株式会社いちい(福島県福島市、以下「いちい」)、学校法人加計学園 岡山理科大学(岡山県岡山市、以下「岡山理科大学」)、東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、以下「NTT東日本」)は、完全閉鎖循環式陸上養殖のビジネス化に向けた実証プロジェクトを2022年1月21日より、開始します。
1 プロジェクトの背景と目的
昨今の海面漁業では、温暖化に伴う高水温化などの環境変動や世界的な魚介類に対する需要増加などのさまざまな要因が複合的に影響して、生産拡大余地のある漁場資源の割合は2017年時点で6%程度
※1と水産資源の枯渇が危ぶまれています。
また、日本国内の漁業・水産業界では高齢化や人手不足が深刻化しており、水産従事者・技術者の経験に基づく判断・作業が主流の従来の方法では、今後の水産業全体の活性化に向けて限界があります。
こうした状況を踏まえ、いちい・岡山理科大学・NTT東日本は、沿岸部・内陸部の場所を問わず生産可能で、ICT利活用による生産環境のマネジメントが可能な、完全閉鎖循環式陸上養殖のビジネス化を目指します。
また本プロジェクトは、国内外で人気の高い魚種(サケ・マス類
※2)のうち、「ベニザケ」を選定しています。ベニザケは病気に弱く、成長が遅いことが理由で、事業規模の養殖に成功しておりません。ICTによる生育環境管理体制の構築により、ビジネスベースで世界初
※3となるベニザケ養殖事業化を目指します。
※1 引用元:FAO 「The State of World Fisheries and Aquaculture(SOFIA)2020」
※2 地球温暖化に伴う海水温上昇により、日本周辺海域のサケ・マス類に適している水温の期間が短く、日本国内から放流した種苗が母川回
帰せず漁獲できないという問題が顕在化しており、今後の安定供給に向けては、生育環境の管理・コントロールが可能な陸上養殖での生
産強化が期待される。
※3 ビジネスベースでの「完全閉鎖循環式陸上養殖」×「ベニザケ」の取り組みが、当社調べで世界初。
2 プロジェクトの概要
本実証プロジェクトでは、岡山理科大学保有技術の好適環境水
※4・養殖ノウハウと養殖プラントシステム、NTT東日本グループの持つICTを組み合わせることで、ベニザケ生育速度の向上、生産に関わる作業の効率化・最適化・自動化、陸上養殖に最適な設備構築を検討・実証します。
また、生産段階のみの評価では終わらせず、水揚げ後の加工・流通・販売における評価も福島県内のいちい店舗での販売を通じて実施し、トータルバリューチェーン全体の観点からビジネス化に向けた評価・検討を行います。
※4 水産生物の効率的な陸上養殖を目的として開発された人工海水。海水中に含まれる成分のうち、魚の成長に必要なナトリウム・カリウ
ム・カルシウムに絞り込んで構成されている。塩分濃度も海水よりも低く調整されており、魚の浸透圧調整に関わるストレス軽減・消
費エネルギーの削減が見込まれ、浸透圧調整に使っていたエネルギーを成長に回せることで、一部の魚類で成長促進されることが確認
されている。
<具体的なイメージ>