伸長することで引き起こされる疾患群。現在60種類程度の疾患関連リピート伸長配列が発見されているが、その多くは神経筋疾患の原因になることが分かっている。リピート長がより長いほど、またはリピート配列が正常のパターンと異なって伸長しているような場合、病的であることが多いと考えられる。
*3 ナノポアシーケンサー:1分子のゲノムDNA配列の解析が可能なオックスフォード・ナノポア社のロングリードシークエンサー。ナノポアとよばれるタンパク質の穴を、モータータンパク質を付加したDNA分子が通過する時に、ナノポアが埋め込まれた人工膜を流れる電流値の変化によって、DNAの塩基配列をリアルタイムに解析することができる。