一般的なトラスよりも現しとして使用しやすく、専用設備も不要のため新規参入も容易に
カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)より、ディメンションランバーを用いた「山形トラス梁」の開発に関してご紹介します。
カナダウッドジャパンでは、ツーバイフォー工法用製材ディメンションランバーの新たな使用法の開発を行っています。開発を行っているものは、屋根構面や床構面などの水平構面と、耐力壁に代表される鉛直構面がありますが、その内の一つが「山形トラス梁」です。
日本は降雨が多いため、特に建物幅が大きくなる場合は切妻屋根にすることが多くあります。屋根勾配を最低3~4寸勾配以上確保できる場合は大スパンを支持するトラスを配置することができ、トラス梁の形状はさまざまなものが考えられますが、屋根面に沿って上弦材を、軒レベルに水平に下弦材を配置する「山形トラス梁」は切妻屋根に最もフィットすると言えます。
主に圧縮力および曲げ・せん断力を負担する上弦材は、数枚の2インチ材を材厚分だけ離して合わせて束ねた挟み梁形式とし、棟位置で屈折させることによって山形フレームを作ります。そして主に引張力を負担する下弦材は、上弦材と同様に数枚の2インチ材を挟み梁形式で構成し、屋根の外形と軒レベルの水平ラインとで大きな三角形を作ります。三角形の内部は、上弦材の中間部を圧縮束で支持し、この圧縮束を下弦材と頂部付近から降ろしてきた吊束で釣り合わせるフィンクトラスで構成しています。
上下弦材や吊束を複数の挟み梁形式とし、各接合部で奇数材と偶数材で交差するように部材構成を工夫することで接合部の混雑を解消でき、構成材の数を変えることで荷重やスパンの大小に対応できます。さらに、仕口や継手部分にはせん断面が多くできるため、多面せん断による効率的な応力伝達が可能になります。接合部には構造用ビスを用いれば、簡易なディテールで実現できます。木質構造における多面せん断はまだ理論的には確立されていませんが、実験によるせん断耐力の確認を行い、設計を進めています。
このように、「山形トラス梁」は木材を挟んで作る挟みトラス形式で、接続部をビスで留める多面せん断機構を持ち、ディメンションランバーの材厚が38mmという一般的に構造材としては弱点となりやすい点を強みに変えた構造となっています。
また、ディメンションランバーでトラスを組み立てる際、一般的にはメタルプレートコネクターと呼ばれる金属板をプレス成型した金物が用いられます。この工法は仕組みがシンプルで分かりやすいですが、金物が大きく露出するため、構造材を隠さず見せる「現し(あらわし)」として使用する際は美観的な点で工夫が必要です。加えて、メタルプレートコネクターを取り付けるには専門の設備が必要となり、新規参入には相応の設備投資がかかるなどの課題があります。一方で、「山形トラス梁」はメタルプレートコネクターが不要のため、これらの課題を解決し、木質構造の可能性を広げていくことが期待されます。
「山形トラス梁」の開発は2020年度に始まったばかりですが、ビス1本当たりの多面せん断強度の確認を行う実験を実施し、その強度をもとにプロジェクトが進行しています。広く使用してもらえるよう、引き続き技術資料を整えていく予定です。
カナダウッドジャパンでは、今後も木造建築に関わる技術開発、またカナダ林産品の日本国内におけるさらなる認知獲得・普及拡大に努めてまいります。
本件に関するお問合せ先: カナダウッドジャパン TEL 03-5401-0531