今後の展開
本研究では、「かかりつけ医療機関」の質と「へき地度」に関連がないことを明らかにしました。この結果は「へき地」においても「かかりつけ医療機関」の質は都市部と同様である可能性を示唆するものです。今後は、「へき地」と都市部の健康格差を生む要因の追求、また「かかりつけ医療機関」が健康格差解消に向けて実施している取り組みとその効果検証を行う予定です。
研究費
本研究は、JSPS科研費 若手研究(JP20K18847)、基盤B(JP24K02670)、横浜市立大学学長裁量事業 第5期戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」の支援を受けました。
論文情報
タイトル:Patient experiences in primary care do not differ according to rurality: a cross-sectional study
著者:Makoto Kaneko, Hironori Yamada & Tadao Okada
掲載雑誌:BMC Primary Care
DOI:
https://doi.org/10.1186/s12875-024-02397-2
用語説明
*1 かかりつけ医療機関:本研究では「体調が悪いときや健康について相談したいときに、いつも受診する医療機関はありますか?はい/いいえ」について「はい」と答えた医療機関を「かかりつけ医療機関」としている。
*2 へき地:「へき地」という言葉は医療資源の乏しい郡部を指す言葉として行政文書でも用いられており、英語のruralに対応する言葉として本研究では「へき地」「へき地度」という言葉を用いている。ただ、「へき地」も”rural”もネガティブなニュアンスを含んで用いられる場合もあるものの、他に適切な用語が無いため使用されているという側面もあり、その点を鑑みて、本プレスリリースでは「」付きの「へき地」「へき地度」という表現を用いている。
*3 患者中心のプライマリ・ケア評価尺度(PCPCM):プライマリ・ケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)は、病気に至る前の状態での健康相談や予防医療など、幅広い領域にまたがる。その質の評価尺度PCPCM(Person-Centered Primary Care Measure)は、患者さんの視点からプライマリ・ケアの医療機関の質を評価する質問紙で、11項目という少ない質問数でプライマリ・ケアにとって重要な11の領域を評価できる点、プライマリ・ケアの質を国際的に比較できる点が特徴となっている。
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 金子惇講師(発表当時)らの研究グループがPCPCMの日本版を開発し、2022年5月に発表。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2022/202205kanekomakoto.html