緑豊かな島々が浮かぶ鳥羽の自然を取り込んだデザインへ
「鳥羽国際ホテル(三重県鳥羽市)」は 2024年3月に開業60周年を迎えリニューアルオープンしました。1964年の開館以降、半世紀以上に渡り「伊勢志摩の迎賓館」として、日本の皇室をはじめ国内外の賓客をお迎えしてきました。
この度、鳥羽湾のパノラミックな絶景と伊勢志摩ならではの食を体感いただけるテラスをはじめ、エントランスフロア・クラブラウンジ・客室のリニューアルを行いました。乃村工藝社は、複数エリアのリニューアルデザイン、FF&E、施工を担当し、これまで以上に魅力的な滞在体験とホスピタリティあふれる空間を提供しています。
今回のリニューアルはバイオフィリックデザインの考え方を取り入れ、自然の美しさや生命の多様性を尊重しました。ゲストがリラックスした状態で、空間を通して鳥羽の雄大な自然とのつながりを感じることができるようにとデザインしています。絶景を主役とし、内装には石灰岩や神代木など地産のマテリアルを使用したり、海の波紋や水の流れ、稜線、真珠層のモチーフを随所に散りばめています。
乃村工藝社は観光産業と連携しながら、中部エリアにおけるホスピタリティ施設・文化施設・公園などの空間づくりをお手伝いしています。これからも、クリエイティビティを発揮し、魅力あるまちづくりに貢献してまいります。
※バイオフィリックデザイン(Biophilic Design) : 「人間には“自然とつながりたい”という本能的欲求がある」というバイオフィリア(biophilia)の概念を反映した空間デザインの手法。この概念を空間デザインとして反映することにより、「幸福度の向上」などが期待できるとされている。(国土交通省より)
Design Concept : TOBA localization=情景の転換
幾重にも鳥羽の風土を重ね合わせ、穏やかな鳥羽の自然を潜在的に心へ浸透させる
パールオーシャンテラス(オーシャンウィング エントランスフロア)
パノラマティックな鳥羽湾の絶景と、変わりゆく自然との一体感を楽しめるテラス
ホテルが立地する鳥羽湾主水岬(もんどみさき)の突端に、遮るもののない海眺望をお楽しみいただけるアウトドアテラス。海につながっていくアプローチは、挙式のバージンロードとしても使用可能です。席は地表面より掘り下げてあるため、座っていただくと目線が下がり海や風に包まれる一体感をより感じていただけます。
オーシャンビュースイート・クラブ
真珠の海が一望でき、絶景と上質なひとときを体験いただける客室
部屋に入った瞬間に海が目に飛び込んでくる感動をそのままに、室内のどこにいても、海と空が溶け合う鳥羽ブルーの眺望を楽しめるようベッドやソファを配置しました。穏やかな波線とオーシャンブルー、ゆるやかな稜線とマウンテンブラウン、真珠層のパールレイヤーを基調にデザインしています。
ザ・ロビーラウンジ(オーシャンウィング エントランスフロア)
鳥羽湾の絶景を引き立たせ、自然素材をふんだんに使用した開放的なエントランスフロア
エントランスホール、フロント、「ザ・ロビーラウンジ」のインテリアデザインを全面リニューアル。ゲストの方を最初にお迎えする空間として鳥羽の風土を取り込んだマテリアルを使用しています。ホテルのコアマテリアルは、海や、真珠がとれる貝殻、砂岩である「ライムストーン」をイメージしています。床壁はタイル、フロントカウンター腰は本物のライムストーン(ジュライエロー)を使用し、フロントカウンターの背面は、金銀砂子細工 伝統工芸士 永井 聡による伊勢和紙アートで演出しています。カウンターの腰には石の割り肌仕上げにより、鳥羽の自然の力強さ柔らかさを表現しています。木材もすべて三重県産で、フロントカウンターの天板には姫小松、荷物置きには尾鷲檜を、バーカウンターの天板には栃ノ木を使用しています。面積を2倍に拡張した「ザ・ロビーラウンジ」では、南東2面の窓から広がる鳥羽湾の景色とともにスイーツなどをお楽しみいただけます。
当社担当デザイナー
コメント
鳥羽国際ホテルには、チャペルの改修から始まり、ホテル外観、和食レストランのリニューアルなど2014年から関わらせていただきました。今回の全館リニューアルでは、鳥羽の自然と呼応するデザインで、穏やかな風土のようにゆっくりとした時間を味わえるオーシャンリゾートを目指しました。
小関 伸吾
2005年乃村工藝社入社。西日本エリアの商業施設・ホテル・パブリック空間を中心にデザインを手掛ける。「物事は常にシンプルに」をテーマに、場の空気感や文脈などコンテクストを大切にした空間デザインを心掛けている。直近の実績は、ラグジュアリーホテル「TIAD, AUTOGRAPH COLLECTION」(2023年/愛知県・名古屋市)」。