摂南大学(大阪府寝屋川市)農学部農業生産学科の久保康之教授と小玉紗代助教らは、フランスのマルセイユ大学、国立農業・食糧・環境研究所(INRAE)のJean-Guy Berrin博士、Bastien Bissaro博士、金沢大学疾患モデル総合研究センターの西内巧博士らのグループとの共同研究により、ウリ科植物に感染し壊死病斑を引き起こす炭疽病菌について、菌体外に分泌する二種類の酸化酵素がペアになって植物の成分から長鎖アルデヒドを生成し、それが病原性関連遺伝子の発現につながる感染の仕組みを世界で初めて明らかにしました。
【本件のポイント】
●植物病原菌が分泌する二つの酸化酵素がペアになって植物の表層成分から長鎖アルデヒドを生成することを発見した
●長鎖アルデヒド生成が炭疽病菌の病気を引き起こす遺伝子群の発現を誘導する仕組みを世界で初めて解明した
●分泌性の酸化酵素ペアを標的とした新規防除薬剤の開発につながることが期待される
植物病原性のカビの仲間である炭疽病菌は植物の内部へ侵入するために、付着器と呼ばれる特殊な細胞を植物表面に形成し(図1)、針のような菌糸 (貫穿糸(かんせんし)) を植物に突き刺してさまざまなタンパク質を植物へと送り込むことで感染しようとします。
今回、炭疽病菌が貫穿糸形成直前の付着器から二種類の酸化酵素(アルコール酸化酵素=AlcOx、ペルオキシダーゼ=Perox)を分泌すること、二つの酸化酵素がペアになって植物表層の長鎖アルコールから長鎖アルデヒドを生成することを明らかにしました(図2)。
更に、感染過程での炭疽病菌の全遺伝子の発現解析を行った結果、酸化酵素ペアによる長鎖アルデヒドの生成が炭疽病菌の病原性に関わる遺伝子群の発現誘導につながることを世界で初めて解明しました。
また、これらの酸化酵素ペア(タンデム型)は植物病原菌に特異的に存在するため、今回の成果を基盤としてタンデム型酸化酵素を介した病原性発現機構を阻害する新たな防除薬剤の開発につながる可能性が期待されます。
本成果は2022年12月21日にオープンアクセス国際学術誌Science Advancesに掲載されました。
URL:
http://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ade9982
*本研究は日本学術振興会科学研究費(15H05780, 20H02989・久保、20K15529・小玉)の支援を受けて行われました。
▼本件に関する問い合わせ先
学校法人常翔学園 広報室
坂上、上田
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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