半導体による「Invented for life」:マイクロエレクトロニクスはボッシュのあらゆる事業分野における成功に不可欠
- ボッシュは、「IPCEIマイクロエレクトロニクスおよび通信技術」プログラム(欧州共通利益に関する重要プロジェクト)の一環として、2026年までに半導体事業に30億ユーロを投資
- ロバート・ボッシュGmbH取締役会会長シュテファン・ハルトゥング:「マイクロエレクトロニクスは未来そのものです」
- 新しい半導体チップ研究開発センターをロイトリンゲンとドレスデンに建設中
シュトゥットガルト、ドレスデン(ドイツ) ー 自動車、eBikeから家電製品やウェアラブル端末まで、半導体はあらゆる電子システムに不可欠です。半導体こそが現代のテクノロジーの世界を駆動する動力となります。高まる半導体の重要性をいち早く認識していたボッシュはこのたび、数十億ユーロを半導体事業の強化に投じると発表しました。ボッシュは、「IPCEIマイクロエレクトロニクスおよび通信技術」プログラム(欧州共通利益に関する重要プロジェクト)の一環として、2026年までに半導体チップ事業に30億ユーロを投資することを予定しています。「マイクロエレクトロニクスは未来そのものであり、ボッシュのあらゆる事業分野での成功に不可欠なものです。マイクロエレクトロニクスはすなわち、将来のモビリティや、IoT、そしてボッシュの『Invented for life』を体現するテクノロジーへのカギとなるのです」と、ロバート・ボッシュGmbH取締役会会長シュテファン・ハルトゥングは、ドレスデンで開催されたBosch Tech Day 2022で述べました。
ボッシュは総額1億7,000万ユーロ超を投じて、ロイトリンゲンおよびドレスデンにそれぞれ新しい研究開発センターを建設する予定です。さらに来年、ドレスデンのウエハ製造工場に2億5,000万ユーロを投じて、3,000平方メートルのクリーンルームスペースを増設する予定です。「ボッシュは半導体の絶え間ない需要増加に備えており、またお客様のメリットについても考慮しています。この微小な部品は、私たちにとって大きな事業になることを意味しているのです」、とハルトゥングは述べています。
欧州の競争力強化に向け、マイクロエレクトロニクスを推進
欧州連合とドイツ連邦政府は、欧州半導体法の枠組において、欧州のマイクロエレクトロニクス産業にとってロバストなエコシステムを発展させるために、追加の財政支援を提供しようとしています。全体的な目標は、2030年までに世界の半導体生産に占める欧州の割合を10%から20%に倍増させることです。新たに発足した「IPCEIマイクロエレクトロニクスおよび通信技術」プログラムは、主に研究と技術革新の促進を目的としています。ハルトゥングは、「欧州は、半導体産業における独自の強みを最大限生かすことが可能で、そうすべきです。これまで以上に欧州産業における特定ニーズに応えるためのチップ生産を目標とするべきでしょう。これは、ナノスケールレベルのチップに限定するものではありません」と述べました。たとえば、eモビリティ産業で使用される電子部品では、40~200ナノメートルのプロセスサイズが必要となります。ボッシュのウエハ製造工場は、まさにこのために設計されています。
ドレスデン工場における300mmチップ生産を大幅に拡大
このマイクロエレクトロニクスへの新たな投資は、ボッシュにとって新しい技術革新分野を開拓するものともなります。「最小の電子部品である半導体チップが、技術革新のリーダーになるきっかけになります」とハルトゥングは言います。自動運転車両の周囲360度をスキャンするレーダーセンサーなどのSoC(システム・オン・チップ)も、ボッシュの新しい技術革新分野に含まれます。現在、ボッシュではこうした部品を改善し、小型化・スマート化して、製造コストの削減を目指しています。また、コンシューマーエレクトロニクス分野に適用するよう、独自のマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)にさらに改良を加えています。このテクノロジーを用いて、現在ボッシュの研究者が開発しているものの一つに、スマートグラスのつる部分に組み込める超小型の新しいプロジェクションモジュールがあります。「MEMSテクノロジー市場におけるリーダーの地位を確立するため、300mmのウエハでMEMSセンサーを製造することも計画しており、生産開始は2026年を予定しています。私たちの新しいウエハ製造工場によって量産が可能になる強みを、今後も活かしていきたいと思います」とハルトゥングは述べています。
ロイトリンゲン工場のSiC(炭化ケイ素)への大きな需要
さらにボッシュが注力しているのが、新しいタイプの半導体の製造です。例えば、ボッシュのロイトリンゲン工場では2021年末からSiC(炭化ケイ素)チップを量産しています。このチップはSiCパワー半導体に使用されており、電気自動車やハイブリッド車の航続距離を最大で6%延長します。年間30%以上という力強い市場成長率を背景に、SiCチップの需要は高止まりしており、ボッシュへの注文はびっしりと埋まっています。こうしたSiCパワー半導体をさらに手ごろな価格、そして高効率にするために、ボッシュでは他のタイプのチップを使用することも模索しています。「eモビリティ用途向けに、窒化ガリウムをベースとしたチップの開発も検討しています。こうしたチップは既に、ノートPCやスマートフォンの充電器で使われています」とハルトゥングは語っています。車載用途には、さらにロバスト性を高め、最大1,200Vという非常に高い電圧に耐えられるようにする必要があります。「こうした課題に取り組むのも、すべてボッシュのエンジニアの仕事です。私たちの強みは、長年にわたりマイクロエレクトロニクスに精通し、そして車両についても熟知している、ということです」
半導体製造のための生産能力を計画的に拡大
ボッシュはここ数年、半導体事業への投資を継続してきました。その最たる例が、2021年6月にオープンしたドレスデンのウエハ製造工場で、ボッシュの歴史上単一の投資としては最大となる10億ユーロを投じています。ロイトリンゲンの半導体工場も計画的に拡張しており、2025年までに約4億ユーロを投じ、生産能力の拡大および、既存の建物内にクリーンルームスペースを増設することを計画しています。これにはロイトリンゲンでの拡張工事も含まれており、これにより3,600平方メートルの超近代的なクリーンルームスペースが増設される予定です。これらをすべて合わせると、ロイトリンゲンのクリーンルームスペースは、現在の約35,000平方メートルから、2025年末には44,000平方メートル以上に拡大する予定です。
専門知識と国際的なネットワークによって持続的な成功を確保
ボッシュは自動車業界における、半導体の開発と製造のリーディングカンパニーです。こうしたチップは車載アプリケーションのみならず、コンシューマーエレクトロニクス分野 でも活用されており、ボッシュはこの分野で60年以上に渡って貢献してきました。例えば、ロイトリンゲンの半導体工場では、150mmと200mmのウエハをベースとしたチップを過去50年間にわたり製造してきました。ドレスデン工場では、300mmのウエハをベースとしたチップの製造を2021年に開始しています。ロイトリンゲンとドレスデンでは、特定用途向け集積回路(ASIC)、MEMSセンサー、パワー半導体などを製造しています。また、マレーシアのペナンでは新しい半導体のテストセンターを建設中で、2023年より完成した半導体チップとセンサー類のテストを開始する予定です。