人体認識技術を搭載した機器を設置し、ご家庭のテレビの視聴態勢「アテンションデータ」の取得・提供を行うTVISION INSIGHTS株式会社(所在地 :東京都千代田区、代表取締役社長 郡谷 康士、以下TVISION)は、2021年3月にTVISIONの調査パネルに対して行った、「印象に残ったCM」に関するアンケート結果と、CMの出稿や視聴状況を掛け合わせた分析結果を発表いたしました。
■印象に残ったCMと出稿量の関係
TVISIONでは、調査パネルに対し2021年3月に「好きなCMや印象に残ったCMは何ですか?」という自由記述式のアンケートを実施し、回収されたアンケート全2,889票に記載されたCMを企業ごとに集計、想起率を算出しました。まず、想起率とGRPの分布を見てみると下図のようになりました。(図表内に想起率トップ10の企業名を記載しています)<想起率とGRPの関係>
一般的にテレビCMの出稿量、すなわちGRP*を増やすと想起率が向上すると言われていますが、我々の調査でも印象に残ったCMトップ3社は、定常的に出稿量が多い通信キャリア大手3社(KDDI、ソフトバンク、NTTドコモ)となりました。
*GRPは、CMの出稿量をあらわす指標で、延べ世帯視聴率のこと。CM放送時点の世帯視聴率を分単位で足し上げたもの
■印象に残ったCM」の出稿企業トップ10
上記の分布図を見ると、GRPは多くないにも関わらず、想起率の高い企業があることが見てとれます。GRP以外のどんな要素が想起率に影響を与えるのかを探るため、「印象に残ったCM」トップ10の企業をランキングにしてみました。
<「印象に残ったCM」の出稿企業トップ10>
このランキングに、TVISIONが提供する独自の指標である、A-TRP、アテンション含有率、Cスコアを加えて比較してみると、いくつか興味深い点が明らかになりました。
- GRPが大きければ、想起率が高くなるというわけではない (特にランキング8位の日清食品は4,500GRP程度の出稿量にも関わらず、ランキング入りしている)
- 1GRPあたりにどのぐらいのアテンション(=注視の量)が含まれているかを測る指標「アテンション含有率」を見ると、10社中7社が全CM平均(12.1%)以上の含有率となっている
- 放送枠によらないクリエイティブのパワーを測る指標「Cスコア」を見ると、10社中8社が全CM平均(100)以上となっている
上記の点より、「印象に残るCM」の要因として、GRPだけではなく、ちゃんと注視を獲得できているかも重要であると言えそうです。
■クリエイティブパワー「Cスコア」が高いCMの特徴
また今回アンケートで想起されたCM全体を分析した結果、Cスコアが全CM平均(100)以上のCMには下記のような要素が含まれていることが分かりました。こういった要素をうまく組み合わせたクリエイティブを制作することで、Cスコアを高め、さらに想起率を向上させることができそうです。
*意識的に見てしまう要素*
「シリーズもの」「旬なタレント」「新キャラ」「会話」「共感」
*無意識的に見てしまう要素*
「音の強弱」「アップと引き」
■ランキング8位、かつ高いCスコアを記録した日清食品のCMをピックアップ
トップ10ランキングのなかで、アテンション含有率、Cスコアともに高得点だった日清食品のCMのうち、『どん兵衛「寝言」篇30秒』について、1秒ごとのCスコア推移を詳しく見てみます。
<Cスコア毎秒推移『日清食品 どん兵衛「寝言」篇30秒』>
本CMは、冒頭にどん兵衛のシリーズの音楽と吉岡里穂さんのアップを入れることで注視を獲得してました。セリフを入れる時には音楽を止めることでセリフを強調するという工夫がされており、ほら貝の音や星野源さんの大きな声を際立たせることで一気に注視を押し上げました。以降もアップや引きによる視覚の変化、音の有無による聴覚の変化をうまく利用していたCMといえます。
想起率上位のCMを見ると、「シリーズ化」することが重要な役割を果たしていそうです。ランキング上位のCMには「どん兵衛」以外にも、特定のキャラクターや世界観を表現したシリーズものCMが多数ランクインしており、こういった要素が想起率を高める特徴と言えそうです。
今回フォーカスしたCM以外にも、地上波で放送されたすべてのCMデータを取得しておりますので、その他気になるCMがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。